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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第10章 ドワーフキャラバン編
351/478

機密保持も大切だとは思いますが

 最北湖の南岸に設置された簡易要塞は、二重の空堀に囲まれた円形の陣地である。

 領域化の目安にする為の簡単な造りではあるが、内側には地下室も幾つか掘りぬかれており、前線基地として最低限の機能は備わっている。

 今、そこから3体の骸骨戦士長に率いられた、8体の骸骨戦士達が、続々と最北湖に向って行った。


 湖岸からザブザブと腰まで水に浸かりながら進んで行くと、すぐに水深が深くなったが、彼らは恐れることなく潜っていった。

 左右に網を広げるように散開しながら湖底を目指すと、そこに、巨大な水竜の影があった。

 

 長い年月、湖底に沈んでいた所為か、完全に白骨化しており、その骨の色も、周囲の泥とほとんど同じ白灰色に変色していた。

 全長15mはありそうな巨体をくねらしながら、骨だけになった水竜は、その頭蓋の眼窩に、不気味な黒い灯りを燈しながら、周囲を睥睨している。


 静かな眠りを邪魔されたのが気に食わないのか、それとも久々の獲物に興奮しているのか、ボーン・サーペントは、湖底をうねる様に泳ぎ回っていた。


 「カタカタ(ススメ!)」

 スカルリーダーの号令により、4体の骸骨戦士がボーン・サーペントに向かって行った。


 「ギィギィギィギィー」

 叫び声なのか、骨の軋む音なのか判別の付かない、耳障りな音を響かせながら、白骨水竜は襲い掛かって来る。

 正面にいた骸骨戦士を巨大な顎で一噛みにして砕くと、側面にいた1体を、尾で打ち払って粉々にしてしまう。

 残りの2体が剣で打ちかかるが、頑健な骨格には、ひび一つ入らなかった。


 「カタカタカタ(メヲネラエ!)」

 ドクロリーダーが、自分の指揮下の4体に、弱点らしき眼窩への攻撃を指示した。

 しかし、水中を自在に泳ぎまわる、白骨水竜の頭部のさらに一部を狙うのは、至難の技であった。そして纏わり付く骸骨戦士達にイラついたのか、白骨水竜は口を大きく開いて、酸のブレスを噴き出した。


 直線状に延びる灰色のブレスは、湖底の泥を巻き上げながら、3体の骸骨戦士を直撃した。

 カスタム・スケルトンファイターには、酸耐性の技能が付加してあるにもかかわらず、強酸に耐えられなくなった骸骨戦士が、次々と崩れ落ちてしまった。


 「カタカタ(ツヨイゾ)」 

 「カタカタ(ウム、ツヨイナ)」

 スカルとドクロは、白骨水竜の強さを見極めると、後方で待機していたズガイを振り返った。


 「カタカタカタ(マスターニホウコクヲ)」

 「カタカタ(ココハオサエル)」


 ズガイは頷くと、右手の剣を振り上げた。すると先発隊として偵察しにきて壊滅した、スカウト仕様の骸骨戦士が4体、立ち上がった。

 「カタカタ(ナカマヲエンゴシロ)」

 そう指示して、彼は簡易要塞へと帰還していった。


 「カタカタ(コチラモヨブカ)」

 スカルもまた、右手の剣を降り上げると、破壊された5体のうち、4体の骸骨戦士を復活させた。


 「カタカタカタ(サア、マホウハドウシタ)」

 「カタカタ(ゼンブ、ミセテモラウゾ)」


 不死の湖の主と、不死者の軍団の戦いは、さらに激しさを増していった・・・




 その頃、湖岸の簡易要塞では、討伐隊の本隊が、出撃準備を終えていた。

 「穴熊チームには、身体強化の呪文を掛け終わっただ」

 「ソナーチームも準備できました」

 「主殿、いつでも出れるぞ」

 ノーミン、テオ、ロザリオから報告が上がってきた。 


 『了解、今、ズガイが戻ってきたからちょっと待って』

 湖底から帰還したズガイから、湖の主の報告を受けた。

 「カタカタカタ」

 『ほむほむ』

 「カタカタ」

 『ひょえー』


 全長15mだと淡水に生息していた水竜なら大型に近いね。だとすると、それがアンデット化したら、かなりの高ランクモンスターになっているはず。

 顎でも尾でも、盾で受けた骸骨戦士が一撃で粉砕されるとなると、防御は回避主体にするしかないか。

 剣の攻撃が通らないのは、やはり魔法武器しか通じないと見るべきだね。


 『ノーミン、穴熊チームに身体武器魔法化の呪文を付与して。相手は魔法武器以外は通じなさそう』

 「わかっただよ、けど少し時間がかかるだ」

 『テオ、敵のブレスは酸耐性を突破してくるほど強力だから、ぜったいに直撃されないように。前兆が聞き取れたら、散開の合図を頼むね』

 「了解です」

 『ロザリオ、盾受けでなく回避主体で。攻撃の主力はロザリオのエレメンタルソードだから、防御はできるだけ他のメンバーに任せて』

 「承知した、ノーミンの準備が終わり次第、出撃の許可を」



 周囲からの無言のプレッシャーを感じながら、ノーミンは1頭ずつに呪文を付与していく。

 「この呪文は単体にしか掛けられないから、手間がかかるだよ」

 「ギュギュ?」

 「いや、穴熊ファミリーが悪いわけじゃないだ。呪文の性質の問題だでな」

 「ギュ」

 やがて準備が整った。


 『最北湖の主、討伐隊、出撃!』

 「「「 ウラーー 」」」


 次々と水面に身を躍らせる、百鬼夜行の軍勢は、対岸の補給拠点からも、ギリギリで見ることが出来た。


 「なんだい、あの軍勢は?!」

 「・・あーー、なんでしょうねー・・」

 「どこかで見たことがあるような気がするさね・・」

 「・・そ、そうですか?気のせいでは?・・」

 「あの銀色の骸骨は、間違いないね」

 「・・大尉、目立ちすぎです・・」

 ソニアは背後を振り返ると、エルフの行商人に詰め寄った。


 「どういうことか、アタシに説明してくれるんだろうねえ・・」


 エルフはただ首を縦に振って頷くのであった・・・



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