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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第10章 ドワーフキャラバン編
343/478

策士の布石

投稿の確認をクリックし忘れたようです。申し訳ございませんでした。

  ダンジョンコアルームにて


 虚無の魔法兵団を撃退・放逐したあと、急いで各拠点に遠話で連絡をとったのは、深夜、日付が変わる頃だった。

 「それで、ドワーフ達の様子はどう?」

 『まだ納得はしてないっすね。ここに残る、もしくは鉱山に帰るって言い出す集団が、出るかもしれないっす』

 「流石にそこに残るのは自殺行為だから、同行しないなら、北の鉱山に戻るように誘導してくれるかな。強制的に連行はしなくていいよ」

 『護衛が足りないけど、どうするっすか?』

 「うーん、道案内と索敵で、狼チームから何頭かつけてあげたいけど、チョビとガイルはナーガ族の隠れ里に送ったんだよね?」

 『そうっす、ベニジャが気にしてたっすよ』


 シャドウ・ウルフ2頭だと、増援戦力としては少ないけれど、偵察能力が高いからそれなりに役に立ってくれるはず。眷属が現地にいるのも重要だしね・・

 「あとで遠話でチョビに状況を聞いてみるよ」

 『よろしくっす』


 「そっちの出発は早朝かな?」

 『夜間に襲撃がなければ、その予定っす。ただ、蜘蛛が思いの外、多いので、南下すると囲まれるかも知れないっすけど・・』

 「第二補給拠点からの情報だと、ギルドから派遣された冒険者が、黒衣の沼から西へ大移動中の蜘蛛の軍団を目撃したらしいんだ」

 『やばいっすね。西へ大回りして迂回したほうがいいっすか?』

 「それだと、下手をすると蜘蛛の軍団を隠れ里に引き込む可能性があるんだよね・・」

 『それもまずいっすね・・』


 北のドワーフ開拓村跡地を襲撃した集団も、西へ回り込んでいるみたいだし、これ以上の負担は里の崩壊に繋がりかねない。

 「いっそ、ナーガ族もキャラバンに乗せて、避難してもらおうか・・」

 大氾濫が収束したら、戻ってもらえば良いんだし・・


 『隠れ里に何人住んでるかわからないっすけど、乗せられたとしても1台に二人が限界っすね』

 そうか・・さすがに里の人口が20人以下ってこともないだろうしね・・


 「やはり南下だね、大軍団に封鎖される前に、湿原地帯を突破する方向で」

 『ういっす、頑張るっす』


 本当は、直にでも出発して欲しいけど、護衛部隊も休息が必要だし、ドワーフ達が動揺から立ち直る時間も必要だから、朝までは待つしかなさそうだ・・・



 「コア、次は隠れ里にいるチョビに遠話を繋げてみて」

 『・・もふもふ・・』

 『バウ』

 『ばうばう』

 『バウバウバウ』

 『ほむほむ』

 『バウ』

 まったく分からない・・・


 「コア様によれば、ナーガ族の隠れ里は、蜘蛛の2度に渡る襲撃を撃退したそうです。村人に死傷者が9名ほどでたものの、冒険者と眷属は無事とのことです」

 僕の横で、メイド服を着たフロストリザードマンのカジャが、コアからの念話を通訳してくれた。


 「それは良いんだけど、なぜここに?」

 「配置が決まっていなかったので、身の回りのお世話に」

 気がつくと、雑然としていたコアルームが、綺麗に整頓されていた。

 「いつの間に・・」

 どうやらカジャのメイド技能は伊達ではないようだった。


 「ご迷惑でしでしょうか?」

 「いや、コアが読み終えた本を、所構わず積み上げるので、整理してもらえるのは、ありがたいです」

 『ばうばう』

 うん、コアルームが散らかっているのは、自分だけの所為じゃないって言いたいんだよね・・でも狼語で言われても分からないから・・


 『バウバウ』

 『ばう』

 『バウ』

 チョビとの遠話は短めで終わった。

 現地にいるモフモフ助け隊のメンバーと会話ができないので、これ以上の情報収集が出来ないから仕方がない。こちらの動向はチョビには伝えたけれども、それをどう彼らに伝えるのかは、チョビに任せるしかなかった。



 「コア、蜘蛛軍団の想定ルートを投影して」

 『ばう』

 未だに狼語の抜け切らないコアが、周辺図と共に、蜘蛛の軍団の移動想定ルートを矢印で投影してくれた。

 時間とともに到達予想円が広がりながら、西へと進んで来る・・どことなく台風情報に似ていた。


 蜘蛛は日が昇ると移動速度を増し、西北西に進路をとると思われる。

 現状だと、キャラバンとはギリギリ接触するかしないかのタイミングだが、蜘蛛がさらに速度を上げるか、キャラバンの足が鈍れば、湿原の中央で遭遇することになりそうだった・・


 「これは、キャラバンの移動経路に手を打って置いた方が良さそうだね・・」

 「護衛の増援ではなく?」

 「そう、味方の撤退を助ける役目の工兵みたいな部隊」

 そう言いながら、コアにキャラバンの南下ルートを表示してもらう。


 ほぼ湿地帯なので、障害となる地形は少ないけれど、途中に2箇所だけ、難所になりそうな場所があった。

 一つ目は、沼杉の林。

 周辺が水深のかなり深い沼なので、中州のように細長く続く陸地を進むしかないのだが、その途中に沼杉の林がある。そこはタスカーでぎりぎり通れる幅しかなかったらしいので、ドワーフの移動車両だと抜けられないかもしれかった。

 邪魔な沼杉を伐採していると、蜘蛛に追いつかれる危険があるので、先行して道幅を確保する部隊が必要になるだろう。


 二つ目は、底なし穴。

 水深は浅いけれど水が泥で濁っていて、しかも浮き草が繁茂している湿原が広がっている場所があった。その周囲はさらに水深が深くなっていくので、そこを通過しないと、かなりの遠回りになる。だが、その湿原には濁った水と浮き草に隠れて、直径3mほどの縦穴が点在しているのである。

 行きの旅程で、タスカーとアイスドレイクが1回ずつ頭から穴に突っ込んだので、判明した難所である。その後は、慎重に足や槍の石突で探りながら通過したが、それを帰りの、しかも移動車両を引き連れてやれば、貴重な時間を失うことになるのは間違いなかった。

 

 「沼杉の林は、こっちからだと間に合わないね。遠すぎる・・」

 「では第一護衛部隊から先行させますか?」

 「それしかないね。コア、ワタリに遠話で事情を伝えて、可能なら先発隊を出すように言って」

 『らじゃー』

 「底なし穴の方は、第二補給拠点からしか届かないけど、今は見張りにエルフが二人いるだけか・・」


 第二補給拠点の第三護衛部隊は、物資のピストン輸送の為にダンジョンに戻ってきていた所で、魔法兵団の侵入があって足止めを受けた。いつでも出発はできるけど、ここから全速で走っても、キャラバンの南下の方が速そうだ。


 「ヘラジカの湖までは、領域化しておくべきだったかな・・」

 そうすれば転送で、ショートカットもできたのに、と悔やんでいる僕の横から、カジャが話し掛けてきた。

 「一つ、策がありますが」


 その目は、敗色濃厚の勝負で、温存していた切り札を切るときの賭博師の目をしていた。




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