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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第10章 ドワーフキャラバン編
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三狩人無双

  ナーガ族の隠れ里にて 乱戦中


 夜間で活動が停滞するはずのレッドバックウィドウが、里の上空に張った糸を伝わって奇襲を掛けてきた。

 突然、夜空から降ってくる巨大な蜘蛛に、ナーガ族の村人は次々と犠牲になっていく・・・


 敵襲の叫びが上がったとき、六つ子のリーダーとナーガ族の戦士長は、まだ飲み続けていたが、二人とも即座に臨戦態勢に移った。

 「どこから侵入された?!シュル」

 「敵の数は?!」

 

 二人がテントから飛び出すと、そこは乱戦の真っ只中であった。

 「馬鹿な、里の内部に突入されるまで気がつかないわけが・・シュル」

 「今は、撃退が先だ!行くぞ!」

 二人は横並びで、近くで村人を襲っているレッドバックウィドウに切りかかっていった。



 他の3つテントからも六つ子の男性陣が飛び出して来た。

 最後の一人は上半身裸であったが、兄弟達は見てみぬ振りをした・・


 「里の中に侵入されている・・範囲攻撃魔法は、巻き込む恐れがあって使えない・・」

 「奴ら、どこから入ってきたんだ?」

 周囲を注意深く見渡せば、夜空にかかる銀色のロープを伝わって、続々と蜘蛛が渡って来るのが見えた。


 「あれか!」

 「弓だと無理そうだ、頼む!」

 ナーガ族が弓矢でロープを狙っているが、複数の蜘蛛の体重を支えられる糸のロープが、切れる気配は無かったからだ。

 「まかせろ・・ブースト・ファイアー・アロー!!」

 

 魔力を込めて威力を増大させた炎の矢が、銀色のロープに直撃する・・

 その途端、引火した導火線の様に左右に炎が走り、渡りかけの蜘蛛が、ボタボタと落下すると、ロープは燃え尽きた。

 「これで敵の増援は無いはずだね」

 「しかし途中で落下した奴等が、生きている可能性が高いぞ」

 「・・掃討する・・」

 駆け出そうとする弟を、二人の兄が止めた。


 「「お前は、まず服を着ろ!」」



 族長の元にも蜘蛛の奇襲は報告された。

 「ベラ様、ここも危険です。食糧倉庫へ避難して下さい」

 「蜘蛛はどんどん里に入って来ているそうです・・戦士達がくい止めてはいますが・・」

 しかし族長はその場を動こうとはしなかった。


 「襲われて重傷を負った村人が、ここに運び込まれるかも知れません・・私はここで待っています」

 「ですが・・」

 見習い薬師が困っていると、そこへ村人を担いだ戦士が現れた。


 「すでに意識がないんだ、毒も喰らってる、シュル」

 「すぐに診察台へ、貴女は毒消しと薬草を準備しなさい!」

 「は、はい」


 族長の指示で動き出した、見習いの薬師だったが、入り口の戦士を案内しようとして、悲鳴を上げた。

 「キャアアア、蜘蛛が、蜘蛛が!」

 取り逃がした獲物を追ってきたのか、治療院の入り口に立つ戦士の背後に、レッドバックウィドウが現れた。

 そして両手の塞がった戦士に、襲い掛かった・・かに見えた・・


 しかしそれは、隣の建物の屋根から落ちてきた、蜘蛛の死骸であった。


 「あ、ゴメン、驚かせちゃったかな?」

 屋根の上から、六つ子のレンジャー妹が顔をだして、謝ってきた・・・


 「い、いえ、助かりました・・けれどこの蜘蛛を貴女一人で倒したのですか?」

 族長の質問に、レンジャー妹は首を振って答えた。

 「違うよ、今は頼もしい助っ人がいるからね」

 そういって、そばにいる2頭の黒狼の頭を撫でていた。


 「助っ人といいますと、もしや外から救援が?」

 族長が一縷の望みをかけて尋ねてくる。

 「それはまだかな、チョビとガイルだけ先乗りしてくれたんだ」

 「そうですか・・」 

 助っ人が2頭の狼だけと聞いて、落胆する族長だったが、レンジャー妹は気にもしていなかった。


 「バウバウ」

 チョビが新たな獲物を見つけて、レンジャー妹に知らせた。

 「あ、まだ居たね。じゃあ行って来ます!」

 軽やかに屋根伝いに走り去る一人と2頭を見送りながら、見習い薬師は呟いた。


 「大丈夫なんでしょうか・・」

 族長はそれに答えず、村人の治療を始めていた。

 心の中では、同じ疑問を抱いていたけれども・・・


 しかし彼女達は知らない・・

 2頭の黒狼が、漆黒の暗殺者と呼ばれるシャドウ・ウルフであることを。

 そしてドルイド姉から付与呪文を掛けてもらったことにより、その戦闘力が2倍近くに強化されていることを・・・



 「よし、もらった!」

 レンジャー妹が、射程内に入ったレッドバックウィドウに矢を放った。それは狙い澄ましたように蜘蛛の頭に命中するが、大してダメージを与えることはなかった。

 そして攻撃された蜘蛛は、彼女を敵と判断し、距離を詰めようと突進してくる・・


 その蜘蛛の死角から、2頭の黒狼が襲い掛かり、一合で頭を噛み砕いてしまう。

 反撃を許さない、その連携作戦で、周囲にいる蜘蛛を瞬く間に狩りつくしてしまった。


 呆れたように見守るリーダーは、隣の戦士長に話しかけた。

 「こっちの出番は無い様だな。負傷者の救助に向おう」

 「あ、ああ、分かった。しかし凄いな、貴方の妹殿は・・シュルシュル」


 「いや、あれは妹が凄いのではなく、助っ人の2頭が凄腕なだけだ・・」

 リーダーは苦笑いをしながら、屋根の上を飛び回る3つの影を眺めていた・・・



 「バウバウ」

 「向こうで悲鳴が聞えたって?よし行くよ!」

 「「バウ」」


 

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