ディアハンター
食材を調理したものをコアが吸収すると、料理としてリストに載ることがわかったので、今、食べていたものをどんどんリスト化していった。
変換リスト:料理
昆虫:コオロギのソテーフライドポテト添え 10kg 15DP
食肉(獣):猪肉のレアステーキ 150kg 20DP
食肉(爬虫類):大トカゲのステーキ 50kg 15DP
ミミズやリンゴは生なのでリストが増えることはなかった。リスト化された料理を見比べてわかることは、重量と変換DPが元の食材に対応しているってことだ。光熱費、調味料、下拵えの手間暇、調理時間などは上乗せされていない。食材で変換するより、ぐっとお得だね。
こうやって素材を加工して吸収・分解してリスト化していけば、DPさえあれば大量生産が可能ってことだね。問題は素材をどこで手に入れるかと、DPをどう増やすか。しばらくは採集家業と製作家業にいそしんで、地道にDPを貯めていくしか方法がなさそうだ。
この間みたいにスノーゴブリンの部族とガチンコ勝負は遠慮したいからね。勝てたからよかったけど、もう少し敵が数が多いか、ランクが高かったら、こっちが全滅してたよ。
ワタリに聞いたら、この周辺にはリザードマンの集落やオークの部族もあるらしく、「凍った槍」も常に警戒していたらしい。スノーゴブリンよりランクの高い亜人と集団戦闘とか、まじで死亡フラグだからね。
うかつに亜人の偵察隊や狩猟部隊を引き込んで倒すと、部族の反撃を呼び込むことがわかったから。次に仕掛けるときは、ダンジョンの防御体制を十二分に固めてからにしよう。まずは「拡張」機能の開放を目指してDPの貯金だ。まあ、1000DP貯めたら機能開放ときまったわけじゃないけど、1000DPで買いたいものもあるし、目標としては悪くないはず。
そんなこんな考え事をしているうちに、皆の食事が終わったらしい。今回は戦勝記念パーティーで大盤振る舞いしたけど、いつもこんな贅沢な食事にしてたら、あっというまに破産するから。早く残高を気にしないで料理を変換できる身分になりたい。
お腹が一杯になったら眠たくなってきた。すでにやんぼーとまーぼーはリンゴを抱えたまま丸くなって寝てしまったみたい。巣穴の寝床には戻らずに、コアルームで皆と一緒にこのまま眠りたいのかな。
自然と皆が寄り集まって、お互いの身体を支え合いながら眠りについた。
「良い夢を」 「うん」
さすがにこの夜は何も起こらずに朝がきた。
コアは一晩中起きていて、焚き火の後始末や、残飯の整理(吸収)、室温の調整、外敵の警戒の全てをこなしていてくれた。
「コア、ありがとう」 「ん♪」
さて、今日も一日がんばろう。
今日は採集と狩猟の下見に行こう。目的地は湖だ。
ダンジョンから眷属が離れても、その個体の帰属意識が高ければリンクは切れないらしい。召喚したての眷属は、まだそのダンジョンを巣と強く認識していないので、帰巣本能よりも遠くに離れてしまうと、はぐれ個体になってしまうというわけだ。
あとは同族の強いリーダーがいると遠征できる距離がのびるし、ダンジョンコアのレベルが高ければより遠くまでリンクが保持できるそうだ。
遠征隊は僕を含めて、ケンチームとワタリとアズサ。残りの皆はコアとお留守番してもらう。最初は下見だし、できるだけ戦闘はしないで、何かに遭遇したら逃走する予定で。
「じゃあ、いってきます」 「ぁい」
コア達に見送られて、第一次探検隊は出発した。
「第一次とかつけると遭難フラグみたいっすね」
「僕もそう思った。そして最初に隊からはぐれて行方不明になるのはワタリっぽい」
「ですかね・・・」
湖はダンジョンのある丘の天辺からでも見える距離にあるので、すぐに湖畔まではつけた。
水は澄んでいて、魚影もあるし、対岸には野生の動物の姿もみえる。こちらに灰色狼がいるのに気がついてはいるようだが、湖を回り込む間に逃げ切れると思っているのか、悠然と水を飲んでいる。
「あれはヘラジカかな?」
「ですかね、12・3頭の群みたいっすね」
一際体格が良くて立派な角をもった雄鹿が見えた。あれが群のリーダーだとわかる。仲間が水を飲んでいる間も周囲の警戒を続けているのが遠目でも見て取れた。
「あれが狩れたらしばらく肉には困らないよね」
「そりゃそうっすけど、でかいし、怒らせるとかなり危険っすよ」
ワタリは「凍った槍」の狩猟部隊で一度、戦ったことがあるそうだ。そのときは戦士と狩人が1人ずつ、足を角でつかれて重傷を負ったので逃げ帰ったらしい。
「戦い方でなんとかなるかも。一度戻ろう」
「了解っす」




