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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第10章 ドワーフキャラバン編
336/478

それは人の欲望を呼びさます

9/8 22:35、加筆しました。

 インビジブルストーカー(見えざる守護者)の優位性が無くなった事を認識したコルベットは、即座に逃走用の転移呪文を唱え始めた。

 「これは始まりの扉にして、終わりの扉なり、開け次元の扉よ!・・・」


 だがロザリオは、守護者と戦いながらも、彼女が逃げ出そうとしているのに気がついた。

 「不利を悟って即座に逃げを選択できるのは正しいが、仲間を見捨てるのは良くないな。ズガイ軍曹、妨害せよ」

 「カタカタ」

 唯一、その場でフリーになっていた骸骨戦士長のズガイが、詠唱中のコルベットに黒鋼の剣を叩き付けた。


 しかし、その刃は、コルベットのローブを切り裂く寸前で、何か硬い膜に弾かれてしまった。


 ダメージを受けなかったコルベットの転移呪文が完成し、目の前に魔力で光る扉が出現した。 

 「魔法使いが、装甲が薄いっていう先入観は、時代遅れなのよ。こんなこともあるかと思って、ストーンスキン(石の皮膚)の呪文を張っておいたってわけ。今日のところは引き下がってあげる・・次は私が勝つわ!」


 そんな捨て台詞を残して、コルベットは次元の扉を潜り抜けようとした。出口はダンジョンの外に繋げてある・・・

 

 けれども再び現れたのは、元の場所だった・・・

 「え?なんで?」


 それはコアの新しい機能のせいです。

 『えっへん』

 コアの新機能で「遮断」を選んだのは正解だったみたいだ。さっそく役に立ってくれたからね。


 

 「どうやら我が主の力により、転移は封じられているようだぞ・・さあ、どうする魔道士よ」

 ロザリオが、黒幕に仕える忠実なる騎士の態で話しかける。

 どうやらまだ脅し足りないらしい・・

 逃げ出したら見逃して良いよって、伝えてあったと思うのだけれど・・


 『ギュギュ』

 『キュキュキュ』

 ああ、なるほど、まだ借りを返しきっていないという訳ね。

 だったら、もう少し追い込んでみようか・・



 ダンジョンマスターの力で転移呪文を封じられたコルベットは、悔しそうに周囲を見渡した。

 見えざる守護者と理力の手は、それぞれ銀と黒の骸骨戦士を相手取っているが、劣勢だ。どちらもすぐに消滅しかねなかった。

 カレラは既に動かなくなっていた。目標を制圧した2体のスノーゴブリンのクロスボウ持ちが、慎重に前進してきている。

 まさに絶体絶命であった・・


 「そう・・このアタシがここまで追い詰められるとは・・どうやらここのダンジョンマスターの力量を見誤ってたようね・・でも、逃げる方法ならまだあるのよ!」

 コルベットは、そう叫ぶと、右手を高々と上げた。

 その中指には、金色に光るシンプルな指輪が嵌められていた。


 「我等が崇めし、魔術を司りし女神よ、汝の使徒の苦難・・を救い給え、ワード・オブ・リコール(帰還の聖句)!」


 「魔道具だ!阻害しろ!!」

 ロザリオの指示に、ズガイ軍曹とスナイパーコンビが反応した。


 しかし骸骨戦士長の攻撃は、やはり防御呪文によって弾かれてしまう。

 アズサとアサマはクリティカルを狙ってクロスボウを放つが、その射線上には、いつの間にか位置を変えていた見えざる守護者が立ち塞がった。


 「ギャギャ(軌道が逸れた?)」

 「ギャギャギャ(奴が弾いたんだ、見えない奴が)」


 その隙に、指輪の魔道具を機動するのに成功したコルベットの姿が眼前から消え去った・・・


 『転移系の上級呪文か!でもあれは神聖魔術のはずなのに・・』

 高位の呪文には「遮断」は効果がないのだろうか・・それとも魔道具だから別な扱い?・・

 「遮断」を突破されて考え込む僕に、コアが不満そうに言った。


 『まだいるー』


 えっ?でも消えたよね・・

 しかしモニターには、敵性反応がしっかりと赤いマーカーで示されていた。

 姿は見えないけれども・・・


 『んん?ただの透明化の指輪だったりして?』

 「どういうことだ主殿、奴は安全地帯に転送されたのではないのか?」

 そう尋ねるロザリオの前で、小さな足跡が出口の方へ、ヒタヒタと移動していた・・・


 「・・おい、足跡が残ってるぞ・・」

 ロザリオが押し殺した声で指摘すると、それは慌てたように小走りになった。



 『・・舐められてるね・・』

 「ああ、お仕置きが必要なようだな・・」 


 実際には苦肉の策だったのだろうけど、ペテンに掛けようとした事に違いはなかった。そしてうっかり引っ掛かりそうになっただけに、腹立たしかった。

 所謂、八つ当たりというものだ・・


 『穴熊チーム、用意はいいかな・・スペシャルローリングサンダーをお見舞いしてやって・・』

 『ギュギュ!』x5



 「・・この階段を登りきれば、足跡も残らなくなるはず・・あと少し・・・」

 心の中で呟きながら、コルベットは階段を駆け上がろうとした。

 しかし、その正面から、巨大な毛玉が5つ、高速縦回転をしながら階段を転がり落ちてきた。


 「なにこれ!・・ちょっ!・・ひでぶばりゃああ・・」


 階段いっぱいに展開された穴熊チームの必殺技は、回避することも出来ず、次々とコルベットに直撃した。

 ギュルギュルと回転しながら宙を舞う、その姿は、しかし誰の目にも留まらなかった。


 『透明化って、轢かれても解除されないんだね・・』


 『きえたしたい』


 まだ死んでないってば・・・

 ほとんど仮死状態になってるけれどね。


 2-3の隊列を組んで階段を転がり降りてきた穴熊チームには、事前にノーミンがブーストを掛けていたようだ。筋力と耐久力が上昇した、高速回転する巨大穴熊に跳ねられた魔術師は、ボロ雑巾の様に床に転がっている・・・はずである。見えないけれども。


 召喚術者が意識を失ったことにより、理力の手は自動的に消滅した。

 サーバントはすでに骸骨戦士長の剣で、全て切り倒されてしまっている・・

 見えざる守護者だけは、与えられた命令が、術者を護ることであった為か、規定された時間が過ぎるまでは護り通そうと奮闘していた。


 しかし、既に味方も無く、ロザリオの精霊剣によって倒されてしまうことになる・・

 魔法兵団の抵抗は、それを最後に終わりを告げたのであった・・




 「で、主殿、この者達はどうするのかな?」

 瀕死の重傷を負った3人は、応急手当はしたので、死ぬことはない。最初の一人は酸欠で失神しただけなので、これも命には別状はなかった。

 『身包み剥ぐのは前提としても、全員、呪文が使えるみたいだから、やっかいだよね・・』


 コルベットと呼ばれていた、リーダーらしい魔術師には、かなり魔力を使わせたので、回復には時間がかかると思う。けれども他の3人は、実力を発揮する前に倒れたので、魔法戦力はまだ健在のはずだった。

 牢屋で目覚めたときに、大人しく逃亡してくれるかどうか微妙である・・


 「いっそ埋めてしまうか・・」

 ロザリオが、モフモフの敵にかける情けはないとばかりに、冷酷な意見を囁いた。


 『けど背後関係が分からないから、下手にギルドの調査だったりすると、後々面倒なんだよね』 

 友好的な関係を築けた冒険者もいるだけに、ここで冒険者ギルドと縁切りするのは勿体無い気もするし・・


 僕が悩んでいると、耳元に風の囁きが届いた。

 『持て余して居る様なら、こちらで引き取ろう・・』


 え?誰?

 驚いてコアを見ると、地下墓地の降り口にモニターの映像が切り替わった。

 『ろざままー』


 そこには、ゲスト認証を待っている、ヒルダさんの姿が映し出されていた・・・





 

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