表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第10章 ドワーフキャラバン編
334/478

不滅の兵団

  ダンジョンコアルームにて


 アルカナ・ナイトが骸骨戦士の再生能力に危惧を覚えていた頃、僕らも敵の対アンデッド能力に危機感を募らせていた・・・

 「初めてまともなターン・アンデッド能力を発動したクレリックを見たけど、とんでもないね・・」

 『ばらばらー』

 一撃で4体のカスタム・スケルトン・ファイターが持っていかれた。しかも追い払う効果ではなく、強制送還による消滅である。どうやら神官は、かなりレベルが高いみたいだ。


 「範囲魔法と違って、味方を巻き込む可能性がないから、使い易いだろうし、やっかいだな・・」

 優先目標を魔法使いから神官に変えた方がいいかも知れないね・・

 玄関ホールでの戦闘をモニタリングしながら、ロザリオに指示を出すかどうか迷っていた。



 しかし魔法使いの方も黙って見ているわけではなかった。

 素早い詠唱とともに、突き出した両腕に青白い火花が巻きついている。

 それを見たロザリオが叫ぶ、

 「まずいぞ、避けろ!」

 同時に魔法使いが呪文を解き放った。

 「ライトニング・ボルト(雷撃)!」


 正面に直線状に延びる雷撃は、味方のはずのアルカナ・ナイトを巻き込みながら、通路にいた全ての骸骨戦士達をなぎ払っていった。


 「つっつっ、毎度の事ながら容赦ねえな、うちのリーダーは・・」

 後方から範囲攻撃魔法を撃たれても、歯を食い縛って耐えているアルカナ・ナイトの姿があった。どうやら味方の巻き込みは、この冒険者パーティーでは日常的に行なわれているようだ。


 「まあ、そのおかげで、前がすっきりしたけどな!」

 そう言いながら、雷撃を避け損ねた骸骨戦士長に、止めを刺しに切りかかった。

 「とっとと成仏しな!」

 

 アルカナ・ナイトの鋭い斬撃を、スケルトン・ウォーリアーのスカルは盾でなんとか防いだが、瞬時に繰り出された2撃目に反応できない。

 「もらったああ!」

 雷撃呪文で重傷を負っていたスカルに、止めとなる一撃が振り下ろされた・・


 

 だが、その剣は、割って入ったロザリオに受け止められた。

 「よくも好き勝手にやってくれたな、部下の敵、とらせてもらうぞ!」

 「はっ、お前がここのボスってわけか。お手並み拝見させてもらうぜ!」

 激しく斬り合いを始めた二人を横目に、スカルは一旦、十字路の左へ退却していった。


 なぜなら魔法使いと神官が、次の呪文を詠唱していたからだ。

 「もう1発、ライトニング・ボルト!」

 「悪霊よ立ち去れ、ターン・アンデッド!」


 しかしこの援護射撃?は、骸骨戦士長が退避していたことにより、ほとんど効果がなかった。

 「あの銀色はアンデッドではないようだな。手応えが無さ過ぎる・・」

 「雷撃の呪文も効きが悪いわね。あの左手の盾が干渉してるみたい」

 冷静に状況を見極める二人に、アルカナ・ナイトが抗議した。


 「だったら俺を巻き込む呪文をうつんじゃねえよ!敵よりよっぽど痛いだろうが!」

 確かに彼は、敵から一撃も有効打を受けていないのに、すでにボロボロだった。


 「ちっ、タンクならそれぐらい我慢しなさいよね」

 「・・回復するから待ってろ」

 神官が、少し前に出ると、アルカナ・ナイトに回復呪文を唱えた。


 「我らが女神の慈愛をもって、彼の者の傷を癒したまえ、キュア・クリティカル(上位治癒)!」

 それだけで、殆どの傷が治っていった。

 「ありがたいぜ、これでこいつに勝てる!」


 実際に、アルカナ・ナイトとロザリオの実力は伯仲していた。

 攻撃力ならアルカナ・ナイトが有利、防御力ならロザリオが有利だった。しかし1対1ならまだしも、二人の術者の援護があっては、ロザリオに勝ち目はなかった。


 「どうした、防戦一方で口も利けないかよ!」

 鋭い2連撃を繰り出しながら、アルカナ・ナイトが挑発する。

 「・・・・」

 しかしロザリオは、徐々に押されながらも、その猛攻を防ぎ続けていた。

 

 じりじりと後退するロザリオに、神官が、聖印の代わりとなるルーン文字の彫られた盾を掲げながら、声を掛けてきた。

 「骸骨戦士長の援護を当てにしているようだけど、顔を出したら即、消滅させるから無駄だぜ」

 

 それに対して、十字路まで押し戻されたロザリオが、ボソッと答えた。

 「いや、無駄ではないな・・」


 その言葉を切っ掛けに、十字路の左右に潜んでいたメンバーが一斉に攻撃を開始した。



 ドスッ ドスッ

 アルカナ・ナイトの脇腹に、死角から放たれた2本のクロスボウのボルトが、クリティカルヒットとなって突き刺さった。

 「ぐがっ!、スナイパーだと・・どこに隠れていやがった・・」

 さらに左右から新たな骸骨戦士長が姿を現すと、それぞれが黒い剣を掲げた。


 それに呼応するように、雷撃で吹き飛ばされた6体の白骨死体が、神官の周囲で立ち上がる。

 「しまった!こっちが狙いか」

 回復呪文を詠唱しかけた神官が、それを中断して聖句を唱え始めた。


 さらに後方の魔法使いは、再び雷撃の呪文を詠唱し始めるが、前衛が重傷を負っているのを目にすると、あきらめて別の呪文に換えることにした。

 「さすがに自分の手で止めは、ちょっとね・・」


 しかし、このタイムラグが、魔法兵団にとって致命傷になった。


 十字路で3体に囲まれたアルカナ・ナイトは、その攻撃を受けきるのが精一杯で、死角に潜んでいるスナイパーに注意を払うことが出来なかった。

 「ギャギャ(もらいました)」

 静かに放たれた必殺の一撃は、まったく同じ場所に吸い込まれるように突き立った。


 「ありえねえ・・乱戦状態でもクリティカルだと・・」

 それを最後に意識を失った・・



 「ロータス!!」

 目の前でアルカナ・ナイトが倒れたのを見た神官が、思わず叫び声をあげてしまった。しかしそれは詠唱中の聖句を中断する結果になった。

 その隙をついて、骸骨戦士達は、玄関ホールの魔法使いに襲い掛かる。

 「まずい、コルベット!」

 神官が慌てて振り返るが、そこには堂々と腕を組みながら胸を張っているリーダーの姿があった。


 「おたおたしない!『虚無の魔法兵団』は不滅よ!」



 「・・・あの自信はどこから来るんだろう・・・」

 『・・まだ隠し玉がありそうだな、主殿』


 『しーゆーとぅもろー』



 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ