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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第1章 サバイバル編
32/478

今ならこれに

「それは・・・私も初めて聞く状況ですわね。アーカイヴには・・・該当なし。ダンジョンコア・・・正常起動中。ダンジョン内に異空間反応・・・無し。ラプラス、シュレディンガー、マーフィーの介入・・・痕跡無し・・・」

 ダンジョンコールセンターでなぜかオペレーターをしていた「姫」が、僕らの陳情を聞いて対応をしてくれている。ただ、過去に前例がないらしく、システムチェックは時間がかかっていた。


 そして僕らにはその時間がなかった。


 なぜならリアルタイムで送られてくるコアからの情報の中に、「通話料3分10DP」とあったから。


 すでに通話時間のタイマーは 00:11:54 を指していた。まだ50分間は話せるとみるか、スノーゴブリンが1体召喚できなくなったとみるべきか。

 猪肉300kgが消えていったのが一番ショックだったり。


 「あー、その、あのですね、「姫」、もういいんです、僕らのために無理をしないでください」

 「いいえ、私の事はお気になさらずに。どんなに時間がかかったとしてもオペレーターの仕事を完遂さてみせますわ」

 いえ、気にしてるのは「姫」の時間ではなく、通話時間なんですけど。


 「でも、僕らだけに関わっていると、他の顧客から苦情がくるかも・・・」

 「大丈夫です、今のところ他のオペレーター達で対応できていますわ」

 くっ、あれだけ混雑していたのに、こんなときだけ緩和されるとは。


 「あれからお客様からかかってきませんねー」

 「誰かがコード抜いたまま直していないからね。ボクのもだけど」

 「ふふふ、休憩にしましょう。チーフの手が空くまでは」

 「あ、じゃあお茶いれますねー」

 「「自分で淹れるからいい!」」

 「えー、じゃあ「姫」様に」

 「「あ」」

  ひゃー、がしゃん、びしゃん、ごつっ      ツーー ツーー ツーー

 紅茶をまともにかぶって、額にレモンスライスを貼り付けた「姫」が、怒りのオーラーを纏いながら振り向いた。

 「ど・な・た・の仕業かしら~」

 「ひゃあああーー」


 「あう」

 「通話が切れたって?誰かしらないけどナイスだ」

 僕は手助けをしてくれた、見知らぬ天使に感謝しつつ、その冥福を祈った。

 通話時間は16分を少し越えていた。60DPも使ったのに状況は少しも改善していない。もう現状を受け入れて、やっていくしかないかと諦めかけていたときに、「姫」の方から連絡が来た。


 「あの、これコレクトコールじゃないですよね?」

 「もちろんですわ。こちらのミスで通話が切断したのですから」

 「よし!」

 「何かいいことありまして?」

 「あ、いえ、「姫」に見放されたのかと思ったので・・・」

 「まあ、ごめんなさいね。うちの新人・・・でもないんですけど、が粗相をしまして」

 「それで何かわかりましたか?」

 コールセンターの「姫」は言いにくそうに言葉を探していたが、

 「私の権限で調べられる範囲にはデータがありませんでしたので、上層部に問い合わせしましたの」

 「その結果は?」

 「・・・バグではなく仕様だと・・・」

 「運営の人は都合が悪いことは全部そう言うんですよね!」



 「ごめんなさい、力になれなくて・・・」

 「姫」が本気で落ち込んでいた。だけどこちらも人生かかってるし、ここは押しどころだ。

 「いいんです、「姫」の所為じゃないですし。ハードモードでもいけるなんて思い上がってた僕が悪いんですから・・・」

 ケンを手招きして、そばで甘やかす。 「クウーン、クウーン」

 「はっ、どこかで子犬の鳴き声がしましたわ」

 「僕にも大切な仲間ができたんですが、満足に餌もあげることができなくて・・・」

 「なんてことでしょう・・・そうですわ、私のコールセンター主任権限を使えば」

   かかった。

 「何かいいまして?」

 「あ、いえ、助かったって」 「ん」

 「そう、ならいいのですけど・・・。とにかく今回の陳情に対してシステムの修正などは行われません」

 「はい」「ん」

 「ですが、ヘルプ機能によるトラブルシューティングを試みることはできますわ」

 「「おお」」

 「まずダンジョンコア機能の管理項目のサブメニューを開いてくださいな」

 「ん」

 「その中の「吸収」をダブルクリックすると、隠しコマンド「分解」がでるはずです」

 「「おお!」」

 「分解は、通常は生体組織しかできない吸収を、無機物に行うコマンドで、これを行った対象を「変換」

 リストに登録できますわ」

 「「おお!!」」

 「手に入らないものは分解もできないので、リスト化もできないですけど、装備や武具はこれで拡充できますわ」

 「十分です、感謝します「姫」」 「ん」


 食材は増えなかったけど、これで道具や防具を皆に配給できるね。「姫」には本当に感謝だ。

 「それとコールセンターのカスタマーサービスでお試しキットというのが何種類かあるので、それも送っておきますわね」

 「あ、食材があったら嬉しいです」

 「了解しましたわ。優先しておきましょう。でわ良いダンジョンライフを!」

 「ありがとう!」 「ん!」

 

 後日、コールセンターから届いたデリヴァリーボックスには、青汁とクロレラとミドリムシが詰め込まれていた・・・


DPの推移

現在値:206DP

コール:16分 -60

残り 146 DP

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