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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第10章 ドワーフキャラバン編
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前哨戦

お待たせいたしました。本日より投稿を再開いたします。

  第二補給拠点にて


 湿地帯と岩山の境界線上に設置された、第二補給拠点は、点在する大きな岩を支柱にして、氷の壁を張り巡らして作り上げられていた。

 岩の間に蔦や蔓で網を張り、そこに水を掛けると同時に、アイス・ドレイクの弱ブレスで凍らしていった。回数を重ねる毎に、分厚くなっていく氷の壁は、最終的には厚さ30cmほどになった。開口部分も蔦の網を張り、厚さ20cmほどの透明な天井を作り出していた。

 今、その補給拠点に巨大蜘蛛の大群が迫ろうとしていた・・


 「後衛は拠点内から援護、アイス・ドレイクは前衛として出入り口を防御、ジャー」

 「シャーシャー」

 「合点承知ですぜ、お嬢、ジャー」

 

 第二補給拠点に篭っている戦力は、ベニジャをリーダーとして、アイス・ドレイクのクロコとグレコ、ホワイト・ドラコのグリコ、フロストリザードマンのエリート2体、ツンドラエルフのクレリックとソーサラー、それにスノーゴブリンのシナノである。

 その他に、偵察として拠点の外にいるのが、シャドウウルフのチョビとリュウであった。その2頭も全速で拠点に帰還中である。


 「前衛3体に耐毒呪文を付与、アイス・ドレイクチームは防御スキル発動だぜ、ジャー」

 「スロウ・ポイゾン(耐毒呪文)を順次、詠唱」

 「「シャーシャー」」

 「あと適当に援護呪文頼んだぜ、ジャジャ」

 ベニジャも全員の保有呪文を知っているわけではないので、最後は投げっぱなしになった。


 「ブレス(神の祝福)は直前にかけます」

 「グリコに防御呪文を付与」

 1体だけランクの低いグリコは、自分に防御力を上昇させるスキルがないので、それを補助する呪文が必要だった。



 「お嬢、見えてきましたぜ、すげえ数だ、ジャジャー」

 見張りのエリートが、巨大蜘蛛の接近を告げる。

 蜘蛛の集団は、一直線にこの場所を目指して突き進んでいたが、チョビとリュウが囮になって、若干進行方向を逸らしていた。

 このままなら、補給拠点の出入り口の前をギリギリ通過するルートである。

 

 「準備はいいな、範囲攻撃呪文は一番敵影の濃いところにぶち込んでやれ、コールドブレスは、こっちに向かってくるところを迎撃するタイミングだぜ、ジャー」

 息を潜めて待つ、守備隊の前に、50体を越す巨大な蜘蛛の塊が押し寄せた・・・


 「打て!!」

 「ウィンド・バースト!」

 「ホーリー・バースト!」

 エルフの二人が放った風と聖の範囲呪文に巻き込まれた8体のレッドバック・ウィドウが、吹き飛んだ。しかし片方の効果範囲にしか入らなかった敵は、重傷だが、生き延びていた。


 チキチキチキチキ


 攻撃を受けたレッドバック・ウィドウが、一斉に警戒音を鳴らしながら、呪文を放った二人に向かって殺到してきた。


 「「シャーーー」」

 そこへアイス・ドレイク達の、コールドブレスが叩きつけられる。

 3頭が、隙間無く吐き付けた氷のブレスは、こちらに向かって突進しようとしていた集団の勢いを、止めることに成功する。

 また、重傷だった敵は、止めを刺されてその場で氷ついた。


 「射撃開始だぜ、ジャー」

 ベニジャの号令で、エリート2体と、シナノが、重傷の敵を狙って弓矢を放った。

 しかし、エリートの矢は敵の装甲に阻まれて効果をあげられなかった・・

 「ダメだ、お嬢、矢は弾かれますぜ、ジャジャ」

 「蜘蛛のクセに硬いじゃねえか・・仕方ねえぜ、2人は円月槍で出入り口の護りだぜ、ジャー」

 「へい、合点です、ジャジャー」


 それとは違い、シナノのクロスボウは、確実に弱った敵に止めを刺していく。

 「ギャギャ(補給物資の中にはボルトも用意されているし、弾切れの心配はない)」

 スキルを使うとMPが足りなくなるので、ただひたすら撃つ事に専念していた・・


 だが、巨大蜘蛛の波は、最前列で倒れた同族の屍を乗り終えて、補給拠点に押し寄せてくる・・

 前衛が接近戦に移行し、3対15以上の激戦になった。


 「範囲攻撃呪文の再詠唱を急げ、エリートは前衛の防衛ラインをすり抜けてくる敵を迎撃だぜ、ジャー」

 煩いほどの蜘蛛の警戒音が鳴り響く中、ベニジャが声を張り上げて指示を飛ばす。


 2度目の呪文斉射が発動し、先ほどよりも密集していた敵の真ん中に炸裂した。それと同時に最前列のドレイク達が、コールドブレスをゼロ距離で放つ。

 この反撃で16体以上の敵を撃破した防衛部隊に、余裕が生まれてきた・・


 「あと2斉射で、全滅できそうだぜ、ジャジャ」

 「なんとか魔力も持ちそうです」

 「ギャギャ(こっちらも問題なし)」

 「シャーシャー」


 その時、遠くで今まで聴いたことの無い、警戒音が1つだけ響いた。


 ヂキヂキヂキ


 その音を聞いた瞬間、レッドバック・ウィドウの群れが、潮が退く様に包囲を解いて離れていった。


 「なんだ?蜘蛛が退却するだって?ジャジャ・・」

 「まるで誰かに指揮されているようです・・」

 「お嬢!あれを!」


 エリートが指差した先には、遠くの岩の上に佇む、上半身はダークエルフで下半身が巨大蜘蛛の、敵指揮官と思われる亜人の姿があった。

 そしてその周囲に、退却していったレッドバック・ウィドウが、雑然とではあるが、陣形を組みながら集合していた。


 ヂキヂキヂキ


 敵指揮官から発せられる、警戒音が、今だ戦いが終わっていないことを現していた・・


 「本番はこれからってことかよ・・・ジャジャ」

 ベニジャは独り言を呟きながら無意識に三つ又矛を握りなおしたが、その手は汗でベットリと濡れていた・・・



 

 

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[一言] リザードマンが手汗をかく世界なのか
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