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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第10章 ドワーフキャラバン編
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第二次接近遭遇

それでは4日間ほど夏休みをいただきます。再開は21日の深夜になる予定です。

 『主殿、最後の脱出艇がもうすぐ運び込まれるようだぞ』

 「あ、すぐ行くね。出迎えがスケルトン部隊だけだと、心臓に悪いだろうから、ハクジャにも立ち会ってもらって」

 「マスター様、聞えましたので、地底湖に向かいます、ジャー」

 あれ?凍結雷撃ウナギのミコトチームがいないと、水牢から地底湖はきつくないか?

 「コア、転送してもらっていいかな・・・あ、ダメみたいだね・・」


 コアルームの台座の上で、家計簿とにらめっこしているエプロン姿のコアがいた・・

 家計(DP)を圧迫しているのは、6時間に一度、3箇所に掛ける遠話が原因らしい・・

 『ぱけっと・・』

 うんうん、カケホーダイが欲しいよね。



 というわけで、水の精霊のルカに、水中呼吸の呪文をかけてもらって、アイス・ドレイクのクロコに・・・って、ドレイクチームも出払ってるじゃん。

 あれ?自力で泳ぐしかないの?

 まあ、水泳技能あるから、なんとかなるかな・・・


 そこに颯爽とハリモグラチームが現れた。

 「「キュキュキュ」」

 「はいはい、水中呼吸の呪文ですね~」

 ルカに3頭がそれぞれ呪文を付与してもらうと、首に通したロープを3本繋げて、僕に手渡した。


 「これで曳航してくれるんだ?」

 「「キュキュ」」

 「じゃあ、頼むね」

 「「キュ」」


 そして3頭が勢い良く水に飛び込んだ・・・


 パシャパシャパシャ


 ハリモグラの短い手足は、水を掻くのには適していないようだ・・・


 「・・うん、自分で泳ぐね・・」

 「「キュキュ」」

 


 なんとか地底湖に辿り着くと、丁度、ミコトチームに牽引された脱出艇も到着したところだった。まあ、見た感じは地引網にかかった古い酒樽なのだけれども・・


 「ピュイピュイ」

 「ミコト達もご苦労様、ゆっくり休んでね」

 「ピュイ」

 ずっと北に延びる未踏の地下水道で、見張りをしていたミコトチームが、金盥リレーで、地底湖から本来の地下水路へと戻っていった。紅鮭も放流してあるから、好きなだけ食べてもらいたい・・


 「マスター様、こちらは準備できたようです、ジャー」

 ハクジャが、お供の若い衆を従えて酒樽、もとい脱出艇を見つめていた。

 「了解、前と同じ手はずで開けてみて」

 「では、行きます、ジャー」

 ハクジャに指示された若い衆が、水面に浮かんだ脱出艇の上部を、軽くノックした・・


 すると内部から合成音のような女性の声が響いてきた。

 「・・アラーム・・上部ハッチの開閉装置に故障発生・・繰り返します・・アラーム・・上部ハッチの・・」

 あれ?壊れてる?

 何度か試してみたけれど、警告音が鳴り響くだけで、状況に変化は起きなかった・・・


 「これは専門家に聞かないとダメそうだね・・」

 「アエン殿は遠征中ですし、タングステン殿に来てもらいましょうか?ジャー」

 「まだ、三日月湖の移住施設にいるかな?誰か伝令で送ってもらえるかな」

 「了解しましたです、ジャー」


 脱出艇は地底湖の岸に投網で固定して、スケルトン部隊と大蛙部隊で見張っておいてもらおう。

 そろそろ定時連絡の時間だから、コアルームに戻らないと・・・

 「ミコト、疲れてるとこで悪いんだけど、水霊の洞窟まで、牽引をお願い・・」

 「ピュイピュイ」

 来る時の3倍以上の速さで、元の場所へと戻れた・・・



 コアルームに戻ると、すでに通信オペレータの姿に戻ったコアが、ヘッドセットを調整しながらスタンばっていた。エプロンは着けたままだったけど・・・

 「コア、定時連絡よろしく」

 『らじゃー』


 『しーきゅーしーきゅー』

 『・・はい、こちら第一補給拠点のテオです。感度良好、家内安全、商売繁盛ですね』

 家内安全はわかるけど、商売繁盛ってなに?

 『最北湖は冒険者にとっても重要なランドマークですので、何組かと交易しました。枝豆が好評なんですよ』

 「それ交換して食料足りなくなったりしない?」

 『大丈夫です、途中で狩った鹿肉とかと交換もしてますから。それで枝豆の在庫がないので追加をお願いします・・』

 なんか当初の目的と違ってないかな?・・・まあ、いいか。


 「了解、ノーミンに在庫があるか聞いてみるね・・他には何かある?」

 『その冒険者から聞いた話ですけど、ギルドでも沼地の蜘蛛の監視を強めているそうです・・ビスコ村の記録では、過去に村の外壁にまで押し寄せた事例があるそうです・・』

 それって、この辺り一帯は余裕で飲み込まれたってことだよね・・


 『レッドバック・ウィドウの習性で、集団で延々と獲物を追いかけてくるので、村に逃げ込もうとした冒険者がトレインしたという事らしいですけど・・』

 「了解、そちらも蜘蛛の警戒は十分に行うように・・こちらからは以上」

 『了解しました。通信終わります』

 


 『しーきゅーしーきゅー』

 『あいよ、聞えてる、聞えてる。こちとら第二補給拠点のベニジャだぜ、ジャジャ』

 「どう?何か変化あった?」

 『それが大有りなんだぜ、哨戒班のチョビが大ネタ拾って来たんだぜ、ジャジャジャ』

 興奮するベニジャを宥めながら、詳細を確認する。途中から通信担当をエルフのソーサラーに変更して、対策を協議した・・・


 「ナーガ族の隠れ里を救援しに行くのは僕も賛成だけど、補給拠点の守りが最優先だからね」

 『だったら、第一機動部隊がドワーフをぞろぞろ連れて戻ってくるまで、ほっとくのかよ?全滅しちまうぜ、あいつら、ジャー』

 ベニジャはすぐにでも救援に向かいたいようだ・・気持ちはわかるけど、距離的には、第二補給拠点の方がよっぽど、黒衣の沼に近いんだからね・・


 「とにかく中途半端な戦力じゃ、状況を打破できないだろうから、第一機動部隊の合流は絶対条件だからね。こちらから連絡して急いで戻ってもらうから。ドワーフには最悪、その場で待機していてもらうことになるかもだけど・・」

 『しゃあねえか、でも急ぎで頼むぜ、大頭、ジャジャー』


 そのとき、第二補給拠点に、シャドウ・ウルフの遠吠えが響き渡った。

 それは、圧倒的な敵対勢力が接近してきた事を知らせる遠吠えだった。


 『なんだ?遠吠え?ジャ』

 「ん?どうかした?」

 『・・・拙いぜ、奴らこっちにも来やがった・・チョビ達は勝手に戻ってくるはずだ、こっちの迎撃準備急げ!ジャジャー』

 「ベニジャ?」

 『他人の心配してる暇がなくなったぜ、こっちにも蜘蛛の大群が来やがったぜ、ジャジャー』

 「数は?」

 『およそ50・・へへっ、こっちは11しかいないってのに、豪勢なこったぜ、ジャー』

 

 「・・いざとなったら拠点放棄して北へ合流するように」

 『蜘蛛が許してくれねえと思うんだぜ、それより北から来て貰う方が早いぜ、ジャー』

 「うん、救援の要請はした。それでも早くて1日後だよ・・」

 『それぐらい、アタイが持たしてみせるって、ジャジャー』


 そういったベニジャの声からも緊張した気配が伝わってきた。

 『指揮があるから、通話をきるぜ、ジャー』

 「頼んだよ・・」


 しかし、いつものベニジャの軽口は返ってこなかった・・・




 



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