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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第10章 ドワーフキャラバン編
312/478

第二次護送部隊

 コアルームの奥の壁には、この付近の地勢図が投影されていた。コアのダンジョンマップ立体投影の機能を利用した、簡易プロジェクションである。

 ただし精度はかなり怪しい・・

 正確な鳥瞰図のデータや、元となる地図が存在しない為だ。

 ドワーフのアエンが山脈方面を、ハーフナーガのヘラが隠れ里周辺を、そして蜜蜂の群体によるダンジョン周辺の索敵結果をパッチワークのように繋ぎ合わせているのだから、仕方が無いとも言えた。


 今、その簡易地図の上に、1つの光点が表示されていた。

 それが第一次護送部隊の、「予想」位置である・・・


 『しーきゅーしーきゅー』

 『ういっす、ワタリっす。こちらは通常営業っす。3部隊とも脱落者無し、概ね順調っすね』

 コアの遠話による提示連絡に、第一機動部隊のワタリが返事をしている。隊長のアップルは、部隊の行軍に神経を使っているので、ワタリが通信兵の役割をしているのだ。


 そして遠話が繋がると、簡易マップの光点位置に修正が入る。

 遠話は基本1分間の会話で、距離(km単位)分のDPを消費する。つまり逆算すれば相手とダンジョンとの距離が判明するのだ。

 簡易マップに表示されたのは「67」の数字・・・つまり67km離れた地点をワタリは移動中というわけだ。

 もちろん一直線に北上しているわけではないし、方角も少しずつずれている可能性はある。なので、光点の周囲には、台風の予想円のようなものが描かれており、誤差の範囲を表していた。


 『モフモフ助け隊から情報提供のあった、最北の湖は、今朝通過したっす。現状だと後方に2時間半ってとこすかね』

 こうやって部隊から見たランドマークの位置と、遠話ではじき出した直線距離を元に、より正確な地勢図を作っている最中だった。今も、ワタリの情報で、投影された最北湖の位置が、南に若干ずれた。


 『ここまで来ると、森林がなくなって、潅木や湿原植物が多くなるっすね。見通しはよくなったっすけど、足元がぬかるんで、狼部隊は嫌そうにしてるっす』

 夏の間は、気温もそれなりに上昇し、凍土が融け出して沼や湿地帯になる。

 泥場が好きなタスカーや、半水棲のドレイクはまだしも、狼チームは、ぬかるみを苦手にしているようだ。


 『例の蜘蛛はまだ確認されていないっす。ただ、野生の動物がかなり少ないのが気にかかるっすね』

 すでにレッドバッグ・ウィドウの生息圏内に入っているはずだが、姿を見ないという。動物が少ないのは、蜘蛛から逃げ出したからだと思うが、元々湿原には中型・大型の獣は居つかないのかも知れない・・


 『このまま北上して、今晩中には湿原地帯を抜け切る予定っす。キャンプは蜘蛛の圏内を離れてからとるっすよ』

 タスカーやドレイクには超過労働になるけれど、その方が安全だと思う。夜中に毒蜘蛛に奇襲を受けるとか、悪夢以外の何者でもないよね。


 『定時連絡終わりっす』

 『しれいぶ、おーばー』

 ヘッドセットを装着して、通信オペレーターの格好をしたコアが、遠話を切った。


 通話時間は56秒23、追加料金はかからなかったようだ。

 「しかしこれ、地味にDP消費するよね・・DCから引き落としできないのかな?」

 『ぷるぷる』

 ダメらしい・・コールセンターとの通話料金はDC払いが可能なのに・・



 さて、第一次護送部隊は順調に進んでいるようなので、第二次の部隊を送り出すとしよう。

 この第二次護送部隊は、物資を運んで、補給用の拠点を作るのが任務だ。


 「第二次護送部隊は、ジャイアント・ツンドラバジャー3体、ツンドラエルフ親衛隊からハイレンジャーのテオとスカウト2人、フロストリザードマンからエリート1人と兵士を2人選抜して。部隊長はテオだから・・」

 「え?私ですか?」

 「ギュギュ」

 「了解です、ジャー」


 「拠点は、最北湖の湖畔に設営する予定だよ。冒険者のよく利用する南岸は避けて、反対側の北岸の目立たない場所が良いかな・・」

 「そこでキャラバンが来るのを待てば良いですか?」

 「基本はそうだけど、周囲の索敵と、地形の把握は出来るだけ広範囲にやっておいて。あと荷物を降ろしたら、ジャイアント・バジャーにスカウトを一人つけて戻して欲しいかな。ピストン輸送するから」

 「了解しました」



 「主殿、私達は居残りか?」

 ダンジョンのメンバーの殆どが護送任務で出撃していくなか、取り残された感じのするロザリオから念話が届いた。

 「ロザリオとスケルトン部隊は、ダンジョンの防衛だよ。メンバーが減っている今は責任重大だからね」

 「う、うむ、そうだな、モフモフ度が急激に下がって、うろたえたが、ここを護る役目は大切だな」

 「ロザリオだからこそ、任せられる任務なんだよ」

 「うむ、主殿の信頼を裏切らぬように全力を尽くす!」


 急に張り切りだしたロザリオが、スケルトン部隊に号令した。

 「ダンジョン内の警邏を強化せよ。敵はどこから入ってくるかわからんぞ。常に二人一組で行動して、異変があれば、周囲にその旨伝えてから、確認にいけ、わかったな!」

 「「カタカタ」」


 「ギャギャ(ロザリオさん、チョロすぎです・・)」

 『こくこく』



 「我々が最終防衛線だと思え!けっして抜かれるなよ!」

 


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