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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第1章 サバイバル編
31/478

ただいま混み合って

 トゥルルル トゥルルル カチャ

 「はい、こちらダンジョンコールセンターです。システムにおけるバグ、チート、その他ハラスメントなどの報告、相談、苦情を承っております。なお、この通話はサービス向上のために、録音、録画、声紋識別、カウンターハック、対精神汚染防御を施しております。またこの通話でお教えいただいた個人情報は、国家、ギルド、教会、勇者、その他のダンジョンマスターに営利目的で流したりしないことを、ここに誓約いたします。

 申し訳ありませんが、ただいま大変込み合っております。もう年の瀬も迫り、締切に追われて業務に携わる時間も惜しいほどです。この番号にもう一度かけ直していただければ、他の担当者に回ると思いますので、時間を置いておかけ直しください。

 オペレーターは「貴腐人」が担当させていただきました。ご利用ありが・・」


 「ちょっと誰か3番の留守録止めて対応してくださいな。また担当の方が逃げ出していますの」

 「はい!私が全速力でとります!」

 「あ、貴女は動かなくてよろしくて・・・」  「ひゃー、どんがらがっしゃん」

 ブツッ ツー ツー ツー

 「遅かったですわね・・・」

 「主任、ボクの通話もコードが抜けてきれちゃったんですけど」

 「貴方の相手はいつものナンパ貴族ですわよね?なら問題ありませんわ」

 「チーフ、先ほどのバグの件、処理が終了しました。問題は解決したようです」

 「あら、ありがとう。貴女も執着する相手がいないときは優秀なオペレーターですのに・・・」

 「ふふふふふ、お褒めいただき恐縮です」


 はあ・・・コールセンターの取りまとめがこんなに大変だとは思いもしませんでしたわ。クレイマーへの対応よりも、癖のあるオペレーター達に仕事を割り振る方が神経を使うなんて。

 せめてあの娘がいてくれれば事務処理は完璧でしたのに。個性的なマスターに選ばれて、本来の業務に就くまでは見届けましたけれど。仲良くやってるのでしょうか・・・・



 「あう」

 「コールセンターとの通話が切れた?回線が混雑してるのかな?」

 現在、僕らは怪我で療養中のメンバーを除いて、全員がコアルームに集合している。なぜなら重大な問題が発生したからだ。

 「少し時間をおいてからかけ直してみて」 「ん」

 さっきまで混乱と絶望と怨嗟の阿鼻叫喚だった(主に僕が)この部屋に、一条の希望の光が差し込んだ。

 その名は「ダンジョンコールセンター」。ダンジョンのシステムにバグが発生したり、他のマスターとの関係がこじれた場合に、報告や仲裁依頼ができるらしい。


 ことの発端はこうだ。

 コアのレベルが上がり、新しい機能が選択(まあ元から備わってるはずの基本的な機能なので開放に近いかも)できるようになった。選択リストにでてるのは以前と同じ「拡張」と「変換」で、食料事情が心もとないので、ここは「変換」一択である。

 無事に機能開放が済んで、さあ、戦勝パーティーという時に、コアが目をそらせた。

 嫌な予感がした僕は、しぶるコアを硬軟織り交ぜて説得し、「変換」機能のリストを転送させた。


 それがこれだよ。


 変換リスト(食材)

食肉(獣):土竜肉 200g 5DP、狼肉 10kg 10DP、トカゲ肉 50kg 15DP、

   猪肉 150kg 20DP

穀類:じゃが芋 10kg 10DP

種子:松の実 500g 5DP

飲料水:湧き水 1樽 5DP

調味料:海水塩 1kg 5DP

食肉(昆虫):蝗 100匹 5DP


 ここにきて食べたものしかリストに載っていないんだ。

 これって食生活は全然改善されないってことだよね。自力で手に入るなら変換する意味ないもんね。


 やってられるかーーー


 ちくしょう、黒パンぐらいあるだろ、普通。硬いとかすっぱいとか文句いいながら、「スープに浸すと食べやすくなるね」とか定番だろう。

 なんだ食肉(昆虫)って、これからカテゴリーになるほど虫を食べなきゃいけないのかよ。


 神様のばっきゃろーーーー   きゃろーーー   きゃろーー


 「キュキュ?」

 心配した親方が僕にリンゴを差し出してくれた。

 「・・ありがとう・・でもそれ毒だから・・・」  「キュ!?」


 コアに聞いたら建材や武器・防具なども「変換」のリストは空に近いらしい。いくらなんでもハード過ぎないか?これ「設置」の前に「変換」とってたら終わってたよ?

 神様に文句言う方法がないかコアにきいたら、苦情受付窓口があると教えてもらった。何かのミスでリストが欠落しているという一縷の望みに賭けて、「ダンジョンコールセンター」に連絡をとってみたんだ。


 しばらくしてかけ直してみると繋がったらしい。

 「はい、こちらダンジョンコールセンターです。オペレーターは「姫」が担当しておりますわ」

 「え?「姫」ってあの「姫」?」

 「いきなり失礼なお客様ですわね。コードネーム「姫」を名乗れるのは私1人ですわよ」

 「ああ、やっぱり「姫」だ。お久しぶり、っていっても僕の体感だと1週間もたってないんだけど、コアのマスターです」

 「奇妙な挨拶ですこと。ダンジョンマスターなら皆さんコアの・・・って、あら、もしかして、あの時の・・・」

 「はい、チュートリアルではお世話になりました」

 「これはご丁寧に。でもお元気そうでよろしかったですわ。少し心配もしていましたから」

 「それが・・・あまり元気でもないんです・・・」

 「そうでしたわね、コールセンターに連絡されたということは、何かしら問題が発生したということですわね」

 「はい、でも担当が「姫」で助かりました。僕らの事情にも詳しいですし、優しいし、頼りになるし」

 「もちろんですわ、この「姫」にお任せあれ!」

 「お願いします」 「ん♪」


 「なんだろう、主任がすごい張り切っているけど、あれって悪い男に貢がされるお金持ちのお嬢様みたいにボクには見えるんだけど」

 「ふふふ、チーフが担当でラッキー、面倒な説明もいらないし、甘ちゃんだし、おだてればその気になるし、って事ですかね。悪い男も素敵ですね、ふふふ」



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