今度は本物
前話の306話は一度投稿した内容を削除しております。また、その関係で、304・305話に一部変更を加えました。工事中の話には、閑話を差し込む予定です。本編はこのまま続いていきますので、よろしくお願いします。
「ガランとしてるっすねー」
ドワーフの居住用の区画を見た、ワタリ達の感想は、「広いけど何も無い」だった。
「うちは狭い空間に、みしっと詰め込んであるからねー。小部屋に6人とか寝泊りしてるし・・」
こちらが一段落したら、皆の居住スペースも拡張を考えておかないとね・・
25マス部屋のうち、正面の二つが寝室、左の1つが共有の食堂兼リビング、右の1つが共用の鍛冶場で、奥に個人用の鍛冶場が3箇所ある。そのうちの1つがアエン専用だ。
「水場とトイレが別個に必要かな・・壁からの湧き水を設置して、上水道の代わりにして、
その余剰排水を床下を通して、簡易水洗トイレにすればいいね・・」
『うおっしゅ』
「倉庫も必要じゃないすか?寝室に物を置くと、いっぱいっすよね?」
ああ、そうだね・・寝室の左並びに9マス部屋を3つ増設して、1マス通路で繋げておこう。扉は寝室との境だけでいいかな・・
『くろーぜっと』
食料の一時保管庫も必要かな・・食堂の隣に9マス部屋を拡張して1マス通路で繋げておこう。その奥に酒蔵庫も同じサイズで拡張して、1マス通路を挟んで、堅牢な鉄の扉(鍵付き)でしっかり隔離しとかないとね・・
『わいなりー』
「それで、何人、引っ越してくる予定っすか?」
うちは、最大で50人ぐらいだと見込んでいるんだけど、リュウジャの方の人気によって、もう少し減るかもね・・
「むこうも50だとしたら、100人以上ものドワーフが、どうやって来るんすかね?」
ワタリがなにげなく聞いてきた・・
「そりゃあ・・地下水路で・・・」
「ドワーフって水中呼吸できたっすか?」
「・・できないね・・あれ?どうするんだろう?」
なんか勝手に大型潜水艦で乗り込んでくるイメージがあったけど、そんな移動方法があったら、単座の脱出艇で逃げ出したりしないか・・
「コア、至急、管理局に連絡とってみて!」
『ぴぽぱ』
トゥルルル トゥルルル カチャ
『はい、こちらダンジョンコールセンターです。ただいま締め切りに追われていて電話に対応することが・・・』
「もう入稿は間に合いませんよ、あきらめて応対してください『貴腐人』さん」
『カチャッ 大丈夫、大丈夫よ、まだ最後の手段が残ってるんです・・』
「コピー誌ですか?クオリティがた落ちですよね・・」
『だぁーーー人が気にしていることを!』
「とにかく、貴女が忙しいなら上司の方に廻してください・・」
『わかりました・・・ところで「コア」さんは短期のアルバイトに興味ないですか?・・』
やばい、アシスタント急募だ・・
『はい、こちらダンジョンコールセンター主任です、うふふ』
「『管理人さん』こちら『コア』のマスターです。先日のダンジョンバトルの結果の進捗を知りたいんですけど・・」
『あらあら、丁度良い所でした。双子姉妹からも連絡が来ていますので、繋げますね、うふふ』
『・・・はい、こちらアイスドール』
「あ、『コア』のマスターです・・」
『ん?ああ、君はそう名乗るのだな・・』
二つ名とかないからね・・
『管理局経由で3元中継してるから、ちゃんと打ち合わせするんですよ、うふふ』
これ、通話料は誰持ちですか?・・
『割り勘です、うふふ』
ですよね・・・
「それで、移住希望者は何人になりましたでしょうか?」
『まだ迷っている者もいるので、確定ではないが、現状で90名を越えているな・・最終的には100ちょっとだろう・・』
やっぱり、100名以上か・・・
「ちなみに残留希望者は何人でした?」
『梃子でも動きそうもないのが50、その世話を希望しているのが30弱かな・・』
「やはり動きたくない人がでましたか・・」
『周囲のドワーフが説得してるが、あれは無理だろう・・・船が沈むときの船長みたいなものだな・・』
「その家族ですかね、世話で残るのは・・」
『頑固祖父さん連中は、世話焼きなどいらんと言ってるそうだが、はいそうですかと見捨てられない者もいるようだな・・』
そこはもう、僕からお節介を焼いても迷惑なだけかな・・
『それと若干名、扱いに困っている連中がいるんだが、それは引き取ってくれるのかな?』
「・・ドワーフですよね?」
『それは間違いない、自分達をクランの中で最も重要な地位にいたと主張する連中だ・・』
うわあ、あれの同類かあ・・・正直遠慮したい・・
『本人は移住を希望しているので、そちらに引き取ってもらいたいのだが・・』
「周りのドワーフはどんな感じですか?」
『清々しいくらい、ガン無視してるな・・あれが正しい対応なのだろう・・』
「正直、いりません・・・」
『いやいや、今なら多少の宝石をつけるぞ・・彼らが個人財産だと主張して盗み出した他人の遺産だがな・・』
すごい恨みが篭ってそうなんですけど・・
「・・わかりました・・引き受けます・・」
『じゃあ5人ほど追加になるな。リストに上げておこう』
「5人もいるんだ?」
『5人とも自分が一番エライと主張しているのが不思議なのだがな』
うへえ、厄介事になりそう・・・
『それで引き渡し場所だが、すまないが、こっちまで受け取りに来てもらえるか?私の眷属は水棲が多くて、妹のは燃えてるからな・・正直、地上を歩いて護衛は無理がある・・』
「地下水道は使えないですかね?」
『5人や10人なら水中呼吸の呪文を掛け捲って、グレイシャル・タートルで運ぶ手も使えるが、100人以上だとな・・呪文が切れる事故で1割ぐらいは覚悟することになると思うぞ・・あと、ドワーフが水を極端に嫌がるから、その説得がな・・』
そういえばそうだったね・・アエン達はよく潜水艦なんかで脱出したよね・・
『他の種族を召喚するにも、手持ちのDPがなくてな・・委員会に借金する前に、そちらと相談というわけだ・・』
融資という名のサラ金ですね・・
「いいですよ、最初からこちらで迎えにいくつもりでしたし、少し時間がかかるかもしれませんが、引渡しが現地でも構いません」
『そうしてもらえると助かる・・あと途中にある黒衣の沼は可能な限り迂回したほうが良い・・行きも帰りもな・・』
「正体不明の何かが潜んでいるんでしたっけ?」
『ああ、正真正銘の魔女がいる・・』
「・・・やっぱり地下水道にしませんか?」
『実は、あの地下水道も黒衣の沼の真下を通過しているんだ・・今までは見過ごされていたが、団体で通過するとなると・・・』
水中で襲われて解呪されると、溺死するね・・
「その魔女って、挨拶したら見逃してくれないですかね?・・」
『・・正直、何を考えているかわからない相手なので、なんともいえないな。眷属と配下が戦ったことがあるが、あれは遭遇戦だったしな・・』
「魔女の配下ってなんでした?」
『でかい蜘蛛だ、背中の赤い、猛毒をもった・・』
それって、つい最近聞いたような・・
『「黒後家蜘蛛の魔女」、黒衣の沼の主はそう呼ばれている・・』




