表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第10章 ドワーフキャラバン編
306/478

閑話休題

この話は、工事中だった306話の差し替えになります。

  このお話は、『胡蝶の明晰夢』の後日談です。


 「ういっす、ニンジャ・マスターも間近のワタリっす」

 「まあ順調に進化はしてるけどね・・油断するとまたトリックスターとかに寄り道することになりそうだよ」

 「それは勘弁っすね」

 「アズサもくノ一には成れなかったしね」

 「ギャギャ(まだ可能性はあるはずです・・)」


 「で?二人揃って今日は何?」

 「ギャギャ(前回のスキャンの結果でお伺いしたことが)」

 「ざっくり流されたっすけど、新スキルとか説明受けてないっすよ」

 ああ、コアが酔ってスキャンを乱れ打ちしたやつね。確かに上映終了後のテロップのように流れていったねえ・・

 ちょっと再確認してみようかな。



 「アズサとアサマは、ランクが上がってデスブリンガーになってるね」

 「ギャギャ(新技能の弱点看破が良くわからないんですが・・)」

 「オイラにも付いたっすけど、特に敵の苦手な攻撃属性とかは、思い浮かばないっす」

 ああ、本当だ、ワタリにも新技能で増えているね・・


 弱点看破は、相手の防御の薄い所や、急所を見抜く技能みたいだ。クリティカル・ヒットの確率を上昇させる様だから、技能の「クリティカル」の上位版なんだろうね。


 「なるほど、だから特に効果が現れた気がしなかったっすね」

 「ギャギャ(そういえば、クリティカルヒットが出やすくなった気がします)」



 次に・・テオは、ハイレンジャーになったのか・・

 「ギャギャ(1ランクで2個も増えるってありなんですか?)」

 「そうっすよ、技能が9個とかずるいっす」

 「ギャギャ(ワタリさんは10個ありますけどね・・)」

 「オイラは・・ニンジャっすから・・」

 「ギャギャ(ずるいです・・)」


 えっと・・技能の数については僕も予測しか出来ないんだけれど、基本はランクと同じみたい。

 「ギャギャ(なるほど)」

 それで、クラスによっては、増減するものもあると・・

 「減ったりするっすか?」

 術者系は、減ってるクラスがあるね。きっと呪文を習得するのに、技能の枠も使ってる扱いなんだと思う。

 「へー、知らなかったっす・・」


 逆にローグ系アサシン系レンジャー系は、ボーナスなのか一つ枠が多いね。

 「ギャギャ(私はランク6で技能が7つです)」

 それらの上級職で、特技は増えないけど技能が2つ増えるタイプがあるみたい。

 「それがオイラのニンジャ・アサシンとテオのハイレンジャーっすね」

 最後に、カスタム(召喚時の付与)とスペシャル(個人の資質もしくは通信教育)で増えた分は別枠です。


 「オイラの共通語とか、テオのハリネズミ語っすね」

 「ギャギャ(後からカスタムで技能は増やしてもらえないんですか?)」

 無理みたいだね。あくまでカスタムは召喚時のみのボーナスかな・・


 「ギャギャ(どこかでくノ一の通信講座を開催していないでしょうか・・)」

 いや、それはどこにもないと思うけど・・



 「あと、穴熊チームが首を捻っていたっすけど、特技の横回転って、縦回転とどう違うっすか?」

 ああ、あれね、横回転は使用MPが1少なくて、草刈とか森林伐採に役立つみたい。

 「ギャギャ(便利系なんですね・・)」

 元々、横回転から派生したのが縦回転だからね。やんまー達に教えた順序が逆だったんだよ。


 「縦回転の方が強いっすか?」

 回転速度に重力が加算されて、打ち下ろす牙に体重が乗るかららしいけど、実際はどうなんだろうね・・

 ちなみに技能の双撃は、両方の爪で同時に襲いかかる、双剣の獣バージョンだ。


 「穴熊チームも3匹は巨大化したし、すっかり戦闘職っすね」

 あれで、ノーミンがブーストすると2倍ぐらい強くなるからね・・

 「ギャギャ(ますます負けてられません・・)」


 いや、眷属同士で競わなくてもね・・

 「アズにゃんは、穴熊チルドレンに、アイドルの座を奪われたから、意識しているっす」

 「ギャギャ・・(どうやらワタリさんは、またクロスボウの的になりたいみたいですね・・)」


 「うそうそっす、アズにゃんは、まだ賞味期限切れじゃないっすよ、マジで」

 「ギャギャ・・(まだって事は、近いって思ってるんですよね・・)」


 「ヘルプ、ヘルプっす・・」


 

 遠くから、射撃音と悲鳴が響き渡ってきた・・・


 ・・ワタリも鳴かずば、撃たれまいに・・

  『なむなむ』




  ある夏の夜の女子会


 ある日の夜、カジャが発案して、納涼百物語が催された。

 まあ、ダンジョン内は、コアが室温調整しているので、年中適温なのだけれど、そこは雰囲気を楽しみたいらしい。

 わざと蒸し暑くした部屋を用意して、女子だけでお泊り会をしていたようだ。


 参加者は、カジャ、ベニジャ、アエン、ヘラ、アズサ、ロザリオ、コアの7人である・・

 ロザリオが混じっている時点で、すでに3話ぐらい語り終わっているような気もしないではないが、そこはあえて言わないでおこう・・


 蝋燭の数が足りなかったので、灯りは、小皿に大豆油を溜めて、灯心だけ差した行灯形式になった。

 数も、百も作るのは面倒だからと半分以下に減らされている。

 まあ、一晩で百話は、徹夜でもしないと難しいだろうから、実際には何人かが寝落ちするまでのお遊びである・・・


 

 最初は発案者のカジャから話を始めた。


 「これはメイド仲間から聞いた話なんですが・・」

 カジャが語ったのは、ある人族の領主の後妻になったエルフの令嬢の物語であった。


 「その領主は、以前に6人の妻がいたそうで・・」

 「やばい、やばい、もう7人目ってだけで、やばいってわかるだろう、ジャジャ」

 「ギャギャ(ぜったいに殺されてますよね、前の6人)」

 「しかし何故、エルフの里から領主に嫁ぐのだ?しかも訳有りの人族へなど・・長老会の差し金か?」

 

 「少し静かに聴いて下さい・・」

 カジャが騒ぎ立てる3人を睨んだ・・

 「「「はい・・」」」

 その時、確かに室温が2度は下がったと、参加者は口々に証言してる。


 

 やがて物語りは佳境に差し掛かり、ぜったいに開けてはいけないと言われていた、廊下の突き当たりの扉を、エルフの令嬢がノックの呪文で開けてしまう・・

 「呪文かよ!ジャジャ」

 「ギャギャ(彼女は鍵開けの技能が無かったんですか?)」

 「木の扉なら、蹴破れるぞ」


 今度は、カジャの話に聞き入っていた、残りの3人から冷たい視線が突き刺さった。

 「「「ごめんなさい」」」

  

 気を取り直したカジャが、物語を進める・・

 「呪文によって開け放たれた扉の奥には・・」

 ゴクリ と誰かが固唾を飲み込む音が響いた・・


 「6体の前妻の蝋人形が、椅子に腰掛けて、こちらを虚ろな目で見ていたという話です・・」

 「「「やっぱり・・」」」


 「そしてその蝋人形の出来映えに感動した、エルフの令嬢は、自分の姿を模した人形を特注し・・」

 「あれれ?」

 「人形愛好家の領主と、中睦まじく暮らしました・・・」

 「なんか良い話になってるんですけど・・」


 灯明の灯りを一つ吹き消したカジャに質問が乱れ飛んだ。


 「結局、6人の前妻は?ジャジャ」

 「病弱だったり、馬車の事故で亡くなったりしただけだそうです」


 「ギャギャ(じゃあなんで扉を開けるなと)」

 「蝋人形は、室温の変化に弱いので、夏の間は開放厳禁だそうです」


 「人形の中に死体が隠されているとか、生きている内に塗りこめたとかないのか?」

 「いえ、まったく・・」

 「なら、この話のどこが怪談なのだ?」


 ロザリオの質問に、周りの皆も頷きながらカジャを見た。


 「そのエルフ令嬢は、長命種として、領主より長生きし、彼が死んだときに、その蝋人形を手作りしたそうです・・」

 「「「まさか・・」」」


 「その後、新たな領主となったエルフの令嬢の屋敷では、行方不明になるメイド、庭師、執事が後を絶たず、それに呼応するように、廊下の開かずの扉が増えていったという・・・」


 「そっちかーー」x7



 カジャの巧みな話術で引き込まれた、メンバーは、次々と自慢の怪談話を披露していった。

 コアは主に、空中に投影した幽霊の映像だったけれども・・


 やがて2回りほど話し手が巡った所で、百物語は終わることになった。

 だが・・


 「ねえ、消された灯明の数が合わなくない?」

 「誰かが間違えて消したんだろ、ジャー」

 「それはない、私が数えていたからな、消したのは話と同じ、16だ・・・ん?」


 メンバーはお互いに顔を見合わせた・・


 「1・2・・7人だよな、ジャジャ・・」

 「でも、カジャさんの最初の話のとき・・7人が相槌打ちましたよね・・」

 「私は話手ですから・・」

 カジャは勿論否定した。


 その時、部屋の隅に、透明な何かが横切った・・


 「「「でたああーーー」」」



 本物が出たと騒ぐ女子会のメンバーを置き去りにして、透明な何かは壁をすり抜けて立ち去っていった。


 『メイドの話と聞いて、つい立ち寄ってしまいました・・反省ですね』



 彼女が姿を現すのは、もう少し後の話になる・・・




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ