芸は身を助ける
前回で300話に到達いたしました。これも読者の皆様のご声援に支えられてのことだと、深く感謝いたしております。
大勢の方から祝辞をいただきました。本当にありがとうございました。
結局、あのあと「管理人さん」を追い返すことに成功した・・
何か問題が起きたら、こちらから連絡することで、納得・・はしていなかったけれど、説得できた。
『あらあら、それではそのときまで、ごきげんよう、うふふふ』
まるで問題が起きることを望んでいるような、不吉な笑い声を残して、管理センターへと戻っていった・・
次の日、「小竜会」に遠征していたメンバーが帰還し、全員が揃ったところで、改めて今回の騒動が終結したことを祝って、祝勝会を開くことにした。
マリア達が居た時に、全員が顔を合わせるわけにもいかず(主にユニコーンのニコとか)、宴会をお預けしていたのだけれど、どうせならリザードマンの長老会に出席していたメンバーも戻ってからにしようと決めていた。
「マスター様、ただいま戻りました、ジャー」
一行を指揮していたハクジャが、誇らしげに帰還の報告をしてきた。
「お帰り、ハクジャ。難しい任務だったけど、無事にクリアしてくれたみたいだね」
「小竜会の正会員には成れませんでしたが、準会員の資格を得ました。マスター様のお指図で、隠し持った武器も役立ちまして、なんとか全員で戻ってくることができました、ジャー」
「それが何よりだよ・・ハクジャ達の帰りを待って、宴会の準備が出来てるから、旅の疲れを癒しながら、くつろいで」
「ははっ、態々、ワレらの・・」
「あ、お酒あるんですか、飲み放題ですよね? 癒されます、癒されます」
ハクジャの脇からドワーフのアエンが飛び出してきた。
「これ、アエン殿、マスター様に会ったら、先に言うべき事があるはずです、ジャー」
「あ、そうですね・・この度は仲間の為に尽力頂きありがとうございました・・これからもご厄介をお掛けすると思いますが、その分、鍛冶や金属細工でお返しできると思いますので、よろしくお願いします・・あと仲間が移住すると酒蔵が必要になると思いますので、そちらもよろしくお願いします・・」
アエンは相変わらず、お酒が優先みたいだけど、言われてみれば確かに、居住区と鍛冶場の拡張以外に、お酒の貯蔵庫も設置しておかないと、騒ぎになりそうな気がするね・・
「あと鍵は頑丈な物にして、保管もきちんとした方が良いっすよ」
「ギャギャ(その鍵は、ワタリさん以外に預けてくださいね)」
「オイラは盗み酒なんてしないっすよ」
うん・・ドワーフとワタリの酒癖はマイナス方面に信頼できるからね・・
「「心外です」」
アエンとワタリの声がハモッたけど、他の誰もが、納得顔なので却下しよう・・
「まあまあ、立ち話もなんですから、皆さん中にお入りになって、積もる話でもされたらどうでしょうか」
確かにそうだよね、じゃあ皆、ダンジョンにって・・・貴女、誰?
ハクジャの後ろに、見たことない(たぶんだけど)フロストリザードマンの女性が立っていた・・
「申し遅れました、ワタクシ、冥途のカジャと申します、流れの賭博師でございます。この度、こちらの一家に草鞋を脱がしていただきたく参上いたしました。なにとぞ、よろしくお引き回しのほどを願います・・」
なんか一人増えてるんですけど・・
『おひけーなすって』
「つまり、テオに弟子入りするために、こちらに?」
「はい、あの大博打に動じない胆力、さらには札の音を聞き分ける聴力、どちらも堅気の衆とは思えない活躍ぶりでした・・お傍に居て、少しでも学びとれればと、押しかけた次第です・・」
とは言ってもハクジャに聞いたら、かなり有名な女賭博師さんらしいし、うちに居候しても良いことないと思うんだけど・・
「ギャギャ(マスター、カジャさんの言っているアレは建前ですよ)」
「だよな、アタイでもわかるぜ、あれは惚れたね、ジャジャ」
え?でもテオはエルフだし、なによりモフラーだよ?
「ギャギャ(恋に落ちたら、そんなこと些細な問題です)」
「しかしテオもやるな、カジャと言ったらアタイでも知ってる大物だぜ・・大金星ってやつだぜ、ジャー」
えーー、いいのかな・・話題の主は、さっそくハリモグラチームに、通信講座が役立ったことを報告しながら、モフってるんですけど・・
「まあ、本人が良いと言っているのですから、構わないのでは?ジャジャ」
「アタイもカジャに賭博のイロハでも習おうかな・・芸は身を助けるって本当だったんだぜ、ジャー」
というわけで、冥途のカジャはゲストではなく、眷属化することになった・・・
そしたら、アエンまでもが眷属化を希望してきた。
「私は、もっと実利的な理由ですよ。これから移住してくる仲間達に、どこに属するか選択してもらう時に、誰かが実例を示さないといけないじゃないですか?それは私が適任だろうってタングステンさんとも話合って決めました・・」
なるほどね、だけどアエンはマリアと知り合いだから、向こうに行くものだと思ってたんだけど・・
「それも考えましたが、もうこちらで鍛冶場も開きましたし、ここの皆さんとも縁ができましたからね」
「そうしてもらえるなら、僕としてはありがたいけど・・・そしたらこれからもよろしくね・・」
「はい、こちらこそ」
こうして新しく二人の眷属が誕生した・・
フロストリザードマン・ギャンブラー「冥途のカジャ」:凍結蜥蜴人 賭博師
種族:亜人 召喚ランク7 召喚コスト490 眷属化コスト245
HP39 MP20 攻撃7(+6鋼の短刀) 防御6(+3特注メイド服)
技能:小剣、冷気耐性、半水棲、家事、隠密、暗器、賭博、イカサマ、幸運
特技:ステルス(隠蔽)、ジャグリング(大道芸)、コン・ゲーム(詐欺)
マウンテンドワーフ・クラフトマスター「アエン・フォージキーパー」:山岳ドワーフ 1級製作師
種族:亜人 召喚ランク7 召喚コスト490 眷属化コスト245
HP49 MP18 攻撃8(+9ミスリルハンマー) 防御7(+5ミスリルエプロン)
技能:鎚、毒耐性、頑強、金属細工、鍛冶、鑑定、錬金、魔道具製作、魔道具鑑定
特技:メルト(溶解)、フォーム(成型)、エンチャント(魔法付与)
うん、なんだろう・・カジャの技能を見るだけで、波乱万丈な人生が思い浮かぶんだけれど・・
あと、アエンに家名があるんだね、名乗らないからドワーフには無いのかと思ってた・・
「フォージキーパーは家名ではなくクランネームです。『鍛冶場の守護者』でフォージキーパーですね。家名のある、自称尊い家系の人達も居るにはいるんですが、ドワーフの中では技能の優劣が第一なので、ほとんど無視されてます。なのでクランに所属すると、皆、クランネームで呼ばれるようになるんです」
なるほどね・・特技の3つはクラフト系?
「はい、MPを消費するんで、普段使いはできないですが、急ぎの時は役に立ちます」
技能で魔道具鑑定もできるみたいだし、これからは冒険者の装備品も有効活用できそうだね・・
『かっぱぎ?』
こらこら、もう少し穏便な言い方があるでしょう・・
『じゅぎょうりょう?』
「高くつきそうっすね」
迎撃用の罠もバージョンアップしとかないとね・・
『かみんぐすーん』
DPの推移
現在値: 5000 DP (8587 DC)
変換:宴会料理(1次会) -225
眷属化:カジャ(R7) -245
眷属化:アエン(R7) -245
変換:宴会料理(2次会) -340 (追加の可能性あり)
残り 3945 DP (8587 DC)




