本来なら5分ほどお時間をいただきますが
モフモフ防衛隊(残機2/補給21)
『くうかんしんどー』
白熊に獣変化していたノーミンがファイアー・ドレイクを削りきるかと思ったとき、敵がもう1体、空間転移で奇襲してきた。
そして床に並べてあるトラッププレートの内の1枚を踏んだ・・
『あくしでんと!』
「ノーミン、3番砲塔が誤作動した。着弾まで30秒!」
『モフー!』
しかし、罠を踏んだと焦った、サラマンダーが横にずれて、さらにトラッププレートを踏み抜いた。
『いち・ごー・ろく』
「1番・五番・六番も?10秒・23秒・50秒・60秒で来るよ、これは無理だ、撤退!」
『モフモフー』
即座に床の中央に開いた縦穴に飛び込むと、手近の退避通路に体当たりして飛び込んだ。この通路の扉には、鍵も罠もかかっていない。本来の非常用退避通路として作ってある。
安全な場所に逃げ込んで、ほっとしたのも束の間、シャフトにサラマンダー・マーガスが姿を現した。
「・・なるほど、そこは安全地帯なのか・・ならば、炙り出してやるまでだ・・」
そう言い放ってサラマンダー・マーガスが詠唱を始めた。
「モフ!」
反射的に、詠唱を阻害する為にノーミン白熊はマーガスに踊りかかる・・
その突進を、マーガスは宙に浮かび上がることで、回避した。
「モフ?!」
一瞬、敵を見失ったノーミン白熊であったが、すぐにマーガスが飛行か浮遊の呪文をを使っているのだと認識した。
シャフトの少し上に逃れたマーガスは、再び、呪文の詠唱を始めたが、ノーミン白熊も「登攀」の技能を使って斜面を駆け上がり、追撃を仕掛けた。
マーガスは火炎属性が防がれることを知っているらしく、詠唱時間の短い、無属性のマジック・ミサイルを連射してくる。ノーミン白熊は直撃を覚悟で、体力にモノを言わせての相打ち作戦にでた・・
「それにしても、もうとっくに10秒過ぎているのに、砲弾がこないのは故障?」
シャフトで攻防を繰り広げる2体を監視しながら、気になったことをコアに尋ねた。
『どれいくー』
なんと、ファイアー・ドレイクが落下してきた岩石砲弾を押し止めているらしい。
「確かに初速は遅いから、タイミングが合えば、止められるだろうけど・・・それ、2発も3発もできるのかな?・・・」
僕の素朴な疑問は、すぐに答えが出た。
『むりー』
「フシャーーー」 ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ
どんどん追加される岩石の重量に耐えかねて、ファイアー・ドレイクが転倒した。あとは連鎖的にシャフトの底まで一直線である・・
「ドレイクとの戦いで傷ついていなければ、お主の勝ちだったろうがな・・・」
止めの一撃を放とうとしたマーガスの斜め上から、ファイアー・ドレイクの巨体を転がしながら、続々と岩石砲弾が落下してきた。
「なにいぃ!」
「モフウゥ!」
慌てて退避通路に避難しようとする2体だったが、お互いが邪魔になって、砲弾に追いつかれてしまった・・
「なんの、浮遊があれば押し下げられたとしても、下に叩きつけられることはない!」
そう叫んだマーガスの尾っぽを、ノーミン白熊の爪がしっかりと握り締めていた。
「モッフ!!」
「やめろ、放せ、俺を巻き込むなあああ」
3体は、もつれあいながら、シャフトの底へと転がり落ちていった・・・
マリア侵攻部隊(残機6+14留守番/補給1097)
マリアの部隊はボス部屋の隣の大部屋に集結していた。
「これで全員ね?」
『ああ、ピグミー・ゴブリンを含めて、全て集まった・・』
各部屋に留守番として散らばっていた眷属を集めるのに、思ったよりも時間がかかってしまった。すでに約束の5分は過ぎようとしていた・・
移動途中にゴブリンが落とし穴に落ちたり、ピグミー・ゴブリンが迷子になったりしたが、なんとか準備は整った。
「さあ、竜退治に出発するわよ!」
「ギャギャ」 「キャワ」 「ゴブリンがすることじゃないがのう・・」 「・・任せろ」
T字路の通路の左右に分散して待機し、隠し扉とその奥の豪華な扉を、ゴブリン・アサシンが慎重に押し開く・・・
ボス部屋の中が見えたと思った瞬間、炎の奔流が、通路を縦に埋め尽くし、ゴブリン・アサシンを瞬時に焼き尽くした。
「ちょっと!いきなりな挨拶ね!」
マリアが大声で中に呼びかけた。
すると、ボス部屋に反響するように、双子姉妹の妹の声が響き渡った。
「あんまり来るのが遅すぎて、寝ちゃったですよ。今のはフレアを待たせた罰ですー」
『居眠りを怒られた、腹いせというやつですね』
『・・どうやら、妹の方で間違いないらしいな・・担当しているダンジョンコアもイスカだろう・・あの遠慮の無さ加減は・・』
「・・あれはダンジョンコアとしてどうなのよ・・」
『・・・まあ、あれだ、個性というか、スパイスというか・・・』
「・・もう片方は至極まともなのに、きっとあれね、抱き合わせ商法って奴ね・・」
『・・絶対に違うとは言い切れないな・・』
「何をこそこそ話してるです!ビビッてこないなら、こちらから行くですよ!」
『マスター、サイズ的にパイロ・ヒュドラはこの部屋からは出れませんが』
「・・・とっとと掛かってきやがれです!」
「はっ、言われなくても倒してやるわよ!そっちこそ、アタシの新しい力に腰を抜かさないようにしなさいよ! ボン、ゴブリン・エンペラーを召喚しなさい!」
『了解した、マスター』
T字路の中央に巨大な召喚魔法陣が出現した。
「ゴブリン図鑑が完成して、アタシは新たに『ゴブリン使い』と『ゴブリン博士』の称号を手に入れたわ!その能力によって、ゴブリン種の召喚コストが2割引き、さらにカスタム召喚のコストが2割引きのうえに2つの技能が付与できる!どう?最強でしょ?」
「ぐぬぬぬ、ずっこです、フレアもカッコいい称号が欲しいです!」
『ゴブリン博士はカッコいいですかね?』
「最強のゴブリン・エンペラーに『火炎無効』と『2刀流』をカスタムした無敵のゴブリンが今、ここに誕生するのよ!!」
召喚魔法陣から巨大なゴブリンが姿を現そうとしていた・・
「わざわざ出てくるのを待ってるギリはないです、パイドラちゃん、焼いちゃってください!」
「ギシャーーー」x12
12本の首から放たれた業火は、通路を突き進んで、正面の大部屋の扉さえも破壊してしまった。
その途中にあった召喚魔法陣も、召喚途中だった眷属も、ことごとく消滅してしまった・・・
「ちょっと!召喚途中に攻撃するとか、マナー違反でしょ!」
「えっへん、フレアは良く褒められるですよ、マナーが出来てないねって」
『マスター、それは褒め言葉ではありませんが』
「どっちにしろ、これでもう大物は呼べないはずですです。ファイアーシスターズの勝利なのです」
「あ、大丈夫、ここに事前に召喚しておいた、ゴブリン・エンペラー・カスタムがいるから」
「なんですと?!」
マリアの声と共に、通路の左側から、両手に剣を持った堂々とした体格のゴブリンが姿を見せた。
「我輩が、皇帝である!」




