誰だっけ。ほら、あの
マリア侵攻部隊(残機1+2留守番/補給3720)
「ボン、スノーゴブリン・アサシンを3体、召喚して」
『了解した、マスター・・武装はどうする?』
「遠距離主体だからクロスボウでいいわ、予備に鋼の小剣と短剣をつけといて」
『了解した・・』
すぐさまマリアを護るように3体のスノーゴブリン・アサシン(R4/160)が召喚された。
「それと罠探知要員も必要か・・ボン、スノーゴブリン・スカウトを罠探知カスタムで1体召喚して」
『了解した、マスター・・』
このスノーゴブリン・スカウトカスタム(R3SC/135)は、通路の前方、ゴブシロードの横に召喚された。
「ゴブシロードとスカウトが前衛、アサシンは後衛で行くわよ」
「「ギャギャ」」
「御意」
スカウトが扉の罠を調べ直して、安全を確認すると、ゴブシロードが蹴り開けた。アサシンとマリアは廊下の曲がり角に近い位置まで下がっている。
最初の大部屋は、床に林立する氷の柱が、なぜかこの入り口の前に移動しており、半円形に取り囲んで檻のような形状になっていた。部屋の中には一見すると何もいないように見える・・
ゴブシロードが部屋の中に慎重に足を踏み入れたとたん、天井から巨大な氷柱が降って来た。
「うぬ!」
直撃を避けながら、ゴブシロードが氷柱をなぎ払うと、さらに次々と降り注いでくる。
そのこと如くを打ち払うオーガー侍を、死角から1条の青白いボルトが襲った・・
「くっ!」
咄嗟に首を傾けて致命傷は避けたが、その肩には深々と、氷のクロスボウボルトが突き立っていた。
「シャハ・・(あれに反応するとは、聞きしに勝る化け物だぜ・・)」
自らの撃ったボルトにより、砕け散った氷の膜の裏側から、サハギンのスナイパーが姿を現した。
それを見つけたオーガー侍が、駆け寄りざまに氷柱の檻を切り倒して、接近しようとしたが、サハギンスナイパーは、踵をかえすと、T字路の廊下へと姿を消していった。
それを追おうとするオーガー侍を、マリアが引きとめた。
「深追いは禁物よ、一度廊下まで戻って」
「御意」
「アサシン2体は先ほどの部屋に折り返して、逃走した敵が別の出入り口から侵入してこないか見張って」
「「ギャギャ」」
「ボン、ゴブシロードが負傷したわ。スノーゴブリン・シャーマンの治癒呪文タイプを召喚して」
『了解した、マスター・・武装は樫の杖でいいか?』
「なんでも構わないわ、呪文援護専門だし」
『了解した・・』
通路の中央にスノーゴブリン・シャーマン(R4/160)が出現した。
「ふむ、これがダンジョンバトルというものか・・長生きはしてみるものじゃな・・」
キョロキョロと周囲を見渡しながら、手にした杖で床や壁をつついては感心していた。
「・・ちょっとボン、ゴブ雪ザエモン呼べとか指示してないんだけど」
『スノーゴブリンのシャーマンで治癒呪文タイプに該当するのは彼だけだ。汎用で呼ぶと呪文リストが変わる・・』
「はあ?シャーマンが治癒呪文知らないとか、スノーゴブリンて破滅型なの?」
「いやいや、マスター殿、我等は祈祷と占いをシャーマンが、治癒と解呪を巫女がやる慣わしになっておってな。弱小クランでなんでも屋だったワシぐらいなものなのじゃよ、治癒が使えるシャーマンは・・」
「まあ、いいわ、死なないように付いて来なさいよね。アンタは回復要員なんだから」
「承知、承知」
「あと、ゴブシロードの肩の傷も治しといてよ」
「主殿、かすり傷でござれば・・」
「そう見えないから言ってるの・・やせ我慢して倒れられる方が迷惑なんだからね」
「・・忝い・・」
「ほう、こりゃ珍しい、氷で出来た矢か・・魔法で固定してあるわけでもなく、普通に溶け出しておるのう・・どうやって強度を保ってるんじゃ?」
「敵のダンジョンコアの特殊技能ね・・氷を自在に変形させる能力みたい。直接、呪文のように飛ばしてはこれないみたいだけど・・」
『マスター、天井からの氷柱攻撃はどうだったんだ?』
「あれも、天井に氷柱を大量に作っておいて、根元だけ水に戻したんでしょうね・・」
『なるほど、氷結も融解も自在なのか・・』
「こちらが支配している領域にはちょっかいは掛けられないみたいだから、塗りつぶしていくしかないわね」
『しかしマスター、全ての部屋に戦闘力のある留守番を置くのは厳しくないか?』
「そうね・・・ならゴブリン・ウィニーで行くしかないわ!」
フリージア防衛部隊(残機4/補給???)
『マスター、敵主力の暗殺に失敗、スナイパーは撤退しました』
「そう、やはりあのオーガー侍は難敵ね・・侍マスターだから殺気感知もありそうだし、狙うなら別な目標が良いかも・・」
『了解しました、暗殺の対象を別の個体に変更します』
これで大部屋3つと廊下が2つ、あちらの支配に変わる。だが、これ以降は支配下に置いた拠点にはそれなりの防衛戦力を割くはずだ。その分散した戦力を奇襲で削る・・
もし戦力を割かなければ、セーフルームと分断して、召喚可能な場所を無くしていけばよい。
とにかく、マリアはまだポイントを半分以上残しているはずだ・・少しでも損害を積み重ねて吐き出させないと、マズイことが起きそうな気がしてならない・・・
そしてその予感は当たった・・
『姉さん、姉さま、優しいお姉さま~』
「・・却下です」
『まだなにも言ってないですです!』
「想像はつきます・・」
『そんなこと言わずに、お願い聞いて欲しいです~』
「・・・聞くだけですよ」
『フレアにDPちょびっと廻して欲しいんです~』
「・・・・幾らですか・・」
『えっとーー、1000ぐらい?てへっ』
「・・・・」
『あ、無し無し、いまの無しで、えっとー、500あれば~』
「・・・・」
『300でも~』
「・・・・」
『250・・』
「却下です」
『そんなー、あとちょっとでクリアできるです、残り1kmを切ってるですよ』
「マラソンでですか?」
『1500m走ですね』
『あ、イスカ、正直に言っちゃダメです』
「半分もクリアしていないのに補給をおねだりですか・・・フレア、あとでお話があります・・」
『あーー、こんなところに予備戦力がああ、お姉さま、フレアは大丈夫ですです』
『私のセンサーには見当たりませんが』
『意地悪なダンジョンコアには見えない戦力なんですよ』
『なるほど、しかし私に見えない戦力をどう支援すれば良いのでしょうか?』
『どうにかなるです、いえ、どうにかするですよ!』
『精神論で戦力の差は埋まらないと思いますが』
「フレア、あと10分でインターバルです。それまで大人しくしていなさい・・」
絶対零度の冷たさで、姉が命令した・・
『ひゃっ、ひゃいっ、お姉さま』
「キュシュッ」
壁越しに盗聴していた親方にも、その冷たさは伝わったという・・・
予定していたインターバルまで届きませんでした。あと1話かかります。
マリア侵攻部隊(残機6+2留守番/補給2945)




