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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第1章 サバイバル編
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かかったな

 僕らのダンジョンに、串刺しの異名を持つ族長が自ら攻め込んできた。部族の半数を完封した正体不明の敵勢力に、8体で挑むのは無謀だと思うけど、それだけ自信があるんだろうね。

 確かにまともに戦えば向こうの勝ちだと思う。戦士長でさえ倒すのに、こちらは総がかりだったわけで、族長が戦士長に劣るわけもないし。

 だからここは地の利を生かしてゲリラ戦法に徹するよ。ひどい、ずるい、卑怯はダンジョンマスターにとっては褒め言葉だよね。

 たぶん警戒して偵察に誰かを送り込んでくるだろうから、まずそこを狙おう。

 「コア、スノーゴブリンコマンド1体を武器部屋に召喚。アサマと命名して武器をもたせて小部屋に移動させて」 「ん」

 「ワタリとアズサは小部屋に移動、アサマと合流して出口側の安全コーナーに隠れて」

 「ん」 「了解っす」「ギャ」

 「コア、スノーゴブリンコマンダー1体を武器部屋に召喚。アップルと命名して武器をもたせて待機させて」 「ん」

 「ケンとチョビは戦える?」  「「バウバウ」」 「ん」

 「体調が万全でないのに悪いけど、総力戦になるからお願いするね。五郎〇と一緒に正面出口で待機して。そして合図があったらぐるっと外から回り込んで挟み撃ちにして欲しい」

 「ん」 「グヒィ」 「「バウ」」

 「アグーとウィングはコアルームで待機。最後の護りを頼むね」

 「ん」 「「グヒィグヒィ」」

 アグーとウィングの傷が一番重い。ここまで突破されたら負けを覚悟しないと。

 あと二日あれば万全の体調で戦えたのに・・・そうか向こうもこちらの損耗を考えて短期決戦に踏み切ったんだ。13体もの戦士とやりあって無傷なわけないからね。

 「やんまー・こまつ組の4体は、トンネルの奇襲通路で待機して」 「ん」 「ギュギュ」

 「残りの皆は巣穴で待機、異議は認めません」 「ん」 「・・キュ」


 準備は整った。戦いを始めよう。


 「あ」 小部屋の出口通路に侵入者が来たらしい。数は1か、さすがに慎重だね。でもやることは同じ。

 「ワタリに連絡、タイミング計って襲撃せよ」 「ん」

 狩人らしい偵察役が通路の半分まできたときに、ワタリ達が小部屋の隅から姿を現し一斉に石槍を投げつけた。

 「ギャギャ」 ドスッ トス ドスッ 

 2本が刺さって、狩人は逃げ出そうと後ろを向いてそのままゆっくり倒れた。 あと7.

 「ワタリ達は全員、急いで武器部屋に撤退。槍は予備があるからほったらかしで」 「ん」 

 「了解っす」

 「狩人の死体はまだ吸収しないで。ギリギリまでここがダンジョンだと知られないようにして」

 「ん」

 偵察は各個撃破されるとわかって、今度は固まって前進してきたね。狩人の死体を調べているけど、投槍で殺されたことしかわからないはず。

 6体が小部屋に入ってきた。一人は出口の警戒か。ある意味正しい配置だけど、それだけに読みやすいんだよね。

 小部屋には3つの同じような木の扉がある。これが冒険者のパーティーなら盗賊役の罠発見技能持ちが慎重に探るんだろうけど、ゴブリンの族長だとたぶん・・・


 「グギャゲゲギャ(お前ら、3つの扉を全部開けて来い)」

 「「「ギャギャ(へい!)」」」

 カチィ カチィ  ドスドスドスドス  「「ギャボー」」

 となるよね。これであと5. さあどうする「串刺し」さん。


 外への見張りを呼び戻しても部下が4体。自分の護衛を考えたらこれ以上は偵察も送れないよね。せめて

戦士長でもいれば、部下を1人つけて先行させるんだろうけど・・・

 あれ?そういえば戦士長も祈祷師もいないね。居住地の護りに2人とも残したのかな?  あ、まさか!


 「あ!!」

 やばい、別働隊がいたんだ。そりゃそうだよね、族長が攻めてきてるのに、半分も戦力を置いてくるわけなかったんだ。

 「コア、侵入された地点は?」  「ん」

 「巣穴の2番出口だって?どうやって?」  「ん?」 「あ、スキャンしていいよ」

 巣穴の出口は、穴熊の巣を偽装しているから高さ60cmもないし、倒木の陰とかに目立たないように作ってあるのに、どうやって・・・

 スキャンの情報が転送されてきたけど、なんだこれ!


 ホワイト・リザード:白色大トカゲ

種族:爬虫類 ランク3 

HP 21 MP 5 攻撃力9 防御力4

技能:噛み付き、耐寒、嗅覚

特殊技能:コールドブレス:冷気の吐息

備考:従魔、冷気の吐息 使用MP2 前方1.5mまでの敵に冷気5ダメージ


 大トカゲって全長3mぐらいあるぞ、こいつ。でもトカゲだから巣穴に潜り込めたのか。竜種でもないのにブレスって反則でしょう。あ、従魔だこいつ、祈祷師が操ってるのかな。

 「コア、巣穴の皆に退避命令を。あと群体を1つトカゲの進路上に召喚して足止め」 「ん!」

 ブレスがあるから群体も本当に足止めにしかならないけど、MP使わせて、ちょっとでも逃げる時間稼げればいいから。


 「バウバウ!」

 今度は正面出口で待機してたはずのケンが何かに吠えかかっている。

 「別働隊の本命はこっちかよ」

 挟み撃ちにするつもりが、挟まれたのは僕らの方だった。脱出路を塞いで殲滅する作戦か。もっと早くに

こっちは封鎖しておくべきだったね。

 「五郎〇チームはコアルームまで撤退、そこで迎撃用意」 「ん」 「グヒィ」

 「アップルはアズサを連れてコアルームの増援に。予備の槍を2本ずつ運んで」 「ん」「ギャギャ」

 「ワタリとアサマは十字路で隠れながら待機、最初に来た敵を攻撃したら、そくコアルームに撤退」

 「ん」 「最初のは倒さなくていいんすか?」

 「最悪、族長が先頭きってくるかもだから無理しないで」  「りょ、了解っす」


 指示してる間にコアルームに五郎〇達が戻ってきた。後ろから少し送れて別働隊が突入してくる。戦士、狩人、戦士長の3体のようだ。

 先頭の戦士が臆することなくコアルームに飛び込んできたけど、

 カチッ トストストス  「ギャーーー」  矢の嵐に翻弄されて倒れた。

 だけど次の狩人は罠に気がつくと手前から槍を投げようとしている。まずい、こっちを狙ってる!

 「あぶない!」 「ぴゃ」

 僕はコアを抱きかかえて台座の裏に逃げ込んだ。槍は台座をかすめると、すぐ側の地面に突き刺さった。


 そこに通路の扉を開けて、アップルとアズサが現れた。

 「アップルは白兵戦、アズサは投槍で」 「ん」 「ギャギャ」

 「コア、いままでに倒した敵を全部吸収、アップルの両脇にスノーゴブリンを2体召喚して」 「ん」

 「アップルは召喚されたパイとティーに予備の武器を渡して指揮下に入れて、敵を迎撃せよ」

 「ん」 「ギャッギャー」


 正面通路はこれで押し戻せるはず。あとは大トカゲか。

 そう考えた時に、巣穴からコアルームに通じる出入り口にまーぼーが顔を出した。

 「あ、こっちは戦場になるから、そのまま進んで3番出口で待ってて」 「ん」「ギュギュ」

 穴熊の子供3体と親方達がぞろぞろ通りすぎていくのを、はらはらしながら見送る。

 「コア、親方達の後方に群体を召喚、巣穴の通路を封鎖して」「ん」

 間一髪で召喚が間に合い、バッタが通路に溢れるのと同時にホワイトリザードが姿を現した。


 ホワイトリザードは、目の前の邪魔な群体に向かってコールドブレスを吐き掛けたが、狭い通路に沿って

長く展開している群体を全滅するにはいたらなかった。半分ほど残ったバッタの群を煩わしそうに見つめると、急に方向を変えてコアルームに乗り込んでくる。

 そこに五郎〇チームのスクラムチャージが炸裂した。3頭が横並びで突進をしかけたんだ。

 直撃をくらった大トカゲは、もんどりうって巣穴の通路に押し戻された。そこに果敢にケンとチョビが襲い掛かる。

 重傷のはずの大トカゲは、それでもなお全身をくねらせて反撃してきた。 

 「キャイーン」 尻尾に叩かれてチョビが戦線離脱する。だけどケンは大トカゲの喉笛に噛み付いたまま、振り回されても離そうとはしなかった。

 「ケン、きり揉み回転だ!」 「ん!」

 ケンの瞳に理解の光りが灯ると、大トカゲに噛み付いたまま身体をねじった。灰色狼の強靭な顎は自重をも支えきり、そのまま喉肉を食いちぎった。

 血しぶきをあげて倒れ伏す大トカゲの上で、ケンは雄叫びをあげていた。



 「おいら達の出番まだっすかね」

 「ギュギュ(ぼくらも忘れられてる気がする)」


 


DPの推移

現在値:209 DP

召喚:スノーゴブリンコマンド(狩猟兵)1体 -90

召喚:スノーゴブリンコマンダー(戦士長)1体 -90

スキャン:1回 -1

召喚:群体1 -5

吸収:狩人1体、戦士3体 +80

召喚:スノーゴブリン2体 -80

召喚:群体1 -5

残り 18 DP

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