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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第9章 氷炎の魔女編
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絶対運命共同体

 「よってこの勝負、『下弦の弓月』の勝利といたす!」

 「虎」の長老が、勝ち名乗りを上げてくれて、ワシらの勝利が確定した。


 「うそだ、何かの間違いだ・・俺が負けるわけ・・・そうか!カジャめ、最初から奴らとグルだったな・・」

 自分の敗北を受け入れられない「鮫」のジョージャが、ぶつぶつ呟きながら近づいて来た。


 「おい『鮫』の、お前も一家を構える漢なら、潔く負けを認めちゃどうだい・・」

 リュウジャの言葉に、過敏に反応して、飛び掛ってきた。

 「俺はまだ、負けちゃいねえ!お前ら!裏切ったカジャもろとも、こいつら全員、殺せ!!」


 懐に忍ばせておいた毒刃付きの小刀を振りかざして、リョウジャに切りかかったジョージャであったが、後ろ回し尾っぽのカウンター攻撃を受けて、壁際まで吹き飛ばされた・・・


 そして、ジョージャの掛け声に応じた配下は一人もいなかった。

 彼らもまた、ジョージャを頭とは認めなくなっていたのだ・・・


 長老の指示で、牢屋に連行されるジョージャの瞳からは、すでに戦う気力も失われていた。

 それを見送るリュウジャが、呟く・・

 「だから言ったろ・・あんた、背中が乾いているぜ・・・」




 僕が再度、ハクジャに遠話を飛ばしたときには、「小竜会」の意思も固まっていた。


 「じゃあ、リザードマン側は、全部こちらに任せてくれるで良いんだね?」

 『はい、マスター様。ワシも準会員として「小竜会」に席を置くことを許されました、ジャー』


 準会員というのは、長老の予備人員のことで、幹部として会に出席することが許されるらしい。

 なんでも今回の騒動で、長老の席にも1つ追加で空席ができたので、幹部から正式な手順を踏んで、昇格をする儀式をするらしい。それまでは暫定で準会員扱いになるとのことだ。

 ハクジャが、そのまま長老に出世できるかは、微妙らしいが、昔馴染みの「龍」の幹部が、長老に昇格するのは間違いないのだとか・・

 それなら「小竜会」とのコネも問題ないだろうから、ハクジャの去就には固執しないですむね。


 『今回、無断でアエン殿を賭けの対象にして勝負をしたこと、お詫びいたしますです、ジャー・・』

 「それはもう良いよ。送り出したときに、ハクジャの判断で全て動かして良いって、言っておいたでしょ?その判断に間違いは無かったのだし、結果も上々なんだから、謝ることなんてないんだよ」

 『しかし、1つ間違えば・・・ジャジャ・・』

 「アエンもOK出したっていうし、もうその話は御仕舞いにしよう」

 『ありがとうございます・・ジャー』



 「状況を整理するよ・・アエン・タングステン、ニッケルの3名は、現状ではハクジャの保護下、つまりうちのダンジョンの保護下にあるで良いね?」

 『「龍」とタングステン殿には、それで許可をもらいました。別々にすると、そっちに魔女が難癖つける可能性が高いと・・・ジャー』

 「その意見は僕も賛成。とにかく、氷炎の魔女の触手が、南の湖群に伸びないのが第一だからね」

 『問題は、先手を取られたマンガンの脱出艇ですな、ジャジャ』


 今もにらみ合いを続けている、地下水道の途中で難破した最後のドワーフの去就か・・・

 「あっちは、向こうの眷属が先に確保してるからね・・・横槍を入れればこちらが悪者になるね。そして向こうはそれを待っているかんじ・・」

 『アエン殿も可能なら助けて欲しいけれど、その為にマスター様に危険が及ぶなら放念してもらっても構わないからと・・ジャジャ』


 アエンにしても、居候の身でわがままは言えないんだろうね・・本心を言えば、故郷を奪還してもらいたいし、沢山の仲間も救出して欲しいのだろうけれど、それを言い出したらキリがない・・・

 「そうか・・向こうは大量の人質を持っていることになるのか・・・」


 『アエン殿やタングステン殿に、戻ってこいと脅しをかけるやも知れませぬ・・ジャジャ』

 ドワーフのクランとしては、技の継承の為に、厳選して逃したのだろうけど、アエン個人の心情は、自分達だけ落ち延びたことに納得していないかも知れないね。


 「やっぱりダンジョンバトルを受けるしかないか・・」

 『しかし相手は二人ですぞ、ジャー』

 「うん、まあ、なんとかするよ」

 『・・そうでしたな・・いつもそうしてきたのでしたな・・ジャジャ』

 「ばっちこい♪」 




 「かしらかしらご存知かしら?」

 「ああ、それは知らないな」

 「かしらかしら本当かしら?」

 「早く言え・・」

 「姉さん、せっかち。もっと姉妹のコミュニケーションを楽しまないと・・」

 「どうなると言うのだ?」

 「孤独死です」

 「・・・」


 「じゃあ最初からいきますね!」

 「お、おう」


 「かしらかしらご存知かしら」

 「かしらかしら何かしら?」

 「・・姉さん、ぶりっ子、似合わなすぎー」

 「・・・どうしろと言うのだ・・」



 「場が暖まったところで、重大発表です!」

 「さっきのは前座なのか・・」

 「ついさっき『永遠の17才』・・・ゲフンゲフン、間違えちゃった、『管理人さん』から連絡があって、例の新入生がダンジョンバトルを受けるみたいだって」


 「正気か?」

 「失礼ですー、フレアはSAN値MAXですです」

 「いや、お前のことじゃない・・あとお前にSAN値などない」

 「えへへ、褒められちゃったりー」


 「・・耐えろ、私の理性・・」 

 「燃えろ、フレアの小宇宙コスモ!」

 「・・・ダメかもしれん・・・」


 

 「・・・それで、本当にバトルを受ける気なのだな」

 「えー、だって姉さんがそうなるように苛めてたじゃない、いたいけな新入生を」

 「こちらに有利になるようにプレッシャーはかけたが、まさか逸れドワーフごときに肩入れして、バトルを承諾するとは思わなかった・・」

 「だったら最初から『ドワーフを引き渡せばチャラにしてやっから、泣き見る前に御免なさいしな』って言ってあげれば良かったのに」

 「どこのレディース総長だ、それは・・」

 「え?似てなかった?昔の姉さん・・・」

 「ストップ、風評被害が酷いことになりそうなので、それ以上は禁止だ」


 「とにかく受けるんでしょ?バトル」

 「まあ、あちらがやる気ならな・・」

 「えへへ、漲ってきましたよー、ひっさびさのダンジョンバトルだーー」

 「しかし・・自暴自棄になるようなタイプには見えなかったが・・」



 ダンジョンバトル委員会仮想ステージにて


 「あらあら、本当に良いの?あの双子姉妹、ああ見えて強いのよ?」

 「ええ、僕が納得できる結末は、バトルをしないと得られないですから」

 「うふふ、男の子ね♪ お姉さん、嫌いじゃないわよ、そういう無謀な正義感」

 「そんなんじゃないですよ・・」


 「いくら気に入っても、審判役は公平にお願いしますよ、お姉さま」

 「あ、フレアは少しハンデあげてもいいかなー、弱いものいじめは趣味だけど、少しは歯応えも、ね?」 「あらあら、もちろんジャッジはちゃんとやりますよ、心の中で応援するだけだから」

 それありなんだ・・・ 


 「最初にいっておくが、私達は二人一緒でなければダンジョンバトルは出来ない。それ以外の条件なら、そちらの好きにしてもらって構わない」

 「それって、二人で一人分ってことですか?」

 「いや、こちらはダンジョンマスターが二人でコアも二つだ、ただし、そのコアがくっついているのだ」

 「はあ?」

 「あのね、あのね、フレア達のコアは、『ツイン・コア』って言うんだよ。コア同士がお互いの周りを周回している双子惑星なのだー」

 「ゆえにコアルームも台座も1つしかなく、切り離して活動できないのだ」

 「二人で1つ、ばろろーむなのだよ、わかったかな?」


 いやいや、よくわからないけれども、ダンジョンコアってなんでもありなんだな。

 「えっへん」

 そこ、コアが胸張るところ?


 「あらあら、どうしましょう。同じポイントで戦っても、司令官が二人いる方が断然有利ですし」

 いくらコアの処理速度が速くても、2正面作戦をとられると、片方の状況判断と対応は後手に回らざるをえないよね。しかも牽制や囮作戦も2倍できるわけで・・・


 「あらあら、そしたら貴方も応援を頼んだら?」

 「え?そんなこと出来るんですか?」

 「うふふ、もちろんよ。タッグを組んだり、3対3で戦ったりもするわよ。エキビジョンが多いけれど」

 なんかプロレスみたいな大会でもあるんだろうか・・


 「まあ、それが妥当でしょう。新人にそんなマスター仲間がいればですが・・」

 「急造ペアで、フレア達、ボンバーペアに勝てると思うなよ」

 「ストップ、それもアイス入ってないですよね・・」


 「あらあら、もちろんお友達ぐらい居るわよね?」

 「「ぷいっ」」

 「あらあら、拗ねた二人も可愛いらしいわね♪」


 ダンジョンマスターの知り合いなんて二人しか居ないし、そのどちらも癖が強すぎる・・・ 


 でも、もしどちらか選べと言われたなら・・・




 「マスター、委員会からダンジョンバトルへの参加要請が来てるがどうする?」

 「なによ、ボン。またどっかのバトルジャンキーが相手を探し回ってるの?」

 「いや、タッグパートナーの依頼らしい」

 「へー、珍しいわね、エキビジョンじゃないんでしょ?」

 「ああ、まだ条件は確定してないらしいが、ちゃんとしたバトルだそうだ」

 「ふうん、それならこっちの利益もねじ込めそうね・・でもリアルでタッグなんて、あの双子姉妹みたいなことやるのがまだ存在するんだ・・」

 「相手は、その双子姉妹だ・・」

 「受けたの、どこの馬鹿よ・・」

 「つい先日、うちが負けた相手だよ」

 「あの馬鹿、また絡まれたんだ! まあ、ポケット膨らませた中学生が、夜道を歩いていたら、怖いお兄さんに声かけられても仕方ないか」

 「最初に声掛けたのは、マリアだしな」

 「アタシは良いのよ!世の中の厳しさを教えてあげたんだから」

 「教わったのは、こっちだったけどな」

 「うぐぐぐ」


 「それで、どうする?受けるのか?」

 「えー、勝ち目薄くない?あいつらゴブリンウォーズは嫌がるだろうし・・」

 「確かにな、一度、騙して填め殺ししたら、涙目だったな」

 「今とくにDPも困ってないしなー」

 「なら断るか・・『新しいモフモフメンバーと一緒にお待ちしてます』てコメント欄に書いてあったが・・」

 「行くわよ!」

 「え?」

 「一度は戦ってライバルと認めた相手が、助けを求めているのよ。いかないでどうするのよ!」

 「ああ、まあ、王道ではあるか・・」

 「待ってなさい!アンタを倒すのは、このアタシなんだからね!」


 「うちのマスターはツンデレが似合うんだよな・・」





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