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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第9章 氷炎の魔女編
271/478

この要求が受け入れられない場合には

 「フレアだよ!」

 「フリージアです」

 「二人合わせて、ファイアー・シスター・・」

 「ストップ」


 「なんですか姉さん、名乗りの最中に待ったをかけるのは、ルール違反ですよ、無法者です、アウトローの所業なのです!」

 「二人、合わせてないですよね・・」

 「ああなんだ、そんな事を気にしてたんですか。姉さんは、変なとこに細かいですよね」

 「ぴくっ」

 「大丈夫ですよ、ちゃんと、シスターのあとにズをつけますからね。これで複数です、ボッチじゃないですよ」

 「アイスもつけろって言ってるんです!」

 「痛い痛い、ギブ、ギブです、ギブミー・チョコレートですう」


 

 なんだろう、この混沌カオス・・・

 現在、僕は自分のダンジョンのコアルームで、仮想モニターを見つめていた。

 モニターは大型の液晶テレビぐらいのサイズで、宙に浮かんでいる。2面あるのは、向こうが二人組だからだと思うけど、ほぼ一緒に映っているで、片方は見切れた映像しか映っていない。

 

 相手は、14・5才に見える双子の姉妹で、髪と瞳の色以外は外見はそっくりだ。それでも、その二箇所が違うだけで、印象は大分違っている。もちろん性格が、それに輪をかけてかけ離れていたのだけれど・・

 青い髪に群青色の瞳をした姉は、氷使いのフリージア、赤い髪に赤銅色の瞳をした妹が、炎使いのフレアというらしい。ダンジョンマスターとしての通り名が「アイスドール」と「ファイアーダンサー」であり、「氷炎の魔女」は、彼女達の正体を知らない冒険者が、勝手に恐れてつけた異名だそうだ。


 なんだろう・・この世界の魔女って、全部、ダンジョンマスターなんだろうか・・・


 『あらあら、それは違いますよ。ちゃんと伝説の通りに魔女を営んでいる方もいらっしゃいますから』

 魔女って、営むものなんだ・・・

 『うふふ、「魔女とは生き様」とか、「魔女は考えるな感じろ」とか言う方も、いますけどね』


 魔女より謎なのは、貴女ですよね・・・

 『あらあら、私が気になります?』

 いや、それはそうでしょう、まだ名前も聞いてませんし・・

 『うふふ、知りたがりやさんね♪』

 くっ、遣り辛いな、この人・・・


 『私は、新しく管理センターの主任に命じられた、コードネーム「管理人さん」です、よろしくね、うふふ』

 「あれれ、昔は『永遠の17才』って言ってましたよね?もうあきらめたんですか」

 「フレア、そこに触れるな、危険だ」

 『あらあらあら、フレアちゃん達には、少しお話をしないといけないわね。あとで呼び出しますからね』

 「わ、私は関係ないです」

 「ああ、姉さんだけ逃げるのはズルいです、一蓮托生なのです、二人ならダメージ半分なのですよ」

 「私を巻き込むな!」


 うん、なるほど、怒らしちゃいけない人なんだね・・・

 「あんたっちゃぶる」

 

 『あらあら、コアさんもお話したいのかしら』

 「ぷるぷる」

 恐るべし、管理人さん・・



 「と、とにかく、こちらの要請を新人に伝えてください」

 『あらあら、フリージアちゃんはせっかちね』

 「現在も眷属同士が睨み合いを続けているんですよ!」

 『うふふ、わかっていますよ。それでは経緯を説明しますね』


 事の発端は、氷炎姉妹がドワーフの技術者を求めて支配地域の拡大を始めたことに起因する。

 元々、ダンジョンの近くにあった鉱山を採掘していたドワーフを煩わしく思っていたらしく、思い立ったが吉日とばかりに、眷属を送り込んで支配しようとしたのだという。

 占領はあっさりと済んだが、計算違いだったのは、捕虜にしたドワーフに腕の良い職人が残っていなかったことだ。慌てて逃げ延びた重要人物を追いかけていたら、奇妙な集団が横槍を入れてきた。

 それが、僕の眷属だったというわけだ。


 撃退しようとしたら、委員会からの警告を受けて、初めて対象が、クーリングタイム中のダンジョン勢力だと判明した次第である。

 不利を悟った姉妹は、すぐさま委員会に裁定を要請した。なぜなら自分達は攻撃できないのに、相手(僕ら)は可能だからだ。


 『というわけで、双子姉妹からは、取引が持ちかけられています、うふふ』


 「後は、こちらから話します。まず、捕獲したドワーフは私達の戦利品です、手出しは無用に願います」

 これは心情的にはアレだけど、早い者勝ちといわれれば反論できないね・・


 「次に、そちらに逃げ込んだドワーフを、対価と交換で譲って欲しい。ただし既に眷属化していたら、あきらめます」

 これは無理だね、アエンは貴重な鍛冶師だし、本人も侵略してきた勢力には付く気はないだろうからね。


 「最後に、第3勢力に逃げ込んだドワーフは、早い者勝ちということで協定を結んでもらいたい。お互いに捕獲する際に邪魔はしないという程度でかまわない」

 「それは、さらに南に侵攻するという意味かな?」


 「支配地域を延ばすのは地勢的に無理だ。だから眷属を独立部隊にして送り込む。逃げ込んだ先がダンジョンでなければ、潰せばいいことだからな」

 これはかなりマズいね・・フロストリザードマン達とは、できれば共存したかったのだけれど、氷炎姉妹が蹂躙したら、それは不可能だ・・・


 「悩んでいるようだが、実質、そちらに選択権があるのは2つ目の取引だけだぞ。1つ目は事実の追認で、それを破ればそちらが悪者だ。3つ目は、受けようが受けまいが、こちらのやることに変わりはない。事前に断りを入れたのに、邪魔をすれば、やはりそちらが悪者だ。その場合は、委員会立会いの下でダンジョンバトルで白黒つけることになる・・」

 「フレアは、その方が良いですよ、燃えるです、燃え盛るです」


 なるほど、結局は挑発してるわけか・・・こちらがクーリングタイムなので、実力行使にでるには、僕らの方から喧嘩を売らせるしかないわけだ・・・


 『あらあら、最初から断られることを前提にしたら、取引とはいいませんよ』

 「そうでしたね・・・では24時間待ちましょう。明日の日没までに、回答をください」


 「管理人さん」にたしなめられて、一旦は相手が引いたけど、結局は破談することになるよね・・・

 『貴方も眷属の皆に状況を連絡してあげたら?やきもきしてるはずよ、うふふ』


 そうだった・・ロザリオとハクジャには説明しとかないと・・

 「あっと、じゃあ、モニタリングを切断しますね。また明日」

 「よい返事を待っています」

 「フレアは、どっちかっていうとー・・・プチッ」

 あ、お姉さんが強制切断したね・・


 『あらあら、双子姉妹ちゃんは、やる気まんまんね』

 「僕はバトルは遠慮したいんですけどね・・」

 『あらあら、それなら全てを見ない振りしておけば、貴方には損はないはずよ』

 「それができれば、悩んだりしないですよ・・」


 コアに遠話の指示を出し始めた僕は、彼女の最後の呟きを聞き逃していた・・


 『・・・うふふ、あの娘の言った通りね・・・』

 



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