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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第9章 氷炎の魔女編
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昔、昔、ある迷宮に

 「ケロケロケロケロ」

 「けろっぴ」

 「モンモンチームってことは、地底湖だぜ、ジャー」


 まずいね、フロストリザードマン達は、ほぼこちらで焼肉だから、向こうは蛇拳(じゃんけんのリザードマン版)で負けた見張り番と大蛙しかいないはず・・


 「ベニジャだけでも、転送して・・・って、あれ、いない?」

 指揮官だけでも転送で送ろうとしたけど、すでに視界にはベニジャもハクジャもいなかった。

 「どこに消えた?」

 「7番ハッチっすね」


 どうせ屋上からは、あちこちから入り放題なので、天井の残った部屋にも非常口を幾つかくり貫いておいた。それが1番から9番までの非常ハッチだ。

 と言ってもマンホールの様な縦穴に偽装の落とし扉を設置しただけで、降りるときは飛び降りる方が早い。その7番のハッチが開けられていて、リザードマン達が次々に降下していた。


 7番は元コアルームに通じるハッチで、降りると直に転送魔法陣があり、それに飛び乗れば、即座に水霊の洞窟(元はルカの洞窟だったが、呼び名を変えた)に出れる。転送魔法陣は眷属専用に設定してあるので、侵入者は利用することは出来ない。

 そこからは地下水路で地底湖まで一直線だ。


 「転送するなら、泳ぎが苦手なメンバーにしてやってくれだぜ、ジャー」

 「マスター様、我等が行くまでは見張りの者がなんとかするはずです、ジャー」

 「了解、戦力を送り込むのは、何が来たか見極めてからにするよ」

 その会話の間にも、地下水路に飛び込んだベニジャ達を、水棲メンバー達が、次々に背に乗せて泳ぎだしていた。



 その頃、地底湖では、スケルトンの早期警戒網に引っ掛かった漂流物を、大蛙チームが警戒しながら見守っていた。

 それは北に伸びる地下水道を辿って、こちらに流れてきたものだった。


 流れたと言うのは語弊があるかもしれない。なぜならその地下水道は、ほとんど水の流れが無く、あったとしてもこちらから北にゆっくりとした水流があるだけだったのだから・・・

 つまり、その漂流物は、南に向かって推進してきたことになる。


 今も、歩くような速度で、水中を進んできたその漂流物は、やがて地底湖に到達すると、ゆっくりと浮上し始めた。


 「領域に入った、コア、スキャンして」

 「らじゃー」

 水中にあるうちに何者かを見極めようと、スキャンをかけてみた。

 すると・・・


 「えらー」

 スキャンに失敗したようだ。

 「モンスターじゃないのかな?」

 「たるるー」

 ん?マジカル?

 「それやばいっす」


 ・・もとい、樽だった。ちょっと大き目の、蒸留酒を仕込むような木製の樽が1つ、水面に浮かび上がった。

 「誰かが裏切り者を詰めて、埠頭から投げ込んだっすね」

 いやいや、それじゃあ逆流してこないでしょ。

 「ギャギャ(次の犠牲者のところに勝手に流れ着くんですね)」

 怖!

 「ギャギャ(蓋を開けると恨めしそうな同僚の顔が・・・)」

 「ぴゃー」


 影の軍団が怖がらせるから、見張り番も大蛙も遠巻きに見ているだけで、近づこうとしなかった。そこにベニジャ達が駆けつけた。


 「よっしゃ、まだ始まってないぜ、ジャー」

 「迂闊に近づくでないぞ、ジャジャ」

 「見たとこ、唯の樽だぜ、ジャー」

 「油断させる手かもしれん、ジャ」


 増援のリザードマン達が、全員配置についたのを確認して、見張り番の一人が慎重に接近していった。

 「特に変わった点はないですぜ、普通の酒樽に見えます、ジャー」

 「こっちでもモニターしてるけど、敵性反応は無し・・識別はイエロー(中立もしくは識別不能)だね」


 「主殿、剣で切ってみてはどうだろう?」

 「いやいや、桃じゃないからね」

 「たるるー?」

 中から魔法の国のなんちゃらが出てきたらもっとマズイよね・・・


 見張り番が槍の石突で樽の上部を軽く叩いた・・その時


 コン コン


 「中身は入ってそうです・・ぜ?!」

 言い終えるまでに、樽に急激な変化が現れたのだ。


 『ノックを確認・・・知的生命体との接触に成功と判断します・・・ロック解除・・』

 

 機械的な女性の声が共通語で流れると、水面に浮かんだ樽の上部が二つに割れて、左右に大きく開き始めた。どうやら酒樽は擬装で、潜水能力のある魔道具か何かだったようだ・・


 「離れて!」

 見張り番が溺れそうになりながら、水中へ潜るのと同時に、樽の中から何者かが姿を現した・・・


 それは身長130cmぐらいで、オーバーオール風の分厚い生地の作業着を着た亜人の女性で、ボリュームのありすぎる髪を三つ編みツインテールにしていた・・・


 「・・・ドワーフ?」


 酒樽型潜水艦に乗っていたのは、ロリではないが、髭も生えていない、トランジスタグラマーのドワーフ娘だった・・・


 「どこ見てるんですか?」




  その頃、凍結湖では・・


 「姐さん、地下水牢の脇に、奇妙な樽が流れ着いたって話ですぜ、ジャジャ」

 「ああ、あたしも聞いたよ・・なんでも北から流れついたとか言ってたけど、中身は酒かい?」

 「さあ、そこまで詳しい話は、あっしらには・・・」

 「最近は古参の連中の目も冷たいからねえ・・そろそろ潮時かもしれないねえ」

 「俺らはどこまでもトロンジャ姐さんに着いていきますぜ、ジャジャー」



 さらに、不凍湖では・・・


 「お頭!例の樽からドワーフの爺さんが出て来やした、ジャー」

 「ふっ、酒樽から出てくるには似合いだぜ・・・」

 「なんでも、他に仲間がいたそうですが、途中ではぐれたとかなんとか騒いでやす、ジャジャ」

 「どうやら面白い事になりそうだ・・・『小竜会』に連絡を回してくれ・・」

 「了解ですぜ、ジャー」


 「ふっ、祭りの気配がするぜ・・」





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