仁義なき焼肉
またもや投稿が日を跨いでしまいました。申し訳ございませんでした。
取れたてのヘラジカ15頭は、キャッチャーの中で失神しているのにも止めを刺してから、一斉に解体した。
鹿肉自体はDPから変換したほうが効率が良いし、少し熟成させた方が美味しい。なので主に新鮮な方が美味しいホルモンや、細工に使う角を切り落として、残りをコアがその場で吸収してしまう。
ヘラジカ15頭を撃退・吸収で、1350DPの収入になった。
「うまー」
鹿角は作業場(4階層の左部屋)に運び込んで、ホルモンはすぐに処理をして、焼肉パーティーが始まった。会場は、ホルモンを焼く煙がすごいので、屋上に特設テラスを設置した(主に穴熊チームが)。
「変換だと焼く手間はいらないけど、焼き加減が一律になるから、そこがね」
木の枝から削りだした、菜箸を使いながら、金盥を裏返した鉄板で、ホルモンを焼いていく。
「この盥、中心に向かって窪んでいるっすけど、なにか意味あるっすか?」
ワタリが器用に菜箸を操りながら尋ねてきた。
「本当は金網で焼いて余分な脂を落としたいんだけど、仕方なく金盥鉄板で代用してるから、すこしでも脂が流れ落ちるようにね」
ジンギスカン風に角度をつけてみた。
「ギャギャ(それなら中央を高くした方が効率が良いのでは?)」
アズサは、肉だけでなくじゃが芋やサヤエンドウを焼きながら、他のメンバーの取り皿に投げ込んでいた。
「貯まった脂で、じゃが芋の細切りを揚げて塩を振ると美味しいんだよ」
「ギャギャ(なるほど・・はい、ワタリさん)」
「あ、いらないっすよ」
「ギャギャ(ダメです、肉ばっかりだと病気になるそうですよ)」
「ギャギャ(アズサはお母さんみたいだなー)」
「ギャギャ(皿に入れられたら文句をいわずに喰うのがルールだ)」
肉を食いたいメンバーが、皿を隠そうとするが、アズサの絶妙なショットが、ことごとく決まる。
徐々に緊迫していく影の軍団。やがてスキルまで使った焼肉バトルに発展した。
「ギャギャ(スナイプ!)」
「なんの、スィッチっす!」
「ギャギャ(ぎゃー、俺の皿にサヤエンドウの山が!)」
「ギャ(・・ハイド・イン・コールド・・)」
僕はそっと席を立って、隣の鉄板に移動した。
隣ではノーミン、ヘラ、グドンがホルモンを焼いていた。
「はい、これが焼けたでしゅ」
「悪いだな、オイラの分は自分で焼くからヘラも食べるだよ・・」
「大丈夫でしゅ、ちゃんと食べてましゅから」
「そ、そうだか・・」
「はい、グドンもこれが焼けたでしゅよ」
「オレ、もっと、焼いたのが・・」
「お肉はこれぐらいの焼き加減がおいしぃのでしゅ!」
「・・わかった、オレ、喰う・・」
「あ、勝手にやしゃいを並べたらダメでしゅ!」
「だども、オイラはサヤエンドウが・・」
「まずはお肉を一通り食べ比べてから、はしぃやしゅめにおやしゃいでしゅ!!」
「「・・・うす・・・」」
・・ヘラ、まさかの焼肉奉行・・しかもかなりの暴れん坊・・
僕はそっと隣の席に移動した・・
「おら!早い者勝ちだぜ、ちんたらしてると全部アタイが食っちまうぜ、ジャー」
「お嬢、それ今、置いたばっかりですぜ、ジャー」
「鹿肉なんざ、生でも食えるぜ、ジャー」
「そりゃあ、俺らは生肉でも食えますが、焼肉パーティーの意味ないですぜ、ジャジャ」
「頭もなんとか言ってください・・・ああ、お頭一人で鮭焼いてますぜ、ジャジャー」
「この歳になると脂っこいものは胃にもたれるのジャー」
「おらおら!鮭の切り身もいただきだぜ、ジャジャ」
ベニジャが突き出した三つ又矛をハクジャの円月槍がくい止めた。
「うぎぎ、やるな祖父さん、ジャジャー」
「ぬぬぬ、この鮭は誰にもやらんぞ、ジャジャジャ」
鮭を挟んで力比べをする二人を尻目に、部下たちはここぞとばかりに肉を焼いて食い始めた・・・
ここもダメそうだな・・
僕はそっと席を立って、隣に移動した・・
そこには、軽く火を通したホルモンを、ふーふー吹いて冷まし、穴熊ファミリーや狼チームに食べさせている、モフモフ親衛隊とロザリオ少尉の姿があった・・・
「そら、これが良い感じに焼けたぞ」
「こちらも食べごろに冷めてます」
「レバーはさっと表面を撫でるだけでいけます」
「ギュギュ」
「バウバウ」
「美味しいか、そうか、(ナデナデ)」
「はい、あーん、(モフモフ)」
「「焼肉パーティー最高だな!」」
僕は見なかったことにして、そっと通り過ぎた・・・
最後の円卓には、今回一番働いた独立機動部隊の面々が、相棒と一緒に火を囲んでいた。
「アップル、お疲れ様」
「ギャギャ(どうも・・・)」
「五郎〇達も焼肉を食べるんだね」
「グヒィ・・」
「えっと・・・」
「・・・モグモグ」
「・・グヒィ」
ここは『黙って肉を焼いて食え』の集団だった・・・
なので僕も大人しく、沈黙の焼肉隊に混ざって肉を焼いて食べる・・
「・・・モグモグ」
「バクバク・・」
「・・・はむはむ」
いつの間にかコアが側で焼肉を頬張っていた。
ちゃんと焼肉用の簡易エプロンまでつけての完全装備だ。しかしあの身体だと、肉を焼くほど近づいたら熱いんじゃないかな?
見ていると、焼けた小さなホルモンに魔法陣が浮き上がった。
「転移かよ!」
「てへっ」
「DP使うのはダメ!」
「む~」
しょうがないから、僕が肉を焼いて、小さくちぎってコアに渡してあげた。
「えへへへ」
自分の頭と同じぐらいの焼肉片に、パクついているコアが幸せそうだった・・・
しかし、そんな穏やかな時間も長くは続かない・・
「んがっ、んぐっつ!」
突然コアが喉を詰まらせた。
「コアどうした?!」
「けほっ・・」
「敵襲か?」
「・・どんぶらこ」
・・・大きな桃でも流れてきたの?




