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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第8章 暗黒邪神教団編
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観察日記

   コアの観察日記


 孵化してからのコアを眺めていたら、いくつか気がついた事がある。さらに僕以外の目撃証言も繋ぎ合わせることによって、コアの知られざる一面が垣間見れた。

 

 その1 引力は常にオーブの中心に向かって働いているらしい。


 コアは、時間が空くと、良く本を読んでいる。その場合、オーブの曲面をうまく利用して腰掛けているのだが、側で見ていると滑り落ちそうな角度に見える。でもそんなこともなく、たまに欠伸あくびをしながら背伸びをしていても、座っている位置は変わりなかった。


 「ふぁぁ~~」


 ラムダが逆さまになって飛んでいるのを見たとき、コアもオーブを半回転させたことがあった。その時も髪の毛が重力に引かれて床に向かって垂れ下がっただけで、本人がポトリとオーブから落ちることはなく、普通に座っていた。

 謎だ・・


 「ほへぇ~~」


 その2 身体の一部はオーブに接触していないといダメらしい。


 最近は、オーブをゆっくりと回転させながら、その上を歩くのがコアのお気に入りだ。自分の足を動かして移動するのが楽しいらしい。移動速度をあげるときは、オーブの回転も速くしているが、ある時、全速で走っていたら、両足がオーブから離れる瞬間ができた。

 どうなったか・・・


 けり足がオーブから離れずに、見事に転んだ・・・


 「びたん!」


 そして、うつ伏せに倒れたまま、ぐるぐるとオーブの表面を回っていた。本人も恥ずかしかったらしく、しばらく立ち上がってこなかった。


 「・・くうぅ・・」


 僕も見て見ぬ振りをしていたら、そうっと立ち上がって、何もなかったように口笛を吹きながら歩き出していた。しかし鼻の頭が赤く擦り剥けていたので、バレバレだったのだけれども・・・


 「ぴゅ~ぴゅ~」


 その3 オーブを浮遊させる速度によって、体勢が変わるらしい。


 ゆっくりと動かす時は、立ったまま。

 少し速く動かす時は、正座して。

 そして全速を出すときは、ペタリと座り込んで、両手を膝の前について、前屈みになるらしい。

 1と2の法則から、オーブから振り落とされることはないはずなんだけど、気分の問題なのだろうか・・


 「いっけえぇ~」


 その4 オーブの中に色々仕舞い込めるらしい。


 注意して見ていないと見逃すけれど、コアがオーブに手を差し入れると、その表面が液体のように波紋を広げる。そして埋めた手を引き抜くと、微少女サイズのアイテムが握られている。

 今まで、確認されているのは、コップ、文庫本、歯ブラシ、タオルなどがある。

この世界ではオーパーツっぽいものもあるが、ふつうのダンジョンマスターなら文庫本以外はDPで変換できるそうだ。

 ただし、それらはコアの私物なので、リスト化できないし、リストにもないらしい・・・ 

 げせぬ・・・


 「ひょいひょい」


 その5 眠るときは・・・

 「キュキュ」

 その6 ・・・

 「ギャギャ(あのー)」

 その7 ・・

 「舐めていいぜ、ジャー」 「ケロケロ」

 ベロン


 うわっ、何?顔に生暖かくて、湿った何かが・・・


 気がつくと目の前には、親方、アズサ、ベニジャと大蛙達が並んでいた。

 「忙しくて現実逃避したくなるのもわかるけどさ、指示がないと進められない現場もあるんだぜ、ジャジャ」


 どうやら寝不足でぼうっとしていたら、作業の指示待ちの列が出来てしまったようだ。

 「ああ、ごめん、どれくらい固まってた?」

 「ギャギャ(私が声を掛けたときから5分ぐらいです)」

 「アタイは今きたばっかりだよ。でも親方は大分待ってたみたいだぜ、ジャー」

 「キュキュキュ」


 親方は大して待ってないと言ってくれたけど、足元に散らばる蝗の足の数が、真実を物語っていた。

 「で、親方はなんだっけ?畑の拡大が終わったから次は屋内の間取りだっけ」

 「キュキュ」


 上層部で、天井が完全に残ったのは、コアルーム、2つの武器庫とその通路、それに癒しの泉の広間だけになった。他の中途半端な部屋は、崩落の危険もあるので、天井は綺麗に撤去してしまった。

 「コアルームは最下層に移転するけど、転送魔法陣はそのままにするから、あそこは現状維持でいいかな。武器庫も移転するけど、あそこは左右に広げて、農具置き場と待機所にしよう」

 「キュキュ」


 「水場をつくってくれれば、うちのチームが畑の警備もできるぜ、ジャー」

 「いや、やっぱりベニジャチームは地下水路をメインに護って欲しいから、ルカの洞窟を拠点にして」

 「まあ、あそこなら水牢にも近いし、地上には転送魔法陣ででれるしな。わかったぜ、ジャー」

 「「ケロケロ」」 


 「ギャギャ(コアルームは地下墓地の玉座の間に移転ですか?)」

 「うーん・・あそこも悪くないけど、あまりにもそれっぽい場所だから、狙われ易いんだよね・・」

 実際に、アイスオークとエルフは、領域支配者が居ると思ってあそこに攻めてきたわけだし・・


 「ギャギャ(確かに、部屋数だと階段から3つぐらいですね)」

 「なので、地下墓地は、右側が皆の私室、中央が侵入者撃退用のトラップ、左が捕虜の収容所的な仕分けにしようかと」

 「ギャギャ(了解です、荷物移しちゃいますね)」


 巣穴は上層と中層の中間にあるので、そのままモフモフ軍団の寝床として使うことにした。ただし出入り口は、畑の隅などに巧妙に隠してあるので、簡単には見つかることはないと思う。

 ニコとヘラとグドンの部屋も、巣穴の奥にちゃんとしたものを造った。ニコはその聖獣としての力ゆえに狙われ易い。けれどヘラにべったりだから二人は離すのは難しい。そこでそこだけ石壁でしっかりした部屋を拡張して、グドンも警護役で常駐してもらうことになった。


 ニコ部屋と名付けたその部屋は、9mx12mx3mの中型の間取りだが、出入り口が2箇所あり、片方が巣穴に、もう片方が中層の食堂に繋がっている。

 これはニコ達が、中層の地下墓地方面へ逃げ出せる為でもあり、また、ゴブリンチームが上層へ移動する為の第2ルートにもなる。


 「主殿、私の私室も巣穴のどこかに用意してもらえればありがたい。狭くて構わないし、相部屋ならもっといい」

 「いやいや、ロザリオは玉座の間を使ってよ。たいていあそこで待ち受ける役なんだから」

 「・・あそこは寂しいんだ・・」

 

 まあ、殺風景だし、モフモフ成分は希薄だろうけど・・


 「ポチを連れてっていいからさ・・」

 「ポチは、癒しの泉の安眠のハーブ畑が気に入ったらしくて、あそこから動こうとしないんだ・・あと、餌をあげる時しかモフらせてくれない・・・」

 ロザリオのスノーホワイト家での立場が弱すぎる・・・


 ちなみにエルフチームは牢屋番の部屋を6人で使っている。兵士は狭いところで寝るのには慣れているそうだ。逆に広すぎると不安になるらしい。


 落ち込むロザリオに優しい声が掛けられた。

 「キュキュキュ」

 「仕事を終えたら親方が遊びに行くってさ」

 「そうか!昨日の宴会で出た蜂蜜酒と蜂の子を少し取ってあるんだ」

 「キュキュ!」



 「なんか旦那の帰りを待つ女房みたいっす」

 「本宅は別にあるんだから、愛人じゃないのかな・・」

 「不憫っすね」




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