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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第8章 暗黒邪神教団編
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風雲モフモフ城

 騎兵隊の先頭を走る召喚馬の騎手が、後続に減速の合図を送ると、自分も手綱を絞った。

 「どうっ、どうっ、よし良い子だ」


 同じように速度を緩めて、横に並んだ女蛮族が話し掛けてきた。

 「はの字、どうしたさね」

 「あれを見てくれ」

 レンジャーが指を差した方向には、オークの丘が見えた。だがその周囲には人型の何かが群れ集っていた。


 「なんだか、うじゃうじゃと蠢いてるねえ。アタシにはスケルトンに見えるけど・・」

 「俺にもそう見える。しかもものすごい数だ」

 遠目に見ても、丘の至る所から湧き出して、麓に集結している様子が見てとれた。


 「シーカー殿、ここが目的地ですか?」

 聖堂騎士の一人が、馬を寄せて現状を尋ねてきた。


 「いや、目的地はこの先だ。もうそちらにも見えると思う・・」

 「こ、これは・・隊長!大変です!」

 慌てて隊列の中央に居る隊長に報告しに戻っていった。すぐに隊長がレンジャーの側にやってきた。


 「間に合わなかったか・・」

 骸骨の軍団を見て、聖堂騎士団の隊長はため息をついた。

 「こうなれば、汚染地域が広がる前に、この付近一帯を浄化の炎で焼き尽すしか方法がない・・」

 しかしそれを行えば、対象地点から半径5kmは、生き物の住めない荒地に変えてしまうことになる。責任の重さに、隊長が躊躇っていると・・・


 「ちょっと待って、あいつら様子が変よ!」

 鞍に乗ったままの少女が、何かに気がついて声を張り上げた。

 遠目に見える骸骨達は、外には目もくれずに、丘に幾つか開いた洞窟の向けて戦闘体勢を整えていたのだ。

 「・・中でまだ、戦っている奴等がいるのか・・」

 「きっとそうよ、あたし達でさえ突破できなかったんだから、邪神教徒なんかに負けるはずないわ!」


 「その自信はどこから来るんだよ・・」

 「負けん気だけは伝説級さね・・」

 良い様に鴨にされた記憶が、相手の実力を過大評価している魔法少女であった。


 4人の冒険者の視線が聖堂騎士隊長に集まった。それに答えるように隊長が尋ねた。

 「君達は、あの領域がまだ邪神の支配下に侵されていないと思うのだな」

 「明らかに骸骨軍団の敵意は、外ではなく内側に向いている。丘の下に抵抗している存在がいるのは間違いないと思う」

 「それを確かめる方法はあるのかね。信徒の剣が出現し、死者の軍勢が湧き始めている以上、邪神本体がいつ呼び出されてもおかしくないのだ」

 邪神召喚を未然に防げるのであれば、多少の犠牲は払う覚悟であった。


 「ちょっといいですか?」

 手枷をされたまま放置されていた六つ子の妹ドルイドが声をかけてきた。

 「うちの兄弟が防衛側に参加してるはずなので、連絡してみてもいいですかね・・」




 「コア、設置と拡張はできそう?」

 「だめだめー」

 やはり無理か・・暗黒神官騎士がダンジョン外に転移したから、その隙にと思ったんだけど、このそこら中から湧いてでる骸骨も処理しきらないと、駄目みたいだ。


 現状、僕とコアはルカの洞窟に移動してきた。転送魔法陣は眷属以外は使用できなくしてあるので、ここが一番安全だと思う。

 「水牢に繋がる地下水路の警備はミコトチームで、司令部の警護はクロコチームで」

 「ん」 「ピュイ」 「シャー」


 「ハクジャは元気なリザードマンを率いてトラップルームでスナイパーチームに合流して。人族のゲストが3人いるから誤射しないであげて」

 「了解しました。ゲスト側にも注意を喚起していただけますか?」

 「ん」


 「狼チームは北側の出口の封鎖をお願い。今は穴熊チームが頑張ってるけど、徐々に押されてるらしいから」

 「ん」 「バウバウ」 「ギュギュギュ」


 「ロザリオは出口まで押さえることが出来た?」

 「主殿、バリケードは半分どかしたが、ポチが通り抜けるのは無理そうだ。他のメンバーでなんとかする」

 「了解、ダンジョンの外には絶対にでないようにね」

 「しかし、奴を倒さない限り、この死者の冒涜は終わらないぞ」

 「そうだけど、コアの戦闘支援無しで、しかも向こうは護衛の骸骨戦士を呼び放題だからね」

 「くっ、重ね重ねあそこで逃げられたのが悔やまれるな」

 「過ぎたことは言っても仕方ないよ。今はまず奴らの侵入を食い止めるのが先決だから」

 「了解した、ここの出口は任せてくれ」


 

 「リーダー、別働隊から風の囁きで連絡きたよ」

 「近くにいるのか?」

 「聖堂騎士団に捕まってるって・・」

 「おい!」x2

 「中の様子を知りたがってるんだけど、どうする?」

 「勝手に情報を流すと、利敵行為にとられて敵対したと勘違いされるぞ」

 「だよね」

 「ダンジョンマスターかダンジョンコアにお伺いたてるしかないな」

 「どうやって?」

 『ん?』

 「あ、いいところに」x3



 「もしもし」

 「え?誰かから通信でもきたの?」

 「かもねぎ~」

 「・・ごめん、それちょっと意味不明。だってそれって4人組の冒険者のことだよね?」

 「ぴんぽん!」 

 当りなのかよ・・


 「それでビビアン達がなんだって?」

 「こしょこしょ」

 なるほど、聖堂騎士団と側まできてるのか・・・だったら・・・



 「モフモフ助け隊から返信ありました!」

 「どんなコードネームだよ・・」

 「返信の内容を正確に答えなさい。嘘をついてもすぐに判るから無駄な隠し事はしないように」

 「邪神教徒は一人を残して撃退、最後の一人が邪神のしもべと合体して包囲戦を仕掛けている、だそうです」

 「・・嘘はいっていないようだな」

 想像していた状況より、だいぶ抵抗側が頑張ったらしい。これなら邪神のしもべさえ倒せば、奴らの目論みは阻止できるはずだ。


 「よし、聖堂騎士団はこれより、邪神のしもべ討伐に向かう。各自対アンデッド戦の準備をせよ」

 「「了解であります!」」


 「はの字、うちらはどうするんだい?」

 「騎士団との契約は、信徒の追跡と拠点までの案内だったろ?これでお役御免ってことだよな」

 「燃やす?ねえ燃やしちゃう?」

 「さて、どうするかな・・」


 考え込んだレンジャーに、六つ子の妹ドルイドが話しかける。

 「ビビアンさん達には、別口で依頼があるそうなんですが・・」

 「なに?」



 「ここで待機しててくれって」

 嫌疑が晴れて釈放された六つ子の二人に連れてこられたのは、オークの丘が見える丘の頂上だった。

 「確かにここなら状況が良く見えるな・・」

 「ここで連中の動向を監視してたんです」

 「それで?」

 「そしたらモコモコと地中から・・」

 「ああ、なるほどあんな感じね」

 オークの丘の方から、モコモコと何かが地下を掘り進んできているのが見えた。


 「キュ」

 いつものごとく、ハリモグラの一団が穴から顔を出してきた。

 「なんか、紐を引っ張ってるわね・・」

 「先端に何か結んであるな・・ワンドか?」

 それは古びた革のバンテージが巻かれた、赤い宝石のついたワンドであった。

 「あら、見た目はみすぼらしいけど、それなりの魔力を帯びたワンドみたいね。これくれるの?」


 「キュキュ」

 「つまりこれが依頼料ってわけね」

 「キュ」

 「ワンドなら最低でも金貨15枚・・・いいわ、真紅のビビアンがこの依頼うけてあげる!」

 「「キュキュ!」」


 「おい、勝手に決めるなよ」

 「言い出したらきかないからねえ」

 「まあ、いいだろう。報酬としても妥当なとこだ」

 「お前らは、ビビニャんに甘すぎなんだよ」

 「その呼び名、止めてよね」


 騒ぐ4人の横で、六つ子の二人はちゃっかり枝豆のぎっしり詰まった袋をもらっていた。ちゃんと塩茹でされたものだ。


 「「キュキュ」」

 「バイバイ~」

 助け隊別働隊に見送られて、ハリモグラ達は帰っていった。


 「さあ、骨は全部焼却してあげるわよ。久々にあたしの全力見せてあげるわ!」

 「お手柔らかにな、ビビニャん」

 「ビビニャん言うな!」



 その頃、ダンジョンでは、押し寄せる骸骨軍団を3度、撃退していた。

 「各方面の被害状況を報告して」

 「畑出口、軽傷2。回復に問題なしです、ジャー」

 「階段出口、負傷なし。雑魚ならまだまだいける」

 「バウバウ」 「ん」

 北側の出口も癒しのリンゴ1個で済んだようだ。狼チームは骨には強いからね。


 「しかし主殿、耐えるだけではジリ貧だと思うのだが」

 「確かに篭城戦は外からの援軍が基本だからね」

 「ということは、あてがあるのかな?」

 「そろそろ騎兵隊が来てくれるはず」

 「ほう、ならば階段通路を少し掘り広げてもらえるだろうか・・ポチが通れるぐらいに」

 「了解、親方・・は別件か。じゃあ穴熊チームよろしく」

 「「ギュギュ」」



 しかし階段通路の拡張が終わる前に、骸骨軍団の逆襲が始まった。


 「うぴゃあぁ」

 あ、聞いた事の無い警報だ・・

 「ざくざく」

 え?掘ってきた?どこを?

 「ぜんぶー」

 全部って・・・あ!


 「マスター様、骸骨が鍬とスコップで丘を掘り抜いています、ジャー」

 「バウバウ!」 

 「ギャギャ(天井から掘削音がします!)」

 「主殿、こちらから掘らなくても出口が広くなりそうだ・・」


 


 「ケケケケ、マルハダカニ、シテヤル、ケケケケ」


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