空色の天使
僕の顔の高さまで浮き上がってきたコアをじっと眺める。
髪はナチュラルなショートボブで、耳は隠れている。髪の色は空色で、瞳と同じだった。
顔は、図書委員の中で一番だけど、人を寄せ付けない影がある感じ。
でも今は満面の笑顔である。
オフホワイトのセーラーシャツ(襟に2本の水色のライン)に、スカイブルーのキュロットスカートを穿いていて、足は素足だった。
僕が見惚れていると、小首を傾げて聞いてきた。
「ますたー?」
そうだった、今はまだ邪神教徒との戦闘中だ。コアを愛でるのは奴を排除してからにしよう・・・
「コア、領域の再支配を」
「どみねーと!」
コアの声とともに、澱んでいたダンジョン内の空気が、爽やかなものに代わっていった。
「コア、皆とのリンクをつなげ直して!」
「りこねくと!」
コアからの再接続の要請に、眷属の皆が一斉に答えてくる。
「ギャギャギャ(よかった、無事だったんですね)」
「バウバウ」
「キュキュ」
「え?リンク切れてたのかよ・・ジャー」
「こちら親衛隊、至急応援を・・」
「おそいぞ!主殿。すぐに転送してくれ!」
押されている所もあるけど、まだ皆、頑張ってくれていたみたいだ。
「よし、皆、これから反撃開始だ!」
「「「 魔女の婆さんに懸けて!! 」」」
「愚かな・・愚かな・愚かな蛆虫どもめが!調子に乗っているようだが、この私と邪神の僕達に勝てるとでも思っているのか!」
存在を無視されていた神官が、激怒していた。
「もういい・・もういい・もういい!貴様達は一人残らず皆殺しにしてやる!」
神官は、懐から薬瓶のようなものを取り出すと、ワタリの足元に投げつけた。
「まずは、貴様からだ!」
「当たらなければ、どうと言う事もないっす」
軽くバックステップして避けたワタリの目の前で、薬瓶は床に当たって砕けた。
すると中の液体が飛び散って、刺激臭を放つ毒の霧に代わった。
「ギャーース」
その霧を吸い込んだワタリは、あっという間に顔が紫色になり、呼吸困難を起こして床でのた打ち回り始めた。
「ワタリ!」
詠唱を阻害する邪魔者を排除した神官は、次の一手として、すでに高位呪文を唱え始めていた。
「・・地獄の王にして万の軍勢を率いる我が神よ、今こそ汝の御力をここに示し、我等が信徒に仇なす者共を焼き尽くし給え、インフェルノ・ストライク!(地獄の裁き)」
その力ある言葉により、フレイム・ストライクを黒い炎にかえた暗黒呪文が、コアルームに炸裂した
「はははは、やったぞ、ダンジョンマスター諸共、全てを消し炭にかえてやった、はははは」
コアルームには神官の他に誰も、何も残されていなかった・・・
全ては、黒い地獄の業火で焼きつくされてしまったのだ・・
床にぽっかり開いた、2つの縦穴以外には・・
「はは・・ん?・・穴だと・・」
慌てて神官が床に開いた穴に近づくと、それは下の階層まで掘り抜かれた巨大なモグラの穴であった。
「「キュキュキュ」」 「ぐっじょぶ」
コアの念話で、突貫工事で縦穴を掘り抜いたハリモグラチームが、誇らしげに並んでいた。
落下の衝撃を受け止める為に、寝床から藁を運んで積んでいた、穴熊チームも、コアの帰還を喜んでいる。
そこに救急班のヘラがユニコーンのニコを引き連れて駆けつけてきた。
「ワタリしゃんは窒しょく毒でしゅ。マスターは、あちこち打撲と骨しぇつでしゅね」
ヘラが手早く診断してニコにお願いした。
「ニコ、二人にユニキュアでしゅ」
「ヒヒン」
ニコが角をかざして力を解き放つと、ワタリの顔色が元に戻っていった。ついでに僕の身体もだいぶ楽になった。
「これだけ距離をとれば、奴の結界から抜け出せたはずだ。コア、ロザリオを転送してみて」
「ん・・・できた♪」
よし、これで戦況をひっくり返せる。
ブラック・プディング(黒スライム)とモノアイ・サラマンデール(一つ目山椒魚)は、コアの戦闘支援と戦法の伝授でなんとかできると思う。問題はデスナイトだね。やっかいなものを召喚してくれた・・・
「アップルチーム・エルフ『モフモフ』親衛隊は、癒しの泉まで後退して。殿はロザリオ、頼んだよ」
「承知!」
「コア、戦場に、順次物資を投下して。タイミングは任せるよ」
「ん」
「あと、神官と3つのしもべ以外に、敵性ユニットが侵入していないかをチェックして」
「あ・・びみょー」
「え?いるの?」
コアがダンジョン内の風景を投影してくれた。
そこにはトラップルームで、狼チームとともに黒スライムと戦う、仮面の戦士が3人いた・・・
「誰、あれ?」
「なぞー」
「キュキュ」 「キュ」
「ほむほむ」
親方達は知っているらしい。
まあ、この様子だと敵対はしなさそうだから、ほっといてもいいかな。
「ん?」
「そうだね、ゲスト認証を送ってみようか。受諾してくれればこちらに危害は加えられなくなるからね」
「ん」
「リーダー、なんか頭の中にきたよ?」
「ダンジョンからの認証要請だな・・」
「まじで?やったねこれでうちらも眷属デビュー?」
「いやいや、眷属化したらダメだろう。できないし」
「しょぼーん」
「ゲストに認定してくれるようだな・・よし、受けよう」
「しゃきーん、モフモフ助け隊もメジャーデビューだね」
「だから違うって」x2
DPの推移
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転送:ロザリオ(R6) -180
残り 2531 DP (3013DC)




