表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第1章 サバイバル編
23/478

大作戦

 壁にとまったバッタが、その大きな翅を震わせると、不思議なことに男性の声が聞こえてきた。

 「おはよう、ワタリ君」

 「いや、壁に穴が開いていて、向こう側からしゃべってるだけっすよね」

 「今回の君の任務だが、以前君が所属していた機関の同僚を騙す事になる」

 「まあ、そうなるっすね」

 「すでに君のチームは所定の位置で待機していることだろう」

 「まだ足元でちょろちょろしてますけど」

 壁の向こうで「コア、確認して位置につかせて」「ん」という声が聞こえた気がした。

 「・・・たぶん君のチームは所定の位置で待機してるはずだ」

 「だと嬉しいっすね」

 「なお、今回の作戦で、君もしくは君のチームにどんな危険がせまろうとも、親方は一切関知しないのでそのつもりで」

 「いや親方には期待はしませんですけどね」

 「なお、このレコーダーは自動的に消滅する。健闘を祈る・・・」

 「え、爆発するんすか?!」

 壁のバッタが突然あいた穴に引きずりこまれると、ムシャムシャ、バリバリという音が聞こえてきた。

 「消滅ちゃあ消滅ですかね・・・」


 一晩のうちに凍った槍の部族から送られてくるであろう捜索隊の迎撃準備をしなければならない。

 想定するのは戦士長を含む7人から8人の集団だ。タイミングよく罠にかける為に、ワタリに一芝居打ってもらうことにする。

 「コア、猪を1体召喚して。名前はアグーで」 「ん」


 メインの戦場は縦貫トンネルの途中の小部屋だ。ここを猪の泥場に偽装する。部屋の両端に大量の泥を運び込み、五郎〇と新たに呼び出したラグーに転がりまわってもらう。

 部屋の中央部分だけは乾いた床が橋のように通路と縦貫トンネルを繋いでいるかんじで。トンネルにあった木の扉は、引っぺがしてコアルームに仕舞っておこう。丸いからちゃぶ台に使えそうだね。

 泥まみれの2頭とワタリとで、小部屋から通路、さらに外に向かって狩りの痕跡を残してもらう。

 まるで6人のスノーゴブリンが洞窟の猪と戦って、仕留めたかのように。


 「コア、小部屋の泥の下に4箇所の罠2-5を設置して」 「ん?」

 「ああ、場所は中央よりにしとこうか、小部屋の4隅を安全地帯にしとこう。ワタリによく教え込んどいて」 「ん」

 「囮役のアグーは縦貫トンネルの端に寝そべって。ワタリは小部屋の通路で外を監視。」

 「ん」 「グヒィ」 「ういっす」

 「五郎〇はコアルームから突撃の準備。ケンとチョビは怪我してるから無理せずにコアルームで待機」

 「ん」 「グヒィ」 「バウバウ」

 「残りのみんなは巣穴で待機。もしもコアルームが突破されたら、巣穴の出口から脱出して」

 「ん」 「キュウキュウキュウ」「ギュウギュウギュウ」

 「いや今回の敵は武器を持った戦士だ。最初の奇襲を凌がれると反撃で、ランク1のみんなだと一撃で殺されてしまうから、ここは我慢して」

 「ん・・」 「キュー」「ギュー」   「ん!」

 わかってくれたみたいだ。

 実際、今回の作戦は分が悪いと思う。策を練らずに、ありったけのDPでスノーゴブリンを召喚して、迎え撃つという方法も考えたんだけど。

 追加で4体しか呼べないから、五郎〇達が援護しても勝率5割ってとこなんだよね。罠なら上手くはまれば、こちらの損害を最低限に抑えられるから。あとはワタリの演技力に期待しよう。   

 ・・・あ、なんか急に心配になってきた。

 「ひどいっす」


 やがて長い夜が明けた。夜は夜行性の肉食獣が活発に活動するから、部族の者は居住区から一切でないとワタリから聞いてはいたけど、それで安心して眠るなんてことはできなかった。

 配給される炙りバッタ磯風味をかじりながら、ただひたすら敵が来るのを待ち続けた・・・


 「ギャギャ、ギェギャッ」

 ワタリが外に向かってゴブリン語(北方訛り)で呼びかけている。どうやら来たらしい。

 

    以後はゴブリン語の副音声でお聞きください


 「ああ、ここです、ここ」

 「なんだ、お前は新参者じゃないか、他の奴らはどうした?」

 「あれ?話いってませんか?おかしいな、すれちがっちゃいましたかね」

 「いったいなんのことだ」

 「いえね、昨日の狩りは大成功で、でっかい猪を2頭も仕留めたんすよ」

 「おお、そりゃすごいな」

 「ですが、狩りの最中に2人ほど怪我しちまいまして」

 「ほう」

 「そんで日も沈んだので、猪の塒で夜を明かして、今朝、みんなで獲物を担いで村にもどったんですけど」

 「ならお前はなんでここにいる?」

 「へい、猪がでかすぎて怪我人抜かした4人じゃ2頭は運べないんで、応援呼んでくるから見張りしとけっていわれました」

 「お前1人じゃ狼の群でもきたら守りきれないだろうに」

 「そんときは、きっぱりあきらめるっす」

 「・・・まあいい。狩猟部隊が大きな獲物をとって帰りが遅れたなら、族長もお許しくださるだろう。もう1頭は俺たちで運んでやる。どこだ?」

 「あ、お願いできますかね。おいらだと穴の奥からひっぱりだすこともできないもんで」


 「足元に気をつけて、泥は意外と深いっす。真ん中は乾いてますから」

 「なんだここは」

 「猪の塒じゃないかって聞きましたけど」

 「それで、残りの1頭はその細い穴の中なのか?」

 「へい、かなり手傷を負わせたら、そこに逃げ込みまして、途中で倒れたんで力尽きたんでしょう」

 「ああ、あれか確かにでかいな、よし、力に自信のあるやつ、行って引きずってこい」

 「ういーす、いってきますぜ」


     主人公視点に戻ります


 作戦通りに戦士が1人でトンネルを進んできた。他には戦士長らしき古兵と戦士が3人、小部屋で様子をみている。

 通路の外には狩人らしき2人が見張りをしている。ワタリは小部屋と通路の境目あたりに陣取っていて、戦士長になにやら話しかけて気をそらしてくれている。

 カチッ 「ギャギャーー」 ドサッグサッグサッ

 トンネルの戦士が深くて痛い落とし穴に墜ちた叫び声が、戦いの始まりのゴングになった。



DPの推移

現在値:181 DP

召喚:猪1頭  -40

設置罠:2-5 x4 -100

残り 41 DP

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ