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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第8章 暗黒邪神教団編
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魂の行方

 「さてさて、先行した4人を倒した存在が居るはずじゃが、静かなものだのう・・・」


 暗黒邪神教団支部「バエルの後翅」の残存者7名が、オークの丘と呼ばれる聖地を見上げていた。巡礼者と呼ぶには余りにも雑多で、禍々しい雰囲気を放つ集団ではあったが・・・


 「占い師よ、我らがこの地を占拠するためには、丘の中腹にある地下道の階段を降りていくのが良いのか占っておくれ・・」

 「・・卦は・・凶・・」

 ふむ、素直に行くと先行の4人の二の舞ということか・・


 「では、あの麦畑の奥の洞窟に入るのが良いのか?」

 「・・卦は・・・大凶!・・」

 水晶玉に怖ろしいものが映ったらしく、占い師の顔が蒼褪めていた。


 仕方あるまい、少し離れてはいるが、あの木の扉で塞がれた洞窟から入るとするか・・

 「北側にあった洞窟から入る。樵が先導してくれ」

 「わかった」

 巨大な両手斧を軽々と片手で担いで、樵は7人の先頭に立った。


 「7人の巡礼者とはのう・・いささか験が悪いのう・・」

 老婆が不吉な話を始めた。

 「そうなのですか?オババ様」

 最後尾のメイドが律儀に相槌をうつ。


 「うむ、東方の言い伝えによれば、7人の巡礼者は、誰かが欠けると行きずりの者を無理やり取り込んで、常に7人で彷徨うということじゃ・・」

 「それは、集団を維持するのに、理にかなった方法であると思われますが?」

 「別に7人いなければ巡礼できないわけじゃなし、無理に付き合わされる旅人は死人のような表情をしていたそうじゃよ。ただその場にいたというだけで、何年も、何十年も・・・」


 「オババ様、これから潜入して破壊工作なのですから、士気の下がるような怪談はお止めください」

 神官が、老婆とメイドの話を打ち切らせた。

 「なんじゃい、せっかく皆の緊張を和らげようとしておるのに・・」

 「いえ、この集団で緊張している人などいませんから」

 「それもそうじゃの」


 そうこうするうちに、北側の洞窟前にたどり着いた。

 ざっと調べてみたが、両開きの木の扉は、造りは雑だが最近ここに造りつけられたようだった。罠の有無は・・・調べられる者が居なかった・・

 罠探知の技能を持つものは、先行組と遅参組には居たが、この7人の中にはいない。


 「呪文で調べますか?」

 神官が老人に尋ねた。安全策をとるなら、そうすべきだったが、魔力には限りがある。その判断を委ねたのだった。


 「最初だしのう、やっておくれ」

 「では・・」

 呪文を唱えようとした神官を、占い師が止めた。

 「治癒にも使う魔力は温存してください。ここはわたしが・・」

 「すまないね、じゃあ頼むよ」

 神官に代わって占い師が、罠探知の呪文を唱えた。


 「・・この扉と、見える範囲の床・壁・天井には罠はないですね・・」


 「よし、開けるぞ」

 いいかげん、じれてきた樵が扉を勢い良く押し開けた。

 すると狭い通路が真っ直ぐのびているのが見えたが、その瞬間、占い師が声を上げた。


 「あっ、床に罠の反応が!」

 「なんだとっ!」

 しかし扉を押し開く為に体重移動をしていた樵は、そのまま無意識に前方に足を踏み出してしまった。


 ガッコン


 扉の閉じていたラインぎりぎりまで、床が消えて無くなった。


 「ばっ! とっ! なっ!」

 咄嗟に開きかけた扉に掴まろうとした樵だったが、思いのほか建付けの良い扉は抵抗無く開いてしまい、逆に前のめりになって床の穴へと落ちていってしまった。


 「おい、大丈夫か!」

 漁師が慌てて落とし穴を覗き込むと、3mほどの深さの穴の底に槍の穂先が並んでいた。その中央に、樵がうつ伏せで倒れていた。


 「くそっ、何本か刺さりやがった・・」

 「この高さなら、大した怪我じゃないだろ。早く上がってこいよ」

 「他人事だと思いやがって・・・いてて」


 責任を感じた占い師も、落とし穴の縁まで来て謝った。

 「すいません・・わたしがもっと早く気がついて・・・?」

 占い師は落とし穴の底を見つめながら怪訝そうな顔をした。


 「ああそうだな、次からはもっと早く言って・・」

 起き上がった樵が上を見上げるのと、占い師が叫ぶのが同時だった。


 「まだ、罠があります!動かないで!!」

 「なに?!」


 カチッ  バコン!


 「うおおおお・・」

 落とし穴の底に開いた、さらに深い落とし穴に、樵は落下していった。


 「樵さああん!」

 深い穴底に叫ぶ占い師の胸に、通路の遙か奥から飛来した3本のボルトが突き刺さった。


 「えっ?・・・けほっ・・・何・・」

 自分の胸から突き出したボルトと、流れ出す血を見ながら、占い師は仰向けに倒れていった。


 「・・魂を・・捧げ・・ないと・・」

 薄れ行く意識の中で、入信の儀式のときに誓わされた誓約を思い浮かべていた。


 『汝が道半ばにして倒れしとき、その魂を神に捧げよ。さすれば残されし者がその遺志を継ぐであろう』

 『そして汝の亡骸は、憤怒の炎となって、周囲にいる敵を焼き尽くすであろう』


 占い師の瞳が、駆け寄るメイドを捉えていた・・

 「・・きちゃダメ・・・巻き込んじゃう・・」


 そして占い師の意識は途切れた・・・


 

 通路の奥からは次々とクロスボウが放たれる。瀕死の占い師が爆死するものと思っていた4人は、咄嗟に洞窟から見えない位置まで逃げ出していた。

 唯一、メイドだけが、盾で防御しながら占い師の身体を、安全な場所まで運び出そうとしていた。


 「お止め、もう助からないよ!」

 老婆が声を掛けるが、メイドは数本を被弾しながらも、占い師ごと脱出に成功した。


 やがて狙撃が止み、木の扉が閉まると、丘から離れた場所で再集合した。


 「自身を生け贄にはしなかったようじゃの・・」

 占い師の遺体から立ち上る黒い霧を見上げながら、老人が呟いた。


 おなじ霧を見上げながら、メイドは遺体の目蓋を閉じて言った。

 「彼女の魂は、死の世界に行ったのですか?」

 「いいや、入信の儀式を経た信徒の魂は、死ねば神の奴隷として未来永劫働くことになる。それが嫌なら生け贄として捧げるしかない・・・それしか逃れる方法はないのじゃ・・」

 老婆が、自分自身に言い聞かせるように繰り返した。


 「ではなぜ、彼女はそうしなかったのでしょうか?」

 「お前さんを巻き込みたくなかったのじゃろうよ・・あそこで爆死しとったら、お前さんと漁師は確実に死んどったろう・・・」

 「そうですか・・・」


 メイドの傷を治癒しながら、神官が尋ねた。

 「樵殿は無事なんですかね?」

 それに答えるかのように、丘の地下で爆発音が響いた。


 「今、逝ったようじゃの・・」

 老人は冥福を祈るかのように、少しの間だけ両目を閉じた。


 「これで残りは5人か・・ちょっと無理っぽいな」

 漁師が呟いた。メインの前衛と、探査呪文の専門家をつぶされた以上、攻略は難しくなったと感じていた。


 だが、老人はあきらめていなかった。

 いや、当初より興奮しているようにも見える。

 なぜなら・・・


 「くかかかか、どうやら我等が神は、最後に最高の生け贄を用意して下さったようじゃ!」

 老人の豹変に他の4人がギョッとした。


 「あの複合罠、そして統率された狙撃手。間違いなくこの地の支配者はダンジョンマスターじゃろう」

 「ダンジョンマスター!?」x4


 「そうじゃ、そしてダンジョンマスターを生け贄に捧げれば、それだけで我等が神は降臨なされる。我等が宿願も果せるのじゃ! くかかかか」

 


 

 

 

 DPの推移

現在値: 1621 DP (3013DC)

撃退:樵(ファイターLv8) +320

  :占い師(オラクルLv7) +245

残り 2186 DP (3013DC)

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