九郎なだけに
未だに土下座を続けている斥候ゴブリン(仮)にスキャンをしてみた。白い光が身体を上下したときに、
ビクッとしたけど、逃げ出したりする素振りはなかったね。完全に諦めたのかな。スキャンした情報をコアから送ってもらう。
スノー・ゴブリン:雪原ゴブリン
種族:亜人 召喚ランク2 召喚コスト40
HP12 MP5 攻撃力2(武器修正0) 防御力1(防具修正+1)
技能:槍、耐寒、共通語cs
備考:ロスト個体
「スノー・ゴブリンっていうんだ。寒冷地方に順応したゴブリンの亜種ってことかな」 「ん」
ランクが2で、普通のゴブリンより1高いね。技能は槍と耐寒、あれ?
「スノー・ゴブリンって全部が共通語しゃべれるの?」 「んん」
あ、csって付いてるね。カスタムの略かな。ランクアップで増えたらNew表示だろうから、これは誰かに付与された? うわ、備考にロスト個体ってあるよ。本当にどうしよう、こいつ。
「言葉が通じるなら顔を上げて、挨拶して」
怖がらせないようにできるだけ普通に声を掛けると、ゴブリンは恐る恐る土下座をやめてしゃべりだした。
「おいらスノーゴブリンのはぐれものです。今後ともよろしく・・・」
いや、まだ眷属化してないからね。それとそのセリフ誰に教わった?
詳しい話を聞きだす前に、残り4体のスノーゴブリンの吸収をしてもらった。 最初に落とし穴で倒した斥侯の装備も含めて、石の槍が5本と毛皮の腰巻が5個、あと黒曜石のナイフが2本手に入ったのは嬉しい。これから兵士としてスノーゴブリンを召喚することがあったら持たせよう。ナイフは色々使い道があるから大事にしないとね。
「さて、君はどこから来て、誰に仕えているんだい?」
はぐれスノーゴブリンに生い立ちを聞いてみることにした。
「おいらは、気がつくと薄暗くて狭い部屋で、変な光る模様の上に立ってました。それより前の記憶はまったくないです。
まん前に人族の若い女が立っていて、「あたしがお前のご主人様よ、崇めなさい」と命令されたんです。そのときに服従のポーズとしてドゲザを、眷属としての挨拶は「今後ともよろしく」だと教わりました」
あー、突っ込みどころ満載だけど、十中八九その召喚者は前世では同郷だね。
「それで、他の眷属とかはどれくらいの数がいた?洞窟の広さは?」
「それが最初にもらった仕事が、「洞窟の外に出て兎か鶏を狩ってきなさい」だったもんで、そのまま槍を渡されて外の森に狩りにでたんでさ。で、森の中を延々探したんですが獲物は見つからず、日が暮れたんで戻ろうとしたら」
「したら?」
「迷いました」
「おい」
「なにせ初めての森で、勝手がわからず、しかも洞窟から離れるとご主人の声も届かずで」
ああ、ダンジョンから離れすぎるとコントロールは効かなくなるね。
「でもって途方にくれていたら、ばったり同族の狩りの集団に会いまして。縄張り荒らしだと追い回されたんで、人族に奴隷として連れてこられて逃げ出したところだと説明して、部族の下っ端に加えてもらったというわけで」
「なるほどねー、君も苦労したんだねー」
「へい、なんせ最初のご主人にもらった名前がゴブクロウでしたから」
「それは関係ない」
「ですかね」
「部族に加えてもらえても、新参者ですから扱いは下の下。今回も危ない偵察組に回されて、狼だ罠だ猪だと。こりゃ別のますたあ様のだんじょんとやらに違いない。というわけで命ばかりはお助けを」
んー、言葉もしゃべれるし、周辺の知識もあるしで眷属化するには良い人材なんだけど、あとあと面倒事に巻き込まれそうなんだよね。だいたい他人の召喚モンスターを眷属にできるのかな? ま、いいか。
「コア、可能ならこのスノーゴブリンを眷属化してみて」
「ありがたや、今後とも・・」
「だからまだ早いって」 「ん」
スノーゴブリンの足元から白い光りの柱が立ち上ると、眷属化に成功したみたいだ。
「おお、生まれ変わったようです。スノーゴブリンの元ゴブクロウ、今後ともよろしく」
それはやっぱり言うんだ。
ロスト個体でも眷属化は問題なくできた。
気になった技能のカスタムについてコアに聞いてみると、召喚時にコストの50%を追加で払えば、カスタムで技能に一つ追加できるらしい。
ただしなんでも選べるわけでなく、その種族やランクに見合ったものからしか追加できないとのこと。カスタム2体召喚するならベーシック個体を3体召喚したほうが有利な気がするよね。
まあワタリ(改名した)は共通語を付与された影響で、知能がずいぶん上がったらしいから、悪くはないのかも知れないけど。普通に考えればゴブリンだけでも9体以上召喚して、カスタムまでしてるんだからお金(DP)持ちのマスターだよなあ。指示はうっかりなとこあるから初心者かもしれないけどね。
さて同業者の動向も気にはなるんだけど、今はワタリのいた部族の情報が優先だね。
「部族に名称とかあるの?」
「ゴブリン北方語でいうところの「凍った槍」と名乗ってましたね」
部族名よりゴブリン語に方言があったことにびっくりだよ。
「部族の中で戦士はどれくらいいた?」
「族長と戦士長が2人に祈祷士が1人、戦士が15・6人と狩人が8人ぐらいでした」
「戦士と狩人の違いは?」
「戦士は力が強くて槍は白兵専用です。狩人は動きが機敏で槍は突いたり投げたりです」
槍を投げたらナイフで戦うのか。ワタリは狩人扱いだけどナイフは渡してもらえなかったと。
「すると戦士3体、狩人3体が戦力から減ったってことでいい?」
「ですかね」
「6人が戻ってこなかったら、族長はどうすると思う?」
「そうですね~、まあ捜索隊をだすんじゃないですか」
「やっぱりそうなるかー」
普段でも狩猟部隊が手ごわい敵に出会って死者がでるぐらいはあったと思う。でも1人も戻ってこないのは何か起きたんじゃないかと疑うよね。
「この場所までたどり着くかな?捜索隊」
「おいら達も、特に足跡とか隠して移動はしてなかったっすからね」
捜索隊には狩人も混じるだろうから、痕跡を丁寧に消してこない限り、ここが見つかるのは避けられないか。今から足跡をごまかしに行くにしても時間も人手も足りないしね。ましてや、偽装工作中に捜索隊に見つかったら大ピンチですから。
「どれくらいで捜索隊がきそうかな?」
「う~ん、狩りは基本は日暮れまでの日帰りですから、夜になって戻らないと次の朝には探しにでるっすかね。なので明日の昼過ぎには」
はや。 凍った槍の族長は、せっかちさんだね。もっとデンとしててくれてもいいのにな。
狩猟部隊が戻ってこないなんて小さい小さい。たかが部族の戦力が20%低下したぐらいじゃないですか・・って、そりゃ大事か。そりゃ探しにくるね。
仕方がないから、お出迎えの準備をしましょうか。今度は相手も警戒してるだろうし、へたすると戦士長が率いてくるかも。DP足りるかな・・・
「はあ、いつまでたってもDPは貯まらないね」 「・・ん」
DPの推移
現在値:122 DP
スキャン: -1
吸収:スノーゴブリン 4体 +80
眷属化:ワタリ -20
残り 181 DP




