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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第8章 暗黒邪神教団編
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走馬灯のように

 『人族殺しの矢』

 正式には、『スレイイングアローVSヒューマン』という人族を呪殺する為の魔法の武器である。

 この場合は矢ではなく、クロスボウのボルトなので、正しくはスレイイングボルトなのだが。


 古来より種族を怨敵とする魔法の武器は数多く知られている。その最も有名なものは、『ドラゴンスレイヤー』つまり竜殺しの剣であろう。

 その他にも、巨人殺しの戦槌や、人狼殺しの槍、妖鳥殺しの弓などがあるが、その中でも『〇〇殺しの矢』は、使い捨てだが効果が高く、所持しているだけで対象の種族から敵視されるという副作用がある。

 なお、メインの効果は、対象の種族に命中すると50%の確率で呪殺するらしい・・・


 「というのが僕の知ってる、種族殺しの矢の性能なんだけど、これも同じ物?」

 急遽、コアルームに召集された緊急対策チームの一人、逆さフェアリードラゴンのラムダに鑑定の呪文をかけてもらってから質問してみた。

 なにせラムダはコア以上に無口なので、鑑定の結果を聞きだすことは大変に難しい。そこで、予想をたてて、合っているかどうかで判断しようというわけだ。


 「・・・」

 ラムダが無言で一回転した。これはイエスの意味だ。

 「本物かあ・・」

 「やばやば」

 コアもそっと台座の影から顔を覗かせている。


 「しかし主殿、たかが矢1本、使ってしまえばそれまでだろう。それに実際に人族相手に撃たなければ問題ないと思うが?」

 ロザリオの疑問に、質問で返す。


 「じゃあ、仮にだよ。エルフ殺しの矢を一月に1本変換できるダンジョンがあったとしたら、長老会議は放っておくかな?」

 「・・・なるほど、それは全力で潰しにくるだろうな・・」

 「だよね」


 種族殺しの矢がどれくらいのDPを必要とするかわからないけど、リストにあればやがては量産できるようになるだろう。その可能性を、対象種族は恐れるに違いなかった。


 「まったく、やっかいな置き土産を残していったものっすね」

 ワタリの声が聞えた。懲罰房から戻ってきたらしい。


 「そうなんだよ、ワタリなら・・・って、誰?!」


 振り返ったその先にいたのは、蜜蜂に刺されまくって、頬をパンパンに腫らせたスノーゴブリンだった。

 「ぱんぱんまん」

 「オイラの顔は食べれないっすよ」



 解毒呪文は掛けてもらったけど、頬の腫れは時間がたたないと引かないそうなので、ワタリはそのまま会議に加わった。

 「改めてワタリにも聞くけど、ゴブリンのクランだったらどうすると思う?」


 「そうっすね。クランごと逃げ出すと思うっす」

 エルフとは真逆の意見がでた。

 「だいたい、ゴブリン種だとクロスボウ1発であの世逝きっす。わざわざ魔法の道具で狙われるのはキングぐらいっすよ」

 確かにゴブリンの集落を討伐するのに、ゴブリンスレイヤーを集めたという話は聞かないね。


 「リザードマンならやばい相手は、味方にしようとするぜ、ジャジャー」

 ベニジャからは、また違う意見がでた。


 「凄腕の用心棒みたいなもんだろ。他の部族の抑えに使えば問題ないぜ、ジャー」

 「自分達に、その力が向けられる可能性があっても?」

 「助っ人が裏切らない保証もないぜ、要は使い方次第ってわけだぜ、ジャー」

 リザードマンは、割り切った考え方をするみたいだ。


 「リスト化しちゃえばバレないっすよ」

 「聖堂騎士団あたりが神託したら、すぐに見つかるぞ」

 「良い撒き餌になるぜ、ジャー」

 「人族全体を敵に回すのは・・・」

 対策チームの会議は紛糾した・・・そして最後に僕に決定権が委ねられた。


 「「マスター、決めてください!」」


 うん、皆、面倒臭くなって丸投げしたね・・・


 「・・・よし、冒険者に押し付けよう!」




  三日月湖付近の野営地にて


 「・・生け贄の炎が4つ上がりました・・・」

 「・・どうやら先行した者は、何者かに阻まれたらしいのう」

 邪神教徒の老人が、占い師からの報告を受けて呟いた。

 

 聖堂騎士団の追撃を逃れて、昼夜を分かたず移動しつづけて、やっとここまで来た。目的の古代オーク帝国の貴族の墓は目の前だったが、先遣隊が全滅したらしい。


 「ご老人、どうしますか?」

 神官が心配そうに尋ねるが、今更引き返すことは不可能だった。


 「うむ、墳墓を避けて北へ進んでも、拠点がなければやがては野垂れ死にじゃろう。騎士団を迎え撃つにしても防御陣地が必要じゃ」

 「それではこのまま墳墓を目指すでよろしいのですね?」

 「うむ、先遣隊を阻んだ者を排除して、我らの新たな聖堂と為す、良いな!」

 「「おう!」」


 「先遣隊を倒した者は誰じゃ?」

 老人が、占い師に尋ねた。


 占い師は、邪神へと己を捧げた仲間の記憶を辿って、最後の瞬間に強く意識していた心象を拾いあげた・・


 「・・・深い穴・・骸骨の群・・すけべ親父・・5つ子・・蛙・・」


 「・・・意味わからんな・・・」

 


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