表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第8章 暗黒邪神教団編
218/478

これが奴の奥の手か

 「さて、下り階段があるってことはここが墳墓の入り口であってるんだろうが・・・出迎えがねえな」

 狩人は、クロスボウを構えながら地下への階段の様子を覗っていた。

 何もなければ入り口付近に二人のうちのどちらかが待っているだろうし、何かあったなら先住民が警戒して門番でも立たせているはずだった。


 「どちらもないのは困るんだよな・・」

 そう呟くと、ゆっくりと階段を降り始めた。


 少し下ると右側に分岐があった。だがそれよりも狩人は、分岐の角に落ちていた藁くずに目がいった。

 慎重に近づくと、罠がないのを確かめてから拾い上げる。

 「藁ねえ・・乞食女が道標に残したってことか・・」

 その藁くずは、正面の階段を下へと指していた。

 「下か・・」

 狩人は藁の導きにしたがって先へと進んだ。


 次の分岐にも藁くずが落ちていた。

 「これも正面を指してるな・・」

 左の分岐には何か巨大な物が引きずられた跡も残っていたので、素直に正面に進むことにした。


 やがて階段は小さいホールへと到達した。

 「さて、この先はどうする・・」

 部屋の中を見渡せば、正面の両開きの石扉の隙間に、藁くずが挟まっていた。

 「この奥までは行ったのか・・」

 一応、罠の確認をしてから、扉をそっと押し開いてみた。


 「いねえな・・」

 そろそろ乞食女か逃亡奴隷が、後続の為に待機していても良さそうなものだったが、扉の先の十字路にも誰もいなかった。

 大きく開いて通り抜けようとしたとき、狩人の耳が、微かな足音を捉えた。


 そっと扉を戻し、ギリギリ覗けるだけの隙間をつくって、様子を覗う。


 カシャン カシャン カシャン


 今ははっきりと聞き取れる足音は、十字路の左からこちらに近づいてくるようだった。

 息を潜めて見つめる狩人の視界に、骸骨戦士の姿が映った。

 それは剣と盾を構えたまま、真っ直ぐに十字路を左から右へと、ゆっくり歩いていった・・・


 「歩哨みたいだが、こちらには見向きもしなかったな・・・」

 動作も鈍いし、やり過ごすのは簡単そうだったが、あの二人はどこへ行ったのか・・

 そう考えて目を凝らすと、十字路の正面の扉にも藁くずが挟まっているのが見えた。


 「まだ先に行ったのかよ・・あの骸骨はやり過ごしたのか、後から湧いて出てきたのか・・」

 少し迷ったが、1体なら最悪、強行突破もできるだろうと、前へ進むことにした。

 骸骨戦士が、十分遠ざかるだけの時間を見計らって、十字路まで移動する。右の通路を覗くと、こちらに振り返った骸骨と目があった・・


 「馬鹿野郎、すぐに行き止まりじゃねえか。紛らわしい歩き方するんじゃねえ」

 言い掛かりの様な文句をつけながら、狩人は素早くクロスボウの引き鉄を引き絞った。


 ズドムッ


 重い音を立てて、骸骨戦士の革鎧をボルトが貫通した。それだけで低ランクのモンスターなら倒せるだけの威力があったが、刺突武器とスケルトンの相性が悪かったのか、骸骨戦士は盾を構えて防御体制をとった。

 「そんな木の盾で防ぎきれるとでも思ったのかよ」

 足を止めた骸骨戦士に対して、狩人は熟練の手捌きでクロスボウを連射した。


 木の盾は、ボルトを2本打ち込まれると、真っ二つに割れてしまい、次の瞬間には骸骨戦士の眉間にボルトが突き立っていた。

 崩れ落ちる骸骨を見据えながら、次弾を装填すると、狩人はホッと一息ついた・・


 「やれやれだぜ」

 再使用できそうなボルトを回収しに行こうとした、その時、背後で扉の開く音が聞えた。


 素早く振り返ると、そこには新たな骸骨戦士が盾を構えて待ち構えていた・・

 「くそったれ、限がねえぞ」

 左通路奥の新手に向けてクロスボウを構える狩人だったが、その横から声が掛けられた。


 「いや、これで詰みだ。1分たったからな」


 振り向きざまにクロスボウを撃とうとした狩人が見たものは、開いた正面扉とその奥に並ぶ骸骨軍団、そしてそれを率いる銀色の骸骨騎士だった。

 だが、引き鉄を引く前に、狩人の足場が消失していた。


 落下する瞬間に狩人は、1分の意味に気がついた・・

 「ダンジョントラップのクーリングタイムか!」



 「よし、かかった!」

 「わなわな」

 罠探知技能を持っていそうな狩人風の邪神教徒を、水牢に落とすのに成功した。

 落ちるのを防ぐ為に、両手で床の縁に掴まってくれれば目的が果たせたんだけど、そう上手く事は運ばない。そこで耐えても骸骨軍団から袋叩きに遭うと判断した狩人は、死中に活を求めてそのまま水牢に落ちていったんだ。


 「ベニジャ、行ったよ」

 「アタイの鉄砲隊に任せろって、ジャジャ」


 落とし穴のシャフトから落下してきた狩人が、水面に落ちる前にベニジャの号令が響いた。

 「一列目、発射!ジャー」

 「「ケロケロ」」

 水牢の水面で待機していた大蛙隊の前列4体が一斉に舌を伸ばして狩人の身体を絡め取った。


 「二列目、発射!ジャジャ」

 「「ケロケロ」」

 大蛙隊の中列4体が、宙釣りの狩人の武器・装備に伸びると、力ずくで剥ぎ取った。


 「三列目、発射!ジャーー」

 「「ケロケロ」」

 大蛙隊の後列4体が、狩人の両足を捕えると、一列目の大蛙は一斉に舌をゆるめた。


 急速に水面に引き寄せられた狩人を、叩きつける様に水中に引きずり込むと、素早く舌を解き放った。


 「ぜってい飲み込むなよ。飲んだら腹がパンッだからな、ジャジャ」

 沈めた狩人は水底のメンバーに任せて、ベニジャは鉄砲隊を筏の上へと避難させた。


 やがて水牢の中央付近の水面が盛り上がって、狩人が爆死したのが確認された・・


 「主殿、水底のバーン隊に損害はない。水中なら火炎耐性で完全に防げるようだ」

 「了解、お疲れ様。ミコトたちは爆圧で気絶したけど、さすがにスケルトンには肺も三半規管もないから平気だったね」

 そこにベニジャから戦利品の報告が入った。


 「大頭、大漁だぜ、ジャジャー」

 「ベニジャ達もお疲れ様。上手く武装解除できたみたいだね」

 「それなんだけど、唐獅子が妙なもの飲み込んだらしくて、具合が悪そうなんだ、ジャー」

 「ああっと、毒矢でも剥きだしで用意してたのかな・・」


 慌てて、癒しの泉に運び込もうとしたけれど、そこに寝そべっていたポチが大蛙を見て盛大に腹の虫を鳴らしたので、逃げ帰ってきた。

 「もうお腹空いたんだ・・」

 「ちゃりーん」

 「ううう、食費が・・借金が・・」


 仕方なくヘラを呼んでニコを連れて来てもらった。


 「どんな具合でしゅか?」

 ヘラが薬師として問診したが、大蛙は脂汗を流しており、かなり具合が悪そうだった。

 「このまま死んだりしねえよな、ジャジャー」

 心配するベニジャだったが、原因はお腹の中の何かだと思われた。


 「ニコに治癒してもらうでしゅ。ニコ、ゴーゴーユニキュア!」

 するとユニコーンのニコの角が白く輝き、その光が大蛙に降り注いだ。


 「ゲロッ」

 元気が出たからか、お腹につかえていた何かを勢い良く吐き出すことに成功した。

 メンバーの視線が、吐き出された物に集中する・・・


 「棒でしゅか?」

 「いや、ボルトケースだね・・でも1本しか収納できなさそうだ」

 「なんか文字が書いてあるぜ、ジャジャ」

 胃液にまみれて読み辛いが、なんとか解読できた・・


 「人族殺しの矢・・・」


 ご禁制の品だった・・・


 


 


 DPの推移

現在値 1901 DP (3013DC)

撃退:狩人(アサシンLv8) +320

残り 2221 DP (3013DC)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ