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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第8章 暗黒邪神教団編
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地獄の底まで

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 これも皆様のおかげです。ありがとうございました。

  ビスコ村聖堂騎士団邪神教徒対策本部にて


 教会の地下に造られた、懲罰房という名の牢獄に、1人の男が囚われていた。罪状は殺人未遂と邪神信仰。この場合、後の方が罪状が重いとされていた。

 男は商人を装ってビスコ村に出入りし、物資を買い付けて、どこかに送っていたらしい。その合間に、この村の聖堂騎士団の動きを見張っていたようだった。偶然に騎士団への協力者を発見したので、咄嗟に暗殺する気になったようだ。

 その試みが失敗に終わり、逆に協力者に捕縛されてここに連行されてきた。


 今も二人の聖堂騎士が、抜き身の剣を手にしながら男を見張っていた。気絶している男が、息を吹き返したら、即座に首をねる為にである・・・


 暗黒邪神教徒は、追い詰められると自分の身を生け贄にして強力な火炎の範囲呪文を発動させる。これは詠唱を必要としないスキルの1種なので、阻止するには意識を刈り取るか、殺すしかなかった。

 囚われた男が、まだ生き長らえているのは、失神した状態から、記憶を探ることが可能だからに他ならない。

 とれるだけの情報をひきずりだしたら、結局は首を刎ねられる。

 聖堂騎士団にとって、自らの欲望の為に、無垢なる人々の魂を邪神に捧げるような輩は、死刑で当然であった。冤罪だと補償が面倒なので、記憶探査は念入りに行いはするのだが・・


 「隊長、結果が出たようです」

 「うむ、黒かそれともブラックか?」

 「もちろん真っ黒でした」

 「よし、殺れ!」

 ドシュッ ドシュッ


 二つの切断音が鳴り響いて、両側から首を切られた男が絶命した。

 するとその身体から、黒い靄のようなものが噴出してきて、天井へと昇っていこうとする。

 「でたぞ!斉射3連、神の祝福!」

 「「「ブレス!」」」


 見習いパラディンの3人が、神の祝福を揃って唱えると、天井付近に溜まった黒い靄は、綺麗さっぱり消えてしまった。

 「念のためだ・・・ディテクト・エビル!」


 隊長は自ら邪悪探知のスキルを使ったが、この牢の中には最早、よこしまな存在は感知できなかった。

 「よし、任務完了だ。奴から引き出した情報は上の部屋で精査する。お前達2名はこの死体の処理をしろ。髪の毛1本さえ残さず焼却し、灰は聖水で浄化したのち、壷に封じて安置しろ。死体の一部でも残して、奴らに盗まれたなら、呪いの触媒に使われて、自分達の身に跳ね返ってくると心しろ!」

 「「はっ!」」


 焼却炉に死体を運ぶ二人の騎士を見送ったあとに、隊長は残りの部下を連れて会議室へと戻っていった。


 そこには先ほどの潜伏信者を捕獲してきた4人組の冒険者が待ちくたびれた様子で椅子に座っていた。

 だされたティーカップもとっくに空で、それなりに山盛りで供した茶菓子も一欠けらも残さず食べつくされていた。


 「待たせたようだな。お茶のお替りはいるかね?」

 一応礼儀で尋ねた騎士隊長だったが、冒険者の答えは予想に反したものだった。


 「いえ、十分にいただいたわ。さすがに5杯が限界ね」

 ギョッとして後ろの補給部隊員を見ると、恨めしそうに首を振った。

 あれは高級茶葉だったのだが・・・


 「そ、そうか、満足してくれたなら良かった・・」

 「それで、何か情報は引き出せたの?」

 精神的優位にたったビビアンが、上から目線で押し捲る。ハスキー達も、この先の安全にかかわることなので、ビビアンの突進をあえて止めなかった。


 「うむ、あの男は確かに暗黒邪神教徒だったよ。深層意識を探る呪文でうまく情報を引き出すことができた。君達のおかげだ、感謝する」

 そういって、騎士隊長は頭をさげた。


 「どういたしまして。それでどこまで探れたの? あいつの仲間とか拠点とか・・」

 ビビアンが身を乗り出して尋ねたが、ここで騎士隊長の態度が厳粛なものに変った。


 「逆に問うが、君達はどこまで知りたいかね?」

 その険しい顔つきが、ビビアン達の覚悟を尋ねていた。


 「どちらにしろ、もう目をつけられた。俺たちとしては、この地域に潜伏した奴らを根こそぎ狩り出さないと、安心して眠れないんだよ」

 ハスキーが答えた。


 「なるほど、わかった。では今回、北に逃げ込んだ連中の話だけにしようか」

 「・・それでいい」

 思ったよりも広範囲で重要な情報があったらしい事にびびりながら、ハスキーは先を促した。


 「北に潜伏しようとしたのは、『バエルの後翅』と呼ばれる暗黒邪神教団の一派だそうだ。構成メンバーは17名で、それぞれ洗礼名で呼び合っているので本名は不明だ」

 「まあ、犯罪者指定されたカルトだからな」


 「男の洗礼名は『オセ』または『商人』と呼ばれていたらしい」

 「ふん、バエルもオセも悪魔の名前よね。なにあいつら悪魔崇拝主義者なの?」

 「暗黒邪神教団だからな」

 「・・それはそうか・・」


 「オセというのが悪魔の名前なのはわかったが、商人というのは何の符丁だ?」

 スタッチが場違いなコードネームらしきものに突っ込みをいれた。


 「そこまではわからん。ただ『バエルの後翅』を率いているのが、『老人』と呼ばれる人物で、先日自爆死したのが『騎士』と呼ばれる男だとわかった」

 「騎士なのに自爆とかするなよ」

 「まったくだな、周りの迷惑も考えろと説教したくなるぞ」


 「そしてここからが本題だ。『商人』はビスコ村に潜入して食料と防寒具を大量に購入し、それを近くの廃村に隠していたらしい。どうやらそこが奴らの潜入場所で間違いない」

 「さっそく潰すのかい?」

 「もちろんだ、『商人』が自白したと悟られる前に強襲する。できれば君達も同道して欲しい」


 その要請に、4人は目の前で相談を始めた。

 「どうする?危険すぎないか?」

 「でも、手が足りなくて取り逃がすとやっかいよ」

 「特別報酬がでるならいいかもな」

 「逃げ出した奴を追跡する部隊が必要さね」

 結果、騎士団に同道することに決めた。


 「感謝する。それとこれは『商人』を捕縛してくれた礼金だ。生死不問とはいえ、死体よりも引き出せる情報が多いので生け捕りは大金星ということだ」

 そう言いながらテーブルの上に置かれた小さな袋は、ずっしりと重そうだった。


 「まかせてちょうだい、地獄の果てまで追いかけてやるから」

 「ビビアンそれフラグだ・・」

 「暗黒邪神教団だからな・・」

 「地獄はホームグラウンドてわけさね」



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