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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第8章 暗黒邪神教団編
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朝取りの早生りですが

 ノーミンが目を覚ますと、そこは藁束の中だった。

 慌てて這い出すと、周りにはモフモフたちが思い思いの格好で、寝息をたてていた。


 「ああ、昨日の夜は穴熊ファミリーにお呼ばれしただな。山盛りの藁のベッドで、ぐっすり寝れただよ・・」

 隠し芸大会の賞品として、部屋が埋まるほどの藁束を希望した穴熊ファミリーは、その寝心地を他のメンバーにもお裾分けしてくれたのだ。

 見回せば、ケンやチョビ、五郎〇とアグー、親方の身体の一部が藁の山からはみ出していた。皆まだ熟睡しているようだ。

 起こさないように、そっと抜け出そうとしたが、藁束の下にある誰かを踏んでしまった。


 「ムギュ、・・うへへ・・モフモフ・・」


 ノーミンは、モフモフに踏まれた夢を見て喜んでいる誰かさんを放置して、顔を洗いに湧き水の淵まで移動した。


 そこは、飲料水の為の湧き水と淵、それに海水を採集する為のタイドプール(潮溜り)、さらには再配置した精霊の泉(治癒精霊を呼ぶ為の湧き水と泉)が隣接して、広い水場を形成していた。

 この頃は、コアルームと3層を繋ぐ転送魔法陣を利用して、ルカやクロコが遊びに来たりしていることも多い。


 また、水場の隣にはニコの塒も用意された。穴熊の巣穴を拡張して、寝藁を敷いただけの簡易なものだが、ニコは側にヘラが居ればどこでも良いらしく、今もスヤスヤと眠っていた。

 大変なのは懐かれたヘラで、寝るときには膝枕のまま子守唄をせがまれ、その体勢で夜明かしをすることもあるらしい。慕われるのは嬉しいそうだが、足が痺れるのだけが辛いのだと言っていた。

 朝になると、ニコがキュアで治療してくれるそうだが、贅沢すぎる使い方だと思う。


 「さあて、今日も一日頑張るだ」

 冷たい水で顔を洗ってスッキリしたノーミンは、農具置き場に立ち寄ると、空の麻袋を1つ担ぐと、畑へと繰り出した。

 その頃には、起き出したケンとチョビ、それにチュンリーが付き随っていた。


 チュンリーは隠密技能持ちのグレイウルフ・ディアハンターなので、順当に進化するとシャドウウルフになる。ところがケンはウィンターウルフに進化させたいらしく、常にチュンリーを構っていた。

 だが、それを良しとしないチョビがいた。素質はシャドウウルフに適正があるのだから、進化先を捻じ曲げても悪い影響がでると思っているらしい。


 「娘の教育方針で喧嘩する夫婦みたいだべな」

 ノーミンは、チュンリーの好きな道に進めば良いと考えていた。

 「第3の進化もありうるだでな」


 畑に着くと、枝豆の収穫を始めた。

 つい先日植えたばかりの大豆だったが、プラント・グロウス(植物成長)の呪文の効き目が非常によく、あっというまに枝豆として収穫できるまでに育ってしまった。


 「ジャックと豆の木だべか・・」

 鞘の大きさなどは普通の枝豆だが、異常な成長速度は、少々食べるのに戸惑われるほどだ。まあ一度、分解・吸収してもらえば問題なくなるだろうと思い、早生りの枝豆を収穫していく。

 肉球ではうまく収穫できないケン達は、周囲を散歩がてらに警戒していた。


 麻袋に半分ほど収穫したあたりで、ケンの鋭い吼え声が聞えた。

 ノーミンは急いで麻袋を担ぐと、周囲を警戒する。その死角を護るように、いつの間にかスケア・クロウの2体が位置を変えていた。


 だが、ケンが警戒した人物は、隠れる様子もなくノーミンに近づいて挨拶してきた。


 「「おはようございます、今日も良い天気ですね」」

 そっくりな顔つきをした、人族の男女二人組だった。


 「おはようさんだ。今日も冒険かなんかだか?」

 「ですね、ビスコ村が騒がしいので、こっちまで狩りにきたとこです」

 「おや、村でなにか起きただか?」

 「ええ、聖堂騎士団が駐屯して邪神教徒狩りを始めたんです。なんでもこの地方に逃げ込んだ教徒達がいるらしくて」

 「はあー、なんかわからんだども、危ない連中がこっちにくるかも知れないってことだべ」

 「ですね、この丘に昔は邪神教徒のオークが潜んでいたという噂もありましたし、それに釣られて信徒や騎士団が押しかけてくるかもです」


 「そいつは勘弁して欲しいだ。せっかくの畑が荒らされてしまうだ」

 「ですが、どっちも話してわかる相手じゃないですし・・」

 「邪神教徒はともかく、聖堂騎士団とかも問答無用だか?」

 「嫌疑が晴れたら無法はしないでしょうけど、この丘の主の子孫だと思われると・・」

 「おいらがオークだから余計に危ないだな」

 「「ですねー」」


 「とにかく教えてくれて助かっただ。しばらく他所に逃げておくだよ」

 「それが良いかと。邪神教徒が潜り込まない様に俺たちも見張っておきますから」

 「すまないだ。これよかったら食べてくれだ。さっと湯掻いて塩を振ると美味いらしいだよ」

 そう言って、収穫したての枝豆を半分渡した。


 「なんです?これ、野菜ですか?」

 「豆の若芽だ。鞘はちょっと硬いから茹でたら中の豆だけ食べたらいいだ」

 「へー、試してみます、どうもありがとう」

 「こっちこそ、助かっただ」

 

 でわでわと手を振って、お互いに離れていった。


 ケン達が警戒を解くと、ノーミンは急いでダンジョンに戻って報告した。

 「マスター、やっかいな連中が来るらしいだよ」

 「やっかいって、どんな?」

 「暗黒邪神教団と聖堂騎士団だそうだ」

 「何その宗教戦争みたいな組み合わせは?」


 「もっと性質たちが悪いかも知れないだ・・・」

 「いあいあー」


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