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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第8章 暗黒邪神教団編
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バウンティーハンター

 「なんかいつもと感じが違うわよね?」

 ビスコ村に帰還したビビアン達を出迎えたのは、完全武装した騎士の門衛であった。


 「姓名と職業、この村に来た理由をのべよ」

 普段とはまったく違う、厳しい誰何に、4人は気後れしながらも答えた。

 「ビビアン・ルージュ、冒険者よ。この村のギルドに依頼を果した報告にもどってきたの」

 「ソニア・レッド、同じく冒険者、この4人でパーティーを組んでいるさね」

 「ハスキー・シベリアン、冒険者、用件は一緒だ」

 「スタッチ・ステッチ、冒険者、以下同文で」


 4人にしては神妙な受け答えを聞いた騎士は、何やら書類をめくって確認していると、やがてじろじろと風体を見比べ始めた。

 「冒険者4人組、いかつい大女と小さい少女、中肉中背の男が二人、服装は冒険者の装備・・・ただし身包み剥がされていること多し・・」

 4人はその報告書を書いた人物に突っ込みを入れたいのを必死にこらえたのであった。


 「よし、ギルドの帰還予定冒険者リストに書かれている者達のようだな。行って良し。ただし、村から出るときも行く先と目的の確認、荷物のチェックがあるから、そのつもりでいろ。可能なら1週間は出歩かないことだな」

 無茶なことを言われたような気がするが、今は黙って頷いておいた。とにかく受付嬢に現状を尋ねるのが先だと4人は確信していた。



 冒険者ギルドもごった返していた。

 ほとんどが、何があったのか問い詰める冒険者の集団だったが、中には気付かれない様に奥の会議室に出入りする事情通な様子の者もいた。

 4人もキョロキョロと受付嬢を探していると、1人のギルド職員が手招きしているのに気がついた。


 「・・こちらへ・・」

 他の冒険者に気取られないように、奥の部屋に案内された。

 そこには報告書の束を読みながら、複数の職員に指示を出している受付嬢の姿があった。


 「仕事をしながらで申し訳ないですが、報告を聞かせてください。あと戻る途中で街道などで聞き込んだ噂もあれば一緒に」

 「その仕事量と捌く速度を見ていると、だれがギルドマスターなのか疑いたくなるわね・・」

 「よく言われます」

 「・・そうなんだ・・」


 4人は『ゴブリンホール』での調査の顛末と、思いがけなく手に入れた新型装備の話をした。

 受付嬢は、書類を詠みながらその報告を聞き分けて、さらに質問までしてきた。


 「では、魔法反応は同一と見てよろしいのですね」

 「ええ、同じマスターではないだろうけど、なんとなくダンジョンに展開されている魔力の質を見分けられるようになったわ」

 「それは良かった。今後もダンジョンの判定をお願いすることもあるでしょう」

 「任せてちょうだい!」


 「それで俺達は少し迂回して街を通ってきたんだが、北に行くほど検問が増えて、ビスコ村ではえらい入場チェックをうけたんだが、何が起きたんだ?」

 ハスキーが受付嬢に尋ねた。


 「これから話すことは情報制限がかかっていますが、それでも聞きたいですか?」

 不穏な話に4人は顔を見合わせるが、結局は聞くことにした。


 「どっちにしろ情報がないと判断のしようがないもの。1週間、耳を塞いで宿屋で寝ていられるほど稼ぎがあるわけじゃないしね」

 「いいでしょう・・・実は南にある筍の里で自爆テロがありました」


 「それって・・まさか暗黒邪神教団かよ!」

 スタッチが驚きの声をあげた。

 「なによそれ、名前だけ聞くと危ないカルト集団みたいだけど」

 ビビアンは知らないらしかった。


 「まさに危険な違法カルトだ。信徒を名乗るだけで、即、逮捕されるぐらいの」

 「冗談でも口にできないさね」

 「今はさらに状況が悪化しています。容疑をかけられただけで、行動不能にされますから注意してください」

 「おいおい、えらいことになってるな。どうやらその連中がこの周辺に潜伏したってことか」

 ハスキーの推理に他の3人が納得した。


 「それであの警備体制に、人別帳まで用意したわけね・・・そうだ、あの冒険者の特徴、誰が書いたのよ」

 聞き逃せない一文に、ビビアンが抗議の声をあげたが、それは受付嬢に黙殺された。


 「兎に角、オークの丘がダンジョンと確認された以上、早急に対処します。貴女方も迂闊に手を出さないようにお願いします。もし必要が生じたときは、まずギルドに相談してください。審査が通れば許可が降りることもありますので」

 「やっぱり封鎖しちゃうんだ。少しもったいないわね」

 「ダンジョン及びダンジョンマスターの性質が判明するまでは、基本は監視です。ことは支部で決定できるようなものではありませんから」

 王都のギルド総本部にお伺いをたてる案件なのは間違いなかった。


 受付嬢はすぐさま必要な報告書を作成すると、ギルドの専属封筒に入れて、封蝋をほどこした。

 「これを至急、王都のギルド本部へ届けてください。極秘・至急・要受領証明です」

 そばの職員に差し出すと、受け取った女性は慌てて部屋をでていった。


 「あれってギルドマスターの認証印よね・・」

 ビビアンがポツリと呟いたが、他の3人は聞かなかったことにした。

 聞いたら後戻りできない気がしたからだった・・・



 「それで門衛の騎士が、1週間は村から出るなといっていたが、素直に従った方がいいのか?」

 ハスキーは気になっていたことを受付嬢に聞いてみた。


 「そうですね・・今、この周辺をうろついていると、かなりの確率で聖堂騎士団の職務質問をうけることになりそうです」

 「それってかなりヤバイんじゃあ」

 スタッチが、問答無用で昏倒させられる自分達を想像して、首をすくめた。


 「だが、その物騒な連中の捜査が1週間でケリがつくとは限らないんだろう?」

 ソニアは長期間、仕事を干される危険を指摘した。だいたいカルトの連中は潜伏するとしつこいのが相場だった。見ただけでは信仰はわからないから、平気な顔をして村人や冒険者に紛れ込んでることが多い。

 根絶やしにするのは無理があった。


 「確かに、何時解除されるかわからない禁足令を真に受けて、宿屋で不貞寝しているのも不健全ですし、ここはギルドの依頼を受けてみるのもよいかもしれませんよ」

 「それって、なんか騎士団とギルドにお膳立てされた気がするんだけど・・」

 ビビアンが疑いの眼差しを受付嬢に向けた。


 「聖堂騎士団はそんなまだるっこしい事はしませんね。彼らは信仰に元づいて行動しているだけで、できるならば全てを自分達で成し遂げたいでしょうから」

 「ならギルドの思惑はどうなの?」

 「業務の邪魔だからとっとと出て行って欲しい・・ですかね」

 「なるほどね」x4

 4人は受付嬢の素直な言葉に納得した。


 「それで、俺達は何をすれば良い?」

 「潜伏している暗黒邪神教団の信徒を探し出して、聖堂騎士団に通報してください」

 「それって冒険者ギルドが請け負うことなのか?」

 「騎士団の手が足りていません。土地勘もないし、リザードマンにはつっかかるし、冒険者と信徒を間違えて追い掛け回すし・・・」

 受付嬢もかなりお冠なようだった。


 「そ、そう・・大変ね・・」

 「で、依頼の報酬は?」

 「失礼、取り乱しました・・報酬は情報の精度と重要度から判断されます。が、聖堂騎士団が払ってくれるので、査定も甘いですし、通常の3倍ぐらいにはなるかと・・」

 「のったわ!」

 「おい、ビビアン・・」

 「ありがとうございます、ではこちらに依頼の詳細を書いたものがありますので、よろしければサインを・・」

 今にもサインしそうなビビアンを押さえ込みながら、ハスキーが依頼表を精査した。


 「・・・ ・・・ まあ、いいだろう。成功報酬だけなのは気になるが、新種モンスターの発見依頼だと思えば悪くはない・・」

 「危険度ランクが7もあるけど、そんなにヤバいのかい?」

 「やつら、追い詰められると自爆するからなあ・・・」

 「「「 ああ 」」」


 「なので、自分達で対処しようとせずに、居場所だけつかんだらすぐに騎士団に知らせてください」

 「でも騎士様が俺らの言うこと信じてくれるかね?」

 カルトの偽情報だって混じるだろうし、疑われるとバッサリ斬られそうだとスタッチは思った。


 「この依頼をうけた場合は、聖堂騎士団にわかるような身元証明をお渡しします。それを提示すれば問題ありません」

 「なるほど、それれならいいか」

 4人全員が納得したので、ビビアンが代表してサインを書いた。


 「期限はまず1週間、それを過ぎたら状況により延長もありえますが強制ではありません」

 「平気よ、あさってごろには見つけ出してやるんだから」

 「その自信はいったいどこからくるんだろうね」

 「ビビアンだからなー」

 「なによ、1週間もタラタラ探してられないでしょ!」

 「それはそうだが、どうやって探し出す気なんだ?」


 「それは・・ハスキーが考えるのよ」


 「「「丸投げした!!」」」



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