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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第7章 冥底湖の魔女編
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白雪家家訓

 500年ぶりに再会した親子は、感動の対面を果たして・・・いなかった。


 「イタ、イタタタ、母上、ギブですギブ」

 銀色の骸骨姿になった愛娘の頭骸骨に、アイアンクローを掛けているのが、母親のヒルデガルド。


 「砕ける、本気で砕けます、父上も笑っていないで助けて・・」

 折檻される娘を、モフモフ達に囲まれてニコニコしながら見ているのが、父親のクロス。


 ちなみに二人の騎乗してきた、ペガサスのローエングリンと、グレイシャル・ベアのポチは、通れない通路があったので別室で待機している。


 説教部屋、もとい宴会会場跡で、悲鳴をあげる娘を無表情に見据えながら、ヒルデガルドは呟いた。

 「これぐらいで壊れるほど、軟な身体に生んだ覚えはない・・」

 そう言って、さらに握力を強めた。


 「この体は以前とは別物です、母上が生んだわけでは・・ウギギギギ」

 口答えをするとさらに締め付けが強くなった。ロザリオの顔から血の気が引いて、銀色から蒼白に顔色が変わっていく。

 さすがに見かねたクロスが声をかけた。

 「もうそれぐらいで勘弁してあげたら?ロザリオも反省しているみたいだし」


 だが、ヒルデガルドは納得していないようだった。

 「馬鹿娘は反省などしていない・・」

 「してます、してます、家宝のミスリルの武具を勝手に持ち出したことは反省してます・・イタタタ」


 「そんな事は私もよくやった、問題ない」

 「いやいやヒルダ、そこは問題にしないとまずいでしょう。というか君も良く持ち出してたんだ。ご両親の苦労が目に見えるようだね」


 「では、500年連絡しなかったことでしょうか?それならば不可抗力でして、私には自力で報告する手段がなく・・・あ、マジでヤバイかも・・」

 ギリギリと万力のような握力で締め上げられたコメカミから、ピシピシと破滅の音が響いてきた。


 「便りが無いのは元気な証拠だ。心配などしていない」

 「そこは少しは心配しようよ。僕はあちこち捜しに行ったよ、ポチの散歩のついでだったけど」

 案外、家族愛は薄いようだ・・


 「馬鹿娘が反省すべきなのは、ハイランドオークなぞに負けて囚われたことだ」

 「ああ、なるほどね」

 クロスは納得したが、ロザリオは聞いていなかった。

 なぜなら白目を剥いて口から泡を吐きながら気絶していたからである・・・


 「ごんぐー」

 「1ラウンド2分30秒、決め技はアイアンクローだったね」


 扉の影から様子をうかがっていた僕とコアを見つけて、父親のクロスさんが手招きしてきた。

 「突然お邪魔して挨拶もまだでしたね。僕がロザリオの父、クロス・スノーホワイトです。そして隣が妻のヒルデガルド・スノーホワイトです、よろしくね」

 「ヒルダで良い」


 丁寧な挨拶をしてくれたクロスさんに比べて、ヒルダさんはぶっきら棒もいいところだった。

 「始めまして、このダンジョンのマスターです。そして相棒のコアです」

 「こあこあ」


 「いやあ、実際にお会いするまでは半信半疑でしたけど、本当に実在するんですね、ダンジョンマスター。僕もそれなりに生きてきましたけど、会うのも話しをするのも初めてで、少し興奮してますよ、ハハハハ」

 「思ったより普通だな」


 うん、なんだろう。クロスさんは社交的で会話にそつがないけど、ヒルダさんは直球だね。

 「そうですか、僕はつい最近ここに来たばかりなので、この地方でダンジョンがどういう扱いなのかも良く知らないんです」


 「だよね、ここにダンジョンが存在するなんて、ついぞ聞いたためしが無かったもの。で、あれかな、ダンジョンを拡張しているときに、うちの娘を発掘してくれたのかな?」

 発掘って・・まあ似たようなものだけれども。

 僕はロザリオを眷属にした状況を、二人に話した。

 本人はまだ気絶したまま床に転がされていたけれど・・


 「そうだったのか・・すでに死んでいた娘の魂を甦らしてくれたのだね・・感謝するよ・・こんなにモフモフがいる場所で暮らせるならロザリオも本望だろう」

 え?感謝するのはそこですか?

 いや、別に感謝されたいわけじゃないんですけど、なんか違うというかずれてるというか・・


 「うむ、肉体の衰えを気にせず修行できるのは良いな」

 ヒルダさんも、娘さんがこんな姿になったことにまったく頓着していないですよね。


 「そうだ、僕が死んだらここで守護者にしてもらおうかな。なにせエルフの里にはモフモフ成分が希薄で息苦しいんだよね。もちろん僕の育てたポチやタマやミケは連れてくるよ。だって彼らは家族同然だからね」

 「それは名案だな。私もここで修行を続けよう」


 いやいや勝手に老後の移住先にしないでください。ロザリオが眷属化できたのも偶然なんですから。

 しかもいつの間にか意識を回復した本人が、寝たふりをしながら、断れ断れと合図を送ってきてるし。


 「ふん、気配が駄々漏れだ、未熟者」

 あ、ヒルダさんにばれて容赦なく踏まれた。

 「ベキョ」


 「ごんぐー」

 「2本目は2ラウンド1分15秒、決め技はストンピングです」


 「久々に親子のスキンシップができて、ヒルダも嬉しそうだね。来た甲斐があったというものだよ」

 あれがスキンシップなんだ・・恐るべしスノーホワイト家・・・


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