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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第7章 冥底湖の魔女編
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最後の部屋で待つ敵は

 オババ陣営 探索再開から16:10


 「急げ、だいぶ時間をロスした。もうギリギリのはずだ」

 キャスターが落とし穴の底から上がってくると、焦ったように言った。


 ランサーと二人で、大理石の扉の前に立つと、鍵となる石版を当てはめていく。3つの石版を押し当てるレリーフは、星と太陽と三日月。

 それぞれ両扉の右上端、中央下、左上端に見つかった。


 「これを一斉に押し当てれば扉は開くはずだ!」

 「・・どうやって?・・」

 「どうって、両手で・・・足をつかって・・・畜生、届かない!」


 もともと3人で開ける造りなのか、左右の上端も背伸びをしなければ届かない位置にあり、1人で二つは体勢的に無理だった・・・


 「これはレギュレーション違反なのではないか?」

 3人いなければ開かない扉は、突破不可能なダンジョンに該当するとキャスターは憤慨する。

 だが、ランサーは首を振った。


 「・・もともと6人で入れるのを4人に絞ったのはこちらだ・・」

 「・・そうだな、途中で増援も受けられたわけだし、分散したのは我々のミスか」


 「・・召喚という方法もある・・」

 「だが、私もランサーも召喚呪文は無かったはずだ」

 「・・メイジハンドなら・・」

 「それだ!」



 左右の石版を2人で押さえて、中央の石版をランサーがメイジハンドで運ぶ。メイジハンドのコントロールに微妙な調整が必要だが、何回かトライすれば成功しそうだった。

 何も邪魔が入らなければ・・・


 それは地響きと扉の開く音で始まった・・


 「・・誰かが1枚目の扉を開けた・・」

 「セイバーかな?」

 「・・・・」


 すぐに2度目の地響きが聞えてきた。


 「セイバーとアーチャーが同時に作動させた?」

 だが、二人だけでは、ここまで合流できないはずだった。

 「・・キャスターはこの仕掛け扉が開いたら中に入れ・・」

 「ランサーは残るのか?」

 「・・3枚目は二人なら開かない。もし開いたら・・」

 「敵か」


 焦る気持ちを落ち着かせながら、メイジハンドで中央の石版を押し当てるのに成功した。大理石の扉が、ゆっくりと手前に開いていく。


 それと同時に3つめの石扉が、音をたてて開きだした。


 「・・キャスター行け!・・」

 ランサーは、階段の踊り場まで駆け上がると、上から来る敵に呪文を唱え始める。

 「ランサー、死ぬなよ!」

 キャスターは石の扉が開ききる前に、大理石の扉の奥へと姿を消した。



 何が来るのか・・どちらにしろ3つのプレートを稼動させたということは、あの二人は排除されたということだ。

 「・・かたきは獲らせて貰う・・」

 半開きの石扉の奥に、盾を構える人影が見えた。セイバーでないことを瞬時に判断すると、得意の呪文を解き放つ。

 「・・くらえ、ファイアー・ランス!」


 第7階位の火炎系単体攻撃呪文が、敵の守護者に向かって飛翔する。

 咄嗟に盾で身体を隠すが、炎の槍はそれすらも貫通して敵本体に直撃した。

 はじけ飛ぶ炎で目が眩むが、敵はまだ、ゆっくりと接近してくるようだ。


 「・・何発耐えられるかな・・」

 ランサーは容赦なくファイアー・ランスを連射する。3発目で、ついに守護者が崩れ落ちた。


 「・・セイバーと同等の守護者か・・」

 ファイアーランスを2発は耐え切った相手に驚きながら、ランサーはキャスターの増援に行く為に階段を降りようとした。


 その背中目掛けて、白い影が躍りかかる。


 「グアッ、いつの間に!・・」

 ランサーの延髄に牙を立てた冬狼が、身体を錐もみさせて骨ごと食いちぎった。


 「・・けはっ・・」

 体重をかけて押し倒したランサーを放っておいて、冬狼はキャスターを追って奥に走ろうする。

 「・・見くびるな・・」

 大ダメージのショックから抜け切れないランサーではあったが、震える指を持ち上げて、呪文を唱え始めた。

 冬狼は危険を感じて飛び退ったが、ランサーの狙いは別にあった。


 「・・扉よ、錠を下ろして敵を阻め、・・ウィザード・ロック(魔術師の施錠)・・」

 その言葉とともに、大理石の扉が勢い良く閉じた。


 「・・キャスター、あとは頼んだ・・」


 目の前に、扉を閉ざされて怒り狂った冬狼が立ちはだかっていた。この近距離では呪文を唱えるそばから、噛み付かれてキャンセルされていまうだろう。


 ランサーは諦めて目を閉じた・・・



 その頃、キャスターは、ダミーコアルームに侵入することに成功していた。

 9マスの普通の部屋は、中央に黒いオーブの置かれた台座があるだけで、他に何もいない・・


 「どういうことだ、ガーディアンが1人もいないとは・・」

 DPを節約するにしても、最後の部屋ぐらいは守り手を配置するはずだった。なにより、終了のアナウンスがない。

 「まさか、ここもブラフなのか?」

 しかし、ファインド・ザ・パスの光は、この部屋に入ったときに目的を達成して消滅した。だとしたらここが目指したダミーコアルームで間違いないはずだ。


 「透明化しているのか・・」

 周囲を慎重に見回すと、・・・いた。


 台座の影に隠れて、1匹のバッタが・・・


 「なんでバッタ?」

 疑問に思いながらも、メイスで叩き潰してみた。

 だが、それでは占有条件を満たさなかったらしい。 

 よくよく目を凝らすと、天井や壁のあちこちにバッタが止まっているのが見えた。


 「あれを、全部倒しきらないといけないのか・・・」

 メイスで1匹ずつ潰す労力を考えて、キャスターはめまいがした。


 「誰だ、こんな陰険なガーディアンを配置した奴は!」





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