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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第1章 サバイバル編
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餓狼伝説

 遠くから犬の遠吠えが聞こえてきた。だがそれは飼いならされた犬にはない、野生の闘争心を帯びている、狼の遠吠えだ。

 「しまった、肉の焼ける臭いに敏感な奴らがいたんだ」

 僕らは慌てて柵の後ろに身を寄せ合うと、外の気配をうかがった。

 遠吠えはダンジョンを取り囲むように木霊していて、どちらから侵入してくるか判断できない。

 穴熊の巣穴は通路は広げてあるけど、出口はそのままなので狼なら入ってこれないはず。だとすれば侵入経路は正面通路か、縦貫トンネルのどちらかになるね。縦貫トンネルは40mあるから侵入してからでもコアの警報が間に合うし、出口には落とし穴もある。無防備なのは正面通路だ。天井までの高さが90cmだから、二足歩行のモンスターは嫌がって入ってこないだろうと、たかをくくっていたんだけれど、狼にはなんの障害にもならない。

 扉や柵で塞いでしまう手もあるんだけど、せっかくのお客様なんだし、おもてなししないとね。

 「というわけで、コア、柵1を3つ設置してコアルームの台座を柵で囲んで」  「ん」

 「さらに正面通路からコアルームに入った床の中央に罠2-4を設置、射出口は左の壁」 「ん」

 「やんまー以下大人組4名はコアの指示に従って掘削移動、残りは台座の側で待機して」

 「ん」 「キュキュ」 「ギュギュ」

 僕は柵の内側で台座を背にしながら、まだ熱い軍曹を構えて狼の出方をうかがった。

 奴らの鋭い嗅覚をもってすれば、肉の焼ける臭いにまじって、猪や穴熊、そして人間がこの洞窟のなかに

いたことがわかるはずだ。火を使っているから人間は生きているが、獣の血の臭いがするから猪は死んでる

と考えるはず。穴熊は猪に追い出されたか、人間に狩られただろうから、人間だけを倒せば、猪の肉も人間の肉も手に入る・・・そう思うに違いない。

 やがて正面通路からヘッヘッヘッという呼吸音とともに灰色の狼が1頭、現れた。

 カチッ ブシュブシュブシュッ  

 狼にとっては右側の壁から、6本の矢が瞬時に飛来し、そのうち4本が胴体に突き刺さった。

「ギャイン」 一声吼えて斥侯役だったらしい狼は絶命した。

「コア、すぐに吸収」 「ん」

 狼の死体を吸収すると、その場に4本の矢が残った。

「命中した矢は実体で残るのか。これで矢の補給ってできるのかな?」 「ん~?」

 コアにもわからないらしい。あとで検証しないとね。

 しばらくは警戒して狼の後続は現れなかったが、こちらが油断したころあいを見計らって、3頭が一塊に飛び込んできた。だが狼にとって不幸な事に、時間を置いた為に罠がリセットされていた。

 カチッ ブシュブシュブシュッ

 団子状態の狼達に容赦なく6本の矢が降り注ぐ。運悪く右側に飛び込んだ1頭は3本の矢に貫かれ、瀕死状態で倒れた。真ん中の1頭も逃げ場がなくて2本刺さっている。左に飛び込んだ1頭は無傷だったが、そのまま邪魔な柵を回り込もうと縦貫トンネルの方へ移動してしまう。

 カチッ 「バウ?」 ドサッ グサグサッ

 痛い落とし穴に落ちた狼は、首筋を槍で貫かれて絶命した。

 1頭だけ生き残った手負いの狼は、血を流しながら正面通路に戻るけど、逃がさないよ。

 「コア、やんまー達に迎撃指令を!」 「ん」

 すると正面通路の両脇の壁がごそりと崩れて、4体の死神部隊が姿を現した。

 巣穴に誘い込まれて手傷を負った猟犬は怒りの穴熊に蹂躙されたのだった。

 「よし、みんな完璧だ。死体は全て吸収して、やんまー達は一旦退避。同じ手は通じないものと考えよう」 「ん」 「ギュギュ」

 

 これで4頭倒した。小さい群なら半数も帰ってこなければ退却するはずなんだけど、まだ遠吠えはダンジョンを囲んでいる。強気のリーダーを含めて15-20頭ぐらいの大きな群なのかな。それともよほど餓えているのかだね。次は物量で押してくるのか、裏から侵入するのか。

 どちらにしろ今のうちに迎撃準備をしとこう。

 「コア、群体を2つ召喚。それぞれ正面通路と縦貫トンネルの手前に縦長に天井に配置」 「ん」

 「さらに縦貫トンネルの群体待機のエリアの真ん中に罠1-5を設置」 「ん」

 「あとは・・」  「あ!」  もう来たのか、大分あせっているみたいだね。

 今度は縦貫トンネルの方から侵入してきた。損害覚悟で6頭が突進してくる。

 「コア、先頭がエリアに到達しだい、群体で攪乱開始」 「ん」

 狼達はかなりの速度で疾走してきたけど、目の前で突然バッタの嵐が吹き荒れたので、とっさに速度を緩めた。

 カチッ 「バウーーー」「バウバウーー」 先頭の2頭が続けざまに深くて痛い落とし穴に墜ちた。

 後続の狼達は何かが危険だと察知はしたが、バッタのせいで正確な判断ができずにいた。結果、さらに1頭が穴に落下、2頭は一時撤退、最後の1頭だけ根性で群体を突き抜けてコアルームに侵入してきた。

 けどね、

 カチッ 「バウ?」 ドサッ グサグサグサッ

 そこには痛い落とし穴があるのですよ。

 「今の刺さり方めちゃくちゃ痛そう」 「ん」

 

 僕らの注意が縦貫トンネルに向いたその瞬間、暴風のように何かが正面通路から突っ込んできた。

 「ぴゃ!」 「キュー!」 「うわっ!」

 9mの通路を瞬時に駆け抜けたそれは、コアの警報とほぼ同時にコアルームへ侵入していた。

 カチッ シュタッ  ドシュドシュドシュッ 

 矢の嵐の罠は発動したが、飛来する矢よりも速く、巨大な灰色狼は柵を飛び越えて反対側に着地していた。さらにその場で木の柵をバリバリ噛み砕き始める。

 「こ、こいつがリーダーか!コア、罠2-5をこいつの下に設置!!」

 「んん!」

 しまった、侵入者がダンジョンにいると設置ができないのか。

 みるみるうちに巨大狼は柵に大穴を開けると、首を突っ込んできた。肩が突っかかって全身は入り込めないが、生臭い吐息が吹き付けてくる。

 逃げ惑う親方達。やんぼー、まーぼーは既に死んだ振りをしている。

 僕は軍曹を盾にしながら声を張り上げた。

「コア、ワイルド・ボアを召喚!ぶちかませ五郎〇!!」  「ん!!」

 

 コアルームの隅に銀色の魔方陣が浮かび上がると、その中から巨大な猪が姿を現した。召喚された猪は何かに祈るように地面に牙を触れさせると、爆発するような突進をしかけた。

 巨大狼は突然現れた強敵に瞬時に反応しようとしたが、柵に首を突っ込んでいたためにコンマ数秒回避が遅れた。その結果、巨大猪のタックルがクリーンヒットし、狼は壊れかけた柵ごと宙に舞った。

 「狼って空を飛べるんだ・・・」  「ん?」

 お約束をつぶやいてみたけど、コアにはまだ難しかったようだ。

 「ギャイイン」 折れた柵の破片とともに壁に打ち付けられた巨大狼は、運悪く急所を破片に貫かれ、ほどなくして絶命した。リーダーを失った餓狼の群は、散り散りになって逃げ出していった。


召喚リストその5

グレイウルフ:灰色狼

種族:獣 召喚ランク2 召喚コスト 40

HP12 MP3 攻撃力8 防御力2

技能:追跡、嗅覚

特殊技能:集団戦闘

備考:リーダーが統率していると攻/防に+1


DPの推移

現在値 37

設置柵:丈夫な木の柵x3、-15DP

設置罠:踏むと矢の嵐  -20DP

吸収:狼4体  +80DP

召喚:群体x2  -10DP

設置罠:痛くて深い落とし穴  -25DP

召喚:猪  -40DP

撃退:狼11体  +220DP

残り 227DP

吸収していない死体:狼5体は次回

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