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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第7章 冥底湖の魔女編
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モフモフ愚連隊

 オババ陣営 探索チーム侵入から25:30


 「よし、セイバー、作動させてくれ!」

 セーフティールームにいるキャスターが階下で準備しているセイバーに声を掛けた。

 返事は聞き取れなかったが、南側の階段下に待機していたアーチャーからは報告が聞えた。


 「よし、扉が開き始めたぜ。光はどうだ?」

 「まだ南を指している。奥はどうなっている?」

 「部屋じゃなくて下り階段だな。突き当たりは扉っぽいが、踊り場に宝箱が置いてあるぜ」

 その会話中に、西の階段の天井から巨岩が地響きを立てて落下すると、セイバーの方へ転がっていった。


 「まあ、この音で巨岩が接近してるのはわかるだろう」

 キャスターは、セイバーがちゃんと回避してくれることを祈りつつ、転がる大岩を見送った。


 南階段の下では、アーチャーとランサーが手前に開いた石の両扉をすり抜けて、宝箱を観察していた。

 「・・魔法反応はない・・」

 「あいよ、罠はありそうだが、鍵が合えば発動しないタイプだな。それでは・・」

 西階段の奥で拾った青銅の鍵を試してみると、カチャリという音とともに錠が外れた。


 「おっ、素直に開いたぜ。お宝拝見としゃれこもうか」

 慎重に蓋を引き上げると、箱の中にはガラクタが入っていた。

 「うぜえ、ダミーだらけじゃねえか」

 西階段の踊り場がそうであったように、初心者冒険者の装備品セットとでも呼ぶべき雑貨が、納められていた。中身を漁ると、丸い円盤状の石版と四角い石版は出てきたが、鍵は見当たらない。


 「キャスターちょっと降りてきて・・おいおい、扉が閉まるぞ!」

 振り向いたアーチャーの先で、ゆっくりと扉が閉まり始めていた。慌ててランサーと一緒に階段を駆け上がる。ギリギリですり抜けると、一息ついた。


 「ほぼ1分間しか開いてねえな。やっかいだぜ、まったく」

 「・・こちらからは開かないのか?・・」

 「ちょっと無理っぽいな、構造からすると手前にしか開かない。閉まると手掛りも取っ手もない、まっさらな石の扉だぜ」

 「・・ノックのの呪文ならどうだ?・・」

 「そいつは・・いけるかも知れねえな」

 「・・試してみよう・・ノック(開錠)!」

 「あっ、馬鹿、やめ・・」


 アーチャーが止める間もなく、ランサーの呪文が発動した。

 石の扉は、力ある言葉に従って、ゆっくりと手前に開き始めたが、それと同時にどこかで重たいものが落下する音がした。

 「「あっ」」


 「へぶしっ」

 運悪く、西階段で登攀の訓練をしていた、誰かが巻き込まれてようだった。


 「・・怖ろしい罠だった・・」

 「お前、それで済むと・・いや、そうだな、そういうことにしておいた方が良さそうだぜ」

 セイバーに真実がばれれば、止めなかった自分にも火の粉がふりかかる。そう判断してアーチャーは、二重の罠があったことにした。


 状況のつかめないキャスターを無理やり呼び寄せると、宝箱の中をチェックしてもらう。

 「石版は丸い方しか使わないようだな。あと空に見せかけた小袋の中に鉄の鍵が入っていた」

 「うっかり見落としたら、鍵を探して右往左往だな」

 「光は上を指すようになった。戻ろう」

 3人でセーフティールームに戻りながら、今後を話す。


 「ランサーの呪文で、からくり扉も無理やり開くんだから、このまま南下するのも手だぜ」

 「鍵と奇妙な石版はどうする?」

 「ちっ、そうか、そうだよな。そんな単純な手で突破できるようには造ってねえだろうなあ」

 セーフティールームで、泥まみれになったセイバーと合流すると、この先の打ち合わせをする。

 キャスターに治癒呪文をかけてもらいながら、にらみつけるセイバーの視線を、二人はそ知らぬ顔でやりすごす。


 「配置換えを希望する!」

 セイバーの宣言に、負い目のあるランサーが頷いた。

 「・・わかった、アーチャーが適任だ・・」

 「おい!」

 「そうだな、アーチャーなら私のように坂を登るのに苦労はしないだろう。鍵を開けるのはまかせておけ、罠が発動しても耐えればいいのだからな、あの巨岩のように」

 「ちぇ、どうなっても知らねえぜ」

 「まあ、今までの探索で要領は掴めたはずだ。分担して進めていくぞ、もう時間がない」

 キャスターの指示で4人は一斉に動き出した。確かにもうすぐ30分を経過する。増援を頼むにも、敵ガーディアンの戦力さえ不明だ。

 もしかしたらガーディアンは居ないのかも知れない。そんな気さえする4人であった。



 モフモフ陣営 敵侵入から28:14


 「大丈夫、ちゃんと防衛メンバーは配置してあるから」

 「主殿、独り言か?」

 「皆が心配してるかと思ってね」

 「確かにな、私も果たして出番があるのか心配になってきたぞ」

 ロザリオの心配はもっともだよね。まあ、ポイントの都合で、希望者を全員、転送することは不可能だし、あきらめてもうらう可能性も・・・


 「うっ」

 視線を感じて後ろを振り返ると、そこには完全武装して出発を待つ、メンバーの長い列が出来上がっていた。

 「新人のエルフ兵士Bが選抜されたのでな、リザードマンの下っ端までチャンスありと思って参加表明してきたぞ」

 「・・すごい人数だね・・」

 「さあ、主殿、こちらの準備は万全だ。いつでもいけるぞ」

 「「ウィーース」」


 これで、このままバトルが終了したら、暴動が起きそうなんですけど・・



 『探索チームの再転送可能時間まで、あと1分ですわ。召喚・転送には3分間のインターバルが与えられますから、その間に、先の探索チームと情報交換をして、増援する眷族を決定してくださいませ。それを過ぎると、再び30分経過するまでは、探索チームを送り込むことはできなくなりましてよ』


 「姫」のアナウンスが流れてきた。こちらの残りポイントは1000ちょっと。それで相手の防衛ダンジョンを突破する必要がある。ロザリオやベニジャを送り込むと、固定武装の追加ポイントまでかかるしどうしようか。先発部隊と同じように汎用武装で戦ってもらうしかないのかも。


 「マスター様、少々お時間よろしいですか?ジャー」

 「ハクジャ、手短にね」

 「はい、以前、元のダンジョンでバトルを挑んできた者が、裏技を使ってきまして、ジャジャ」

 「裏技?」

 「固定武装を・・・」

 「それ、ありなんだ・・・」

 「特に罰則もなく・・」

 「よし、やってみよう。成功すればポイントの大幅な節約になるからね」

 「仰せのままに、ジャー」


 『時間ですわ。ただいまより3分間の作戦タイムに入ります』

 


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