お前のことは忘れない
投稿が遅くなりました。申し訳ございません。
モフモフ陣営 探索チーム侵入から15:37
「敵、4体、スケルトン・アーチャーっす!」
「グドン、出番だべ」
「オデ、前でる」
十字路の左は、また1マス部屋で終わっていたので、右の扉をこっそり開けてみた。
そこは奥に続く長い廊下で、右側に4つの小部屋が跳び跳びに並んでいて、そこから1体ずつ、骸骨弓士が現れた。
盾を構えて前進するグドン目掛けて、骸骨弓士から放たれた矢の雨が降り注ぐ。そのほとんどを丸盾で防ぎきったが、何本かが肩のあたりに突き刺さった。
「いだい、けど、いだくねえ」
やせ我慢するグドンにノーミンが防御呪文をかける。
「バーク・スキン(樹皮の守り)!」
付与された防御力により、クリティカルでもでないかぎり、矢を弾けるようになった。
「お返しだで」
グドンが戦斧を振るって骸骨弓士を切り倒していった。
「耐久力無いから、ランク低いっすね」
グドンの巨体を弾除けにして、ワタリが取りこぼした敵兵士に、松明で止めを刺している。どうやら基本はランク1のスケルトンのアーチャー・カスタムのようだ。
「それにしては、矢の勢いが強かっただ」
「たぶん、ダンジョンコアの戦闘修正が高いっすよ」
以前に、自分達が戦っていたときも、コアの戦闘修正が在るのと無いのとでは全然違った。オババとやらの戦闘能力は知らないが、コアLVは敵の方が格段に上であろう。
「罠の破壊力も上昇してるはずっす」
ワタリの忠告に、他のメンバーは真剣に頷いた。
やがてグドンが、最後の骸骨弓士を破壊して、この長い廊下を制圧した。
廊下の奥には石の扉があったが、4つの小部屋には何も置かれていなかった。
「キュキュ」
「扉の向こうは、部屋で、音は何もしないそうです」
毒の探知呪文でも反応がなかったので、再び、ワタリがそっと扉を押し開いた。
するとそこは、がらんとした9マス部屋で、部屋の奥に宝箱が置かれていた。
「怪しいっすね」
「怪しいだな」
「あやしぃでしゅ」
ヘラが毒探知の呪文を掛けると、あからさまに反応があった。
「毒針のようでしゅ」
毒の反応は、宝箱の蓋を閉じている金具の裏に小さくあるらしい。開けようとすると、毒針が指を刺すタイプの罠だと推測できた。
「ワタリは、罠解除はできるだか?」
「無理っすね。技能ないので、ほぼ失敗するっすよ」
「オデ、アケル?」
グドンが漢解除をするか聞いてきたが、ノーミンは首を振った。
「今んとこ必要な鍵は無いだで、無視するべ」
そう言って、部屋に他に何もないのを確認すると、十字路まで退却した。
オババ陣営 敵侵入から20:02
「えらく慎重な奴らだねえ。蛙の間には入らないし、囮の罠宝箱には手を出さない」
もっと積極的に飛び込んできて、罠の一つぐらいには掛かると思っていたけど、当てが外れた。しかし、敵の探索チームに損害を出していないとはいえ、時間稼ぎとしては当初の目標を達成していた。
問題は、こちらの探索チームが未だに敵の防衛ダンジョンをクリアできていないことだ。
「戦力も能力も十分だろうに、いったい何に手間取ってるんだろうね、あの4体は・・」
オババの目論見では、最初の増援タイムが来るまでには決着がついているはずだった。それだけのリソースをつぎ込んで攻略チームを送り込んだ。その結果、防衛ダンジョンが手薄になったが、30分持てばこちらの勝ちだと割り切っていたのだ。
残りのDPは、150もない。今更防衛ダンジョンを補強するにも、時間稼ぎに雑魚モンスターを送り込むぐらいしかできなかった。
「いったいどんな裏技使って、うちの骸骨守護者を足止めしてるんじゃろうか・・」
オババはここにきて、始めて不安を覚えた。
オババ陣営 探索チーム侵入から20:54
「急げ、セイバー、巨岩がせまってるぞ!」
「くっ、足元がすべって上手く登れん」
「セイバーーー」
ゴロゴロゴロ
「へぶしっ」
すでに二人の被害者がでていた。
あの後、巨岩が動きを止めるまで待ってから、全員が坂を昇りきるには時間が足りないことがわかった。
仕方なく、巨岩が1度通り過ぎたところで、駆け上ることに挑戦したが、岩に押し固められた土の坂が思ったよりも登り辛かったのだ。
最初は、ランサーが転んで、戻ってきた岩の下敷きになった。
不幸中の幸いに、下が地面だったこともあり、軽傷ですんだが、次は殿を買って出たセイバーが間に合わなかった。
頭に血が上ったセイバーは、今度はせまりくる巨岩の正面に立ちはだかる。
「奥義、フォートレス(要塞化)!」
大型モンスターの突進を止める為のスキルを発動させたのだ。
ゴロゴロゴロ パカアーーン
「へぶしっ」
足場が柔らかすぎて、弾き飛ばされていた・・・
「もう無理だ、他のルートを捜しだそう」
キャスターが、聖なる道程を無視することを提案した。
「ここまでやって、引き下がれるか」
意地になったセイバーが怒鳴り声をあげた。
「けどよー、実際のとこ、時間はかかるし、無駄な怪我は負うし、いいことないぜ?」
登攀技能をもつアーチャーは、坂を苦にしないので、上から目線で忠告をする。
「煩い、私に構わず先に行け!」
「「「なるほど、それだ!」」」
「えっ、ウソでしょ?本当に置いてきぼり?」
セイバーは、坂を駆け上がっていく仲間の背中を呆然と見送っていた・・




