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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第7章 冥底湖の魔女編
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壁に耳あり、障子にメアリー

 モフモフ陣営 探索チーム侵入から00:15


 「皆、無事だか?」

 チームリーダーのノーミンが、周囲のメンバーに安否をたずねた。


 「へっちゃらっす」

 「オデ、いる」

 「ヘラでしゅ。大丈夫でしゅ」

 「キュキュ」

 「問題ないであります」

 残りの5人が返事をして、無事を伝えた。


 「兵士Bさんは、名前なんだべ?」

 「はっ、本名はテオド-ルでありますが、Bでもテオでもお好きなように呼んでください」

 「そしたら、テオって呼ぶだよ」

 「キュキュ」


 探索チ-ムが召喚されたのは、コアルームと同じサイズの四角い部屋で、4方に石の扉がついていた。

 「セーフティールームはいじれないって聞いたっすけど、扉は付けられるすかね?」

 ワタリが特徴のない石扉を見渡しながら、呟いた。


 「キュキュキュ」

 「親方によると、扉は壁1枚分、へこんでいるそうです」

 もともと地下トンネルの中を、獲物を捜して徘徊するために発達したアースソナーの技能は、エキドナに進化した親方にかかれば、ダンジョンの空間把握もできるようになっている。

 注意しなければわからない扉のずれも、土木建築のプロフェッショナルには、あきらかな歪みに見えるのだろう。親方が共通語を話せれば、

 「べらんめえ、手抜き仕事しやがって」

 ぐらい言いそうであった。


 「なるほどっす、部屋と廊下の境界線上ではなく、廊下側に扉をつくったっすね」

 「だとしゅると、扉に罠があるかもでしゅ」

 セーフティールームには罠は設置できない、けれどそこから拡張された廊下には可能だ。もちろん廊下に設置された石の扉にも罠は仕掛けることができる。


 「さて、どこから行くだべか」

 ノーミンが迷っていると、親方が鳴いた。


 「キュキュキュ」

 「一つ以外は、1マスで行き止まりだそうです。その扉だけ、奥が長い廊下になってるみたいだと」

 親方のアースソナーは、石の扉越しでも5mは空間把握が可能だ。これが木の扉なら10mは探知できる。

 「3方向が1マスで行き止まりなら、残りが本命っすね。親方、この扉の向こうには動く奴等はいないっすよね」

 親方は、ギリギリまで扉に近づくと、向こう側の気配を探っている。


 「キュキュ」

 「大丈夫だそうです」

 「なら開けるっすよ、後ろに下がって欲しいっす」

 ワタリの警告でメンバー4人は後方に下がったが、グドンは戦斧とラウンドシールドを構えて、扉の正面に立った。


 「そこだと罠があったら巻き込まれるっすよ」

 「オデ、敵から皆、守る」

 どうやら遠くからの射撃や、突撃してくる敵がいたら、立ち塞がるつもりのようだ。


 「了解っす、頼りにしてるっすよ」

 そう一声掛けて、ワタリは石の扉を押し開いた。


 割と、すんなり開いた扉の向こうには十字路が繋がっていて、正面にはやはり、石の扉が見えた。

 「キュキュ」

 「動体反応ないそうです」

 もちろんアースソナーでは、身動きしない魔物と置物の区別はつかない。ただアンデッドやリビング・ドール系のモンスターでない限り、呼吸音や足踏みの音で探知が可能だ。


 「ヘラ、頼むだよ」

 「はい、でしゅ」

 リーダーに指示されて、ヘラがディテクト・アーストラップの呪文を掛けた。

 

 「正面、十字路の中央の床に罠がありましゅ」

 「基本に忠実っすね」

 オーク男爵の遺跡でも、あの位置に落とし穴があった。一昔前は流行ったのだろう。

 ヘラの集中が切れる前に、ワタリが気配を隠して十字路の左右を覗きに行った。安全が確認されると、グドンが片手で抱きかかえて、ヘラを移動させる。

 十字路の左右の床には罠が無いことを確かめて、呪文を取りやめた。


 「あのう、わたしゅぃの呪文では床の罠しゅぃか見破れないでしゅよ?」

 「高Lvの罠探知技能持ちがいないので、仕方ないっす。落とし穴と毒針だけ避けられれば大丈夫っす」

 「はあ」

 「マスターが言うには、オババは罠よりも眷属を召喚して防衛するタイプだろうから、罠探知に時間をかけない方針でいいらしいっすよ」

 ワタリはしゃべりながら、十字路の落とし穴の周囲に炭で黒線を引いていた。

 「ここは踏んじゃダメっすよ」


 おっかなびっくりで、罠を避けて進むと、正面の扉の前まで移動できた。

 「左右にも扉があるっすね」

 横切った左右の通路の奥にも石の扉が存在していたが、まずは正面から調べてみる。


 扉なので、今度はディテクト・ポイズンの呪文だ。これは元々、野外で採集した木の実やキノコに毒がないか調べる術だが、食事に毒が盛られていないかや、毒蛇や毒蜘蛛の判別、そして毒を使った罠の探知にも役立つ。

 「この扉には毒の反応はないでしゅ」

 同じく、左右の扉も見てもらうが、毒はなかった。


 「キュキュキュ!」

 「正面奥に動体反応あり!蛙の鳴き声と巨体が撥ねる水音がするそうです」

 「ハクジャの言ってた通りだべ。オババは蛙好きなんだと」

 少し意味合いが違うような気もするが、メンバーには意図は伝わったようだ。


 「オデ、蛙倒す」

 グドンが戦闘体勢をとるが、ノーミンが諌めた。


 「だめだ、ここは後回しにするだよ」

 「まずは周囲の状況確認っすね」

 「キュキュ」

 「正面奥には2体以上が、かなり広い部屋に散らばっているらしいです」

 ジャイアント・トード3体ぐらいまでなら、このメンバーでも突破できると思うが、ノーミンは大事をとって、迂回することに決めた。


 30分後の第二次探索チームが来るまで、できるだけ戦力は温存する。それがノーミンに託された使命だと信じて・・・




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