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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第1章 サバイバル編
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犯人はこの中に

 昔から犯罪者を取り締まる側で語り伝えられている真理がある。

 「犯人は犯行現場に戻る」というものだ。

 罪を犯した者の心理に何か共通したものが生まれるのか、自ら捕らえられる機会をつくりに捕縛者が警戒している現場に戻ってしまう。そこには何者もあがらえない宇宙の神秘が働いているのかも知れない。

 「そこで、この法則を利用して犯人を逮捕します」  「ん!」


 荷物を保管するために掘った穴は深くはなかったけれど、余った土を上にかぶせておいたので、簡単には掘り返せなかったはずなんだ。

 それが見事にじゃがいもまで到達できたということは、嗅覚が鋭くて穴掘りができる中型から大型の雑食性の獣が犯人ということになるね。第一容疑者は穴熊なんだけど・・・

 そう思って一家の様子をうかがうと、なぜか全員ででんぐり返しの練習を始めていた。

 違うな、犯人はもっと粗暴で食欲旺盛な奴のはずだ。すると・・・


 視線の先にはバッタを貪り食う親方の姿があったが、僕と目が会うと、手にしたバッタの脚を差し出してきた。

 違うな、犯人はもっと巨体で強欲な奴のはずだ。すると・・・


 容疑者は2つにしぼられるね。猪か熊だ。どっちも大捕り物になるけど、今のDPだと熊は無理だと思う。なので対猪用の準備をすることにした。


 「コア、罠1-4痛い落とし穴を、通路からコアルームに入ってすぐの床に設置」  「ん」

 「やんまー組は縦貫トンネルの出口を斜面から入りやすいように貫通させて」 「ん」「ギュギュ」

 「こまつ組はじゃがいもを縦貫トンネルに、1個ずつ離して出口まで並べて」 「ん」「ギュー」

 「親方は僕といっしょにコアの台座の補強をお願い」 「ん」「キュキュ」


 犯人は昼行性だから日が暮れそうになったからねぐらに戻った可能性が高い。だとすれば次に現場に戻ってくるのは明日の日の出以降のはず。時間は十分あるから準備は入念にできるね。

 芋の味をしめた犯人は必ず現場に戻ってくる。

 そこで自分の餌場が荒らされて横取りされたことを知った奴はかなりの確率で僕らの臭いを追うはず。向かった先でじゃがいもの点在する穴を見つけたらどうするか。

 僕らは全ての準備を終えると、次の朝を待った。

      zzzzz     「あ!」 

 しまった!うっかり居眠りしちゃった。コアの警戒警報で飛び起きると、現状を確認した。

 すでに、縦貫トンネルに奴が侵入しているようで、遠くからグヒィグヒィという鳴き声が響いてくる。

 この距離で聞こえるということはかなりの大物だ。


 予想通りダンジョンに進入してきたのは中型の猪で、縄張りを荒らされたことにかなり興奮しているようだ。途中に落ちているじゃがいもをバリバリと噛み砕きながら、どんどんコアルームに接近してくる。

 僕らは台座の影に隠れながら奴がコアルームに入ってくるのを待ち受けていた。やがてお互いが視認できる距離まで奴が近づいてきた。

 「かなりでかいぞ。みんな油断しないように」 「ん」「キュ」「ギュ」

 猪はこちらを縄張り荒らしと決め付けたらしく、鼻息荒く突進してきた。そしてそのまま落とし穴を・・


 飛び越えて台座に激突した。


 「なんだって!」 「ぴ」 「キュッ」 「ギュギュッ」


 300kgにせまる巨体が突進してきた衝撃は台座の影から僕ら全員を吹き飛ばした。補強しておかなかったら一撃で破壊されて牙で切り裂かれていたかもしれない。

 だがぶつかった猪も無事ではなかった。軽い脳震盪を起こした猪はふらふらと後ろに下がる。そう落とし穴に向かって。

 カチッと作動音がして床が消えた。グヒィーと鳴きながら落下する猪。ドサッという重いものが穴の底に落ちた音に混じって、グサグサッという刃物が肉を貫く音が複数重なった。

 「うわ、痛そう」 「ん」

 恐る恐る落とし穴を覗き込むと、底から突き出した槍の穂先に突き刺されて瀕死になった猪の姿があった。

 下手に近づくと最後の力を振り絞って反撃してくるかもしれないので、このまま出血多量で死亡するまで待ってから、死体を引き上げようとしたけど無理でした。

 300kgもあるんだよ。横穴掘るとせっかくの罠が壊れるみたいだから、ふとももの肉と、牙だけ折り取って、穴の底からコアに吸収してもらいました。

 死体の9割を吸収すればDPに還元できるのは群体で確認してあったし、今は眷属化より設置用のDP優先だよね。


 猪を吸収したときにシステム無音がしてたから、召喚リストに猪が載ったようだね。今はDPが少ないから召喚できないけど、将来は重量フォワードとして活躍してくれそうだ。もちろん動物性タンパク質としても期待してます。

 肉とったぞー

 

 焼肉をするのに火力が欲しいけど、外に薪になる枯れ木を拾いにいく気力がない。なのでDPで薪をだします。変換の機能がないだろうって?大丈夫、僕には設置という強い味方がいるんです。

 「コア、柵1をコアルームの台座と落とし穴の間に設置して」 「ん」

 こうしておけば台座に直接攻撃はされないからね。そしてこの丈夫な木の柵の端っこを鶴嘴で叩き折ります。看板に偽りなく丈夫なので時間はかかったけど、なんとか木の破片がとれました。ランタンの油を少し染み込ませて火をつければ、立派な焚き火のできあがり。

 軍曹を水で洗って火にかけます。そういえば水の残量も大分少なくなってきたかも。湖まで補給に行かないとなあ。いいかんじで軍曹が熱をもったら、猪の腿肉を投入します。

 じゅわーーという素敵な音が響きますね。油は肉の脂で十分すぎるほどです。軍曹からこぼれた脂が焚き火に滴って、勢いよく燃え上がる度にテンションも上がります。フォークがないから猪の牙で代用して、熱々の肉にぶっ刺して、いただきます!

 「猪のステーキ猟師風できあがり!」  「ん!」

 一口噛み締めると、口の中いっぱいに肉汁が広がって、とにかく美味い。

 しばらくぶりに食べた肉は、味付けを一切してないにもかかわらず、身体の奥から力を呼び覚ます旨みを持っていた。まさに血となり肉となるエネルギーの源だ。

 だけど夢中で肉にかぶりつく僕は、一つだけ重大な事を見落としていたんだ。

 それは猪の肉を焼く臭いが、換気の為にダンジョンの外に排気されているってことを・・・・

召喚リストその4

ワイルド・ボア:猪

種族:獣 召喚ランク2 召喚コスト40

HP12 MP3 攻撃力8 防御力3

技能:突進、掘削

備考:突進は命中-10%、攻撃力+2


DPの推移

侵入者の撃退:+20

死体の吸収:+20

柵の設置:-5

残り 37DP

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