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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第7章 冥底湖の魔女編
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ひぐらしの泣く子も黙る



 「うひっひっひっ、お人好しのマスターにも、たまには見返りがあるようじゃのう。まさかハクジャまで配下にしておるとは、一本とられたわい」

 魔女はそう言って、懐かしそうに老齢のリザードマンを眺めていた。


 「オババは、ワタシが以前に居たダンジョンのコアです、ジャー」

 「「うええ?」」

 思わず叫んでしまったよ。だって念話でこっそり昔の知り合いで、冥底湖の魔女じゃないって聞いてたけど、ダンジョンコアとか、マジですか?

 でも実体あるし、出歩いてるし、そもそもマスターって亡くなったって聞いてたけど?


 「オババのダンジョンコアとしての特殊機能は「憑依」、本体はコアルームにいても、眷族に憑依することで外部での活動を可能にしてました、ジャー」

 「これこれ、乙女の秘密をペラペラしゃべるでない」

 くっ、乙女に突っ込みたいけど、向こうはそれを待ってるに違いない。うかつに誘いに乗っては危険だ。


 「憑依されてるのは、たぶんボグ・ハッグ(沼の妖女)ですジャ。それはそうと、元のマスターがお亡くなりになったのに、なぜオババがまだこの地にいるのだ?マスターが死亡したらダンジョンコアは元あった場所に戻ると聞いていたが、ジャー」

 ハクジャの質問にオババと呼ばれた魔女は答えなかった。


 「とにかく、貴女が現役のダンジョンコアである以上、僕らに危害を加えることはできません。まだダンジョンバトルのクーリングタイムが終わってませんから」

 「なんじゃい、えらい強気な交渉をしてくると思ったら、そんな裏があったとはのう。ちなみに誰とバトルしたんじゃな?」

 「女帝ですよ」


 ダンジョンバトルの結果は、委員会のホームページで公表されるらしい。ここで白を切っても、閲覧されたらすぐにバレてしまうから隠しても無駄だろう。

 「あのゴブリン大好き娘かい。結果はどうじゃった?」

 マリアは、それなりに知られているみたいだね。まあ認知のされ方はアレだけど。


 「なんとか勝ちましたよ」

 「ひょえ!雛っ子のクセに、アレに勝ったじゃと。これは驚いた」

 「もしやマリアとバトルしたことがあるんですか?」

 「3年ほど前じゃったかのう、近所に越してきたからと挨拶に来たんじゃが、礼儀をしらないからバトルになってのう」

 ああ、マリアとオババじゃそうなるよね。どちらも引きそうにないし。


 「それで結果は?」

 「・・・ワシの負けじゃ」

 うわ、女帝マリアは伊達じゃないね。


 「新人じゃからと、向こうの好きなようにルールを選択させてやったら、ゴブリンでハメ殺されたのじゃ・・」

 えげつな!あれゴブシロウが無双したら、ゴブリン縛りだと勝てないよね。


 「今、思い出しても忌々しい小娘じゃ。実力で勝ったと思うなよ、ガチャで出した武具の性能の差じゃぞ!」

 まあ、自分に有利なルールで戦うのも立派な戦術だけどね。


 「ほう、ずいぶん余裕のある顔つきじゃな。なるほどな、ワシが負けた相手に勝って居るのじゃから、そりゃあ上から目線にもなるわいのう」

 「別に、あれは運が良かったからですから」

 「いやいや、運も実力のうちじゃよ。そんな期待の新星に、ぜひこのロートルに一手指南してもらおうかのう、ひっひっひっ」


 「ですからクーリングタイム中だと・・」

 「本人が承諾すれば保護期間中でもダンジョンバトルはできるんじゃよ。勝った側なら、なおさらじゃ」

 へえ、そうなんだ。まあ勝った方なら戦力は低下してないから、自分から早いうちに次のバトルを希望するマスターもいるかもね。

 クーリングタイムがあるのは、負けた側からのしつこい再戦要求を固辞する為なんだろうし。マリアとか勝つまで対戦申し込みしそうだよね。


 「だからといって僕が受ける必要が・・」

 「・・・もしもし、ダンジョンバトル委員会かい。クーリングタイム中のマスターとの、対戦の監査を頼めるかのう。そうそう、最近、「女帝」を倒した期待の新人じゃな。うむ、ああ、ワシは「オババ」と言えばわかるじゃろ。そうじゃ、そのオババじゃ。・・・なんじゃお前か、なら話が早い。師匠の頼みじゃからの、うまくやっとけ。うむ、では切るぞ」


 「ちょっと待った!今、不穏な発言してましたよね」

 「いやいや、何も。ただ委員会に昔馴染みがいたから旧交を温めていただけじゃよ」

 「そんな内容じゃなかったですよね!」

 「そうじゃったかのう、歳をとると物忘れが激しくてのう、ゴホゴホ」


 しまった、老人奥義の物忘れバリヤーを張られた。このあとは難聴と老眼のコンボで逃げ切る気だ。こうなったら派遣されたジャッジメントに説明して無効試合にしてもらうしか・・・


 『ダンジョンマスター委員会から派遣されたジャッジメントの「ひぐらし」です、よろしく、ウフフ』

 「いや、あんた「ヤンデレ」さんでしょう!」



 「おうおう、よく来たのう。10年ぶりぐらいじゃったか」

 『これは師匠、お久しぶりです。今回は面白そうなお話ありがとうございます、フフッ』

 「なになに、弟子の趣味は把握しておるからの。で、上は上手い事言いくるめられたかな?」

 「それが、直属の上司が良い子ちゃんなので、仕方なく実力行使して来ました、フウ」

 やばい、やばい、この人たちグルだよ。しかも被害者でちゃってるみたいだし。


 「・・・コア、こっそり呼び出して。こっちの状況を委員会に・・・」

 『無駄ですよ。現在のコールは全て私の元に着信するように切り替えてあります。異変に気がつきそうな「貴腐人」さんは、ワンフェスのゲスト寄稿が修羅場で休憩室からでてきませんよ、フフフ』

 「だったら「姫」は・・・まさか・・・」

 『ええ、私の直属の上司だった方ですね、くっくっくっ』

 「お主も悪じゃのう、ひっひっひっ」


 なんてことだ、嫌がる相手とダンジョンバトルする為に、こんなことまで仕出かすなんて・・・

 どうしたらいい、どうすれば・・・


 トゥルルルル トゥルルルル カチャ

 『え?』

 「え?」

 『もしもし、こちらダンジョンコールセンター・・じゃなかったでした、ダンジョン委員会です、たぶん』

 『あのドジ、人のデスクのヘッドセット、間違えてつけやがった』

 「「ドジっ子」さん!「姫」が大変なんです、至急救護班を!!」

 『おい、人のデスクに間違えて座って、覚悟はできてるんだろうなあ、ああ?』

 邪魔をされて「ヤンデレ」の裏の性格が出てきていた。


 『ひやああ、間違えました、ごめんなさい、ごめんなさい』

 『ズンガラ、ガッシャーン』

 なんかすごい音が聞えてきた。ひっくり返った「ドジっ子」が何かやらかしたみたいだ。


 『ひやあああ、ロッカーの中から蓑虫状態の部長がああ』

 『ちぃぃ、見つかったか。師匠、ばれたっぽい』

 「お前はいつも詰めが甘いねえ、誰に似たんだか」

 『師匠』

 「お黙り!とにかくダンジョンバトルの認可だけでもしていきな」

 『はいはい、側で見れないのに懲罰だけ受けるのは納得いかないですけどね、フウ』

 表の性格に戻った「ヤンデレ」がしぶしぶ何かを手続きした瞬間、この場から消え去った。


 そしてあのひとが降臨する。


 『お待たせいたしました、私が正式なジャッジメントですわ』

 


 

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