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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第7章 冥底湖の魔女編
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あなたはこの人を知っていますね

 罠部屋まで真っ直ぐ来た魔女と骸骨戦士の一団は、3方の扉をぐるりと見回すと、農具置き場への扉を目指して進み始めた。どうやらけろっぴをビーコンにしているようだ。


 「それぐらいにしといてもらえませんかね?」

 どうせロザリオの代役とか立てても見抜かれるだろうから、声だけ罠部屋に飛ばしてみた。


 「やっと、マスターのお出ましかい?ずいぶん声が若いが、新米ってところかね」

 ダンジョンマスターの領域にいるのに、ずいぶん余裕だね。よほど自分たちの実力に自信があるみたいだ。


 「すいませんね、無駄に歳食っても良いことないんで」

 ピキッ

 「いい度胸だ、このワタシに喧嘩売ろうってわけかい?」

 割りに煽り耐性なさそうだね。


 「人の家に断りも無しに上がりこんで来たのは、そちらでしょう」

 「ふむ、ここは家だったのかい、てっきりワタシはゴミ捨て場かと思ってたよ」

 ビキッ

 「だとしたら、ゴミ漁りにきたわけですか。長い人生の終着点が、ゴミ漁りとは、泣ける話ですね」

 ピキピキピキッ


 「おら、坊主、表に出な!ヒキガエルにしてやるよ」

 「そう言われて領域から出る馬鹿はいないですよね、貴女は出るんでしょうけど」

 ヒートアップする二人のリーダーを、周囲の穏健派が宥めにかかる。


 「カタカタカタ(若者に煽られて怒ったら負けですよ)」

 「こっちから、喧嘩売ってどうする気っすか。暴れられたらコアルーム毎、吹き飛ぶっすよ」



 「・・・ちょっと大人気なかったのう」

 「・・・まず用件をお聞きしましょう」


 魔女は物語で出てくるそのまんまの姿をしていた。ズタボロの灰色のローブに、紫色の三角帽子。顔は皺くちゃで、落ち窪んだ目に、長い鉤鼻、尖った耳、大きく裂けた口には、乱杭歯が並んでいる。

 骸骨戦士は、全員がファントムマスクの様な奇妙な仮面をつけていて、額にサンスクリット語で数字が書かれていた。装備している武器が違うので、4体全てが前衛というわけでもなさそうだ。

 「7、たぶん13、21か31、26か36」

 「ほー、坊主は見かけによらず学があるようじゃな」

 見てないクセに良く言うよ。


 「こいつらはスケルトン・ウォーリアーに、死んだ戦士の魂を封じて造った守護者ガーディアンだよ」 

 あっさりと手の内をバラしてきたけど、本当だとしたらやっかいだね。スケルトン・ウォーリアー自体でもランク6以上ありそうなのに、そこに生前の技能や特技が上乗せできるとしたら、同じLvの冒険者よりやっかいな相手になる。


 「そうやって手持ちの戦力を誇示して、威圧外交ですか?」

 「素直に威圧されるタマでもないじゃろうが。しかし、仮面の守護者を率いる魔女の話も知らぬとは、これは予想以上に、ここに来てから日が浅そうじゃな」

 ん?どういう意味だ。こいつ有名人なのか?


 「ギャギャ(もしかして冥底湖の魔女?)」

 「めっちゃメジャー級っすよ、土下座するしかないっすよ」

 「やべえ、今朝の鮭を半分残しておいたのがバレたのか、ジャー」

 ああ、あの鮭の骨をスケルトンに変えるって噂の魔女か・・・


 「なんか失礼な事を考えてるようじゃが、一部のリザードマンに流れている伝説は嘘じゃからな」

 本人も風評被害を気にしているらしい。


 「とにかく、ここに蛙と蛇と子豚が逃げ込んだじゃろ。それらを引き渡してもらおうかの」

 やっぱり、あの3人が目当てか。


 「お断りですね。彼らはすでに眷属化しています。貴女にどうこう言われる筋はありませんね」

 「威勢がいいのは良いが、自分が誰に楯突いてるのか、わかってるのかい?」

 「保護を求められて、眷属化までした以上は身内です。非友好的な相手にホイホイ引き渡すほど、落ちぶれてはいないつもりですよ」


 「・・・若いのに立派な志じゃないか。だが、嘘はいけないねえ。1人は確実に眷属化できなかったはずじゃよ」

 魔女に痛いところをつかれた。

 元の記憶がほとんどない、ハーフリングは、眷属化できなかったし、庇護の要請も受けていない。同僚のヘラが同じ待遇を希望しただけで、本人は望んでない可能性もあった。

 まあ、自分を蛙に変化させた魔女に引き渡されるのを、よしとするわけもないんだけれど。


 「迷ってるようじゃな。蛙を引き渡すのなら、あとの2匹は見逃してやってもいいぞ。すでに呪いも解いて、眷属化もしたようじゃしの、ひっひっひっ」

 この婆さん、最初からけろっぴ狙いかよ。こっちの状態を把握していて、乗り込んできたのか。だけど、なぜけろっぴに固執するんだろう・・・

 「きっと、魔しょうでしゅ。逃げるときに残りがダメになったかもでしゅ」

 なるほどね。


 「じゃあ、蛙もといハーフリングの装備は全てもらいますよ。うちは身包み剥ぐのが基本なんで」

 「おやおや、聖人君主面して、やってることは追いはぎかい」

 「観客のいない手品師より、稼げますから」

 ピキピキ  ビキビキ

 再び、不穏な空気が漂い始めた。


 「坊主、欲を掻き過ぎると早死にするよ」

 「いえいえ、強欲な先人がピンピンしてるんですから大丈夫ですよ」

 「ワタシを冥底湖の魔女と知って、喧嘩うってるんだろうね」

 「まさか、貴女が冥底湖の魔女の名を騙っているのを知っているから、強気に出ているんですよ」


 「どう言うことだい!」

 うろたえる魔女に、声を掛けるメンバーがいた。


 「それはこちらが聞きたいな。こんな所まで出張ってきて、何をしてるのじゃ、オババ、ジャー」

 真実を知る証人、ハクジャがその場に現れた。


 「ばばーん♪」


 うん、そのタイミングで効果音は正しいね。

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