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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第7章 冥底湖の魔女編
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回復する見込みは・・・

 ノーミンは、毎朝、日が昇る直前に起き出してきて、大森林から昇る日の出を見るのを日課にしている。

 寝床を整えてから、農具を持って扉を開けると、その音を聞きつけて、獣たちが三々五々集まってくる。

 エキドナや穴熊一家は土堀りが目当てで、ウルフパックは警備のつもりらしい。ノーミンもみんながいたほうが楽しいから、そのことに文句はない。

 今日は、6頭ほど連れ立って早朝の畑にやってきた。


 昇りかけの太陽に、豊作を祈ると、スケア・クロウに挨拶をしてから、畑の様子を見る。

 エルフに荒らされた若芽も、なんとか根付いたようで、呪文の援助もあって、立派に育っていた。あと少しで最初の収穫ができるだろう。

 この北方地域では、晩秋から雪が降り始める。いくらプラント・グロウスを掛けても、作物を収穫するほど成長させるのは難しい。

 気温の高いうちに、あと2回は種まきから収穫まで終わらしておきたいと、ノーミンは考えていた。


 いつも通りに畑に植物成長の呪文を掛けようとしたとき、チョビが何かを嗅ぎつけて吼え始めた。

 「敵だか?」

 すぐにダンジョンに戻れるように身構えたが、どうやら違うらしい。チョビ達は警戒しながら少し離れた茂みに向かって包囲網を縮めていった。


 「おめえら、なんでこんなとこにいるだ?」

 チョビ達が見つけたのは、疲労で動けなくなった子豚と、その背中に噛み付いた白い蛇だった。そして蛇は尾っぽでアマガエルをしっかりと巻き取っていた。



 「てえへんだ、てえへんだ」

 ワタリとアズサがコアルームに駆け込んで来た。

 「ん?何かあった?」

 「ギャギャ(三竦みがいたんです!)」

 そりゃいるでしょう。どれもそんなに珍しくないもの。


 「そうじゃないっす。蛇と蛙と豚を捕まえたっす」

 んん?ナメクジはどこ行ったの?豚は三竦みじゃないと思うけど。

 「ギャギャギャ(蛇は蛙を飲み込み、蛙は豚に踏み潰され、豚は蛇を蹴散らすんです)」

 ・・それ豚の1人勝ちだよね。


 そうこうしてるうちに、ノーミン達が、豚と蛇と蛙を運んできた。コアルームではなく、農具置き場で集合することにする。


 「ブヒィブヒィ?」

 「ブヒィブヒィ」

 「ブヒィ?」

 「ブヒィブヒィ」

 ノーミンが豚と会話している。

 ていうか豚と会話できるんだね・・・


 「この子豚が言うことには、この3匹は元は冒険者で、悪い魔女に呪いをかけられて動物にされたんだと」

 「ギャギャ(お姫様の口付けで元に戻るんですね!)」

 どうだろう、あれは魔女が解呪の鍵を、そう設定したからであって、全部が全部それで解けるわけじゃないと思うよ。


 「まず確認をしてみよう。コア、3匹をスキャンして」

 「あいあい」

 3重の銀の魔法のベールが舞い降りて、3匹をスキャンした。


 ピッグ 獣 ランク0 備考:魔術により変化中(汚染率5%)

 スネーク(アルビノ) 爬虫類 ランク0 備考:魔術により変化中(汚染率3%)

 フロッグ 両生類 ランク0 備考:魔術により変化中(汚染率57%)


 なるほど、確かに魔術によって変化されてるね。あと汚染率って何?

 「んんーと」

 ほー、強制的に本質を変化された場合に起こる、自我の損耗度かー。これが100%になると身も心も動物になっちゃうわけね・・・って、蛙やばくない?


 「急いで、呪文のスペシャリストを集めて、あとベニジャとハクジャも呼んで」

 「どくたー」



 「手の施しようがないですー」

 そうそうルカ先生は匙を投げた。


 「・・・・・」

 ラムダ先生はただ、その辺を漂っているだけだった。


 「どうやら、ポリモーフ・アザーの呪文のようですが、私のLVで解呪できるかどうか・・・」

 ツンドラエルフのクレリックが、治療が困難であることを打ち明けた。


 「残念ですが・・・」

 「あきらめんの、早すぎだろー、ジャジャー」

 ベニジャが見事な突っ込みを入れてきた。


 「シュルシュル」

 「まかせとけ、アタイが大頭に頼み込んで、ぜったい治してやるからな、ジャ」

 どうやらベニジャとハクジャは白蛇と意思の疎通ができるようだ。子豚よりも詳しい話が聞けたらしい。


 「どうやらギルドの依頼で夏至の夜に特別な魔草を採集しに行って、魔女に出会ったようです、ジャー」

 「シュルシュル」

 「魔女と牽制しあって、魔草は採集できたけど、逃げる途中で全員、呪いをかけられたようで、ジャジャ」

 無茶するね、これだけの術を使いこなしてる魔女なら相当LV高い相手だったろうに、最初から逃げに徹する方が良かったのでは?


 「シュルシュル」

 「彼女も子豚も、はみ出し者で、この依頼を達成しないと路頭に迷うしかなかったと・・・ジャー」

 「大頭、なんとかしてやってくれよ!このままじゃ、あんまりだぜ、ジャジャ」

 そうは言っても、人族じゃ眷属にすることもできないし・・・


 「シュルシュル」

 「あ、この娘と子豚はハーフだってさ。もしかしたら仲間になれっかも、ジャー」

 え?そうなの?

 「こくこく」

 眷属化にかかるDPが倍かかるけど、可能なんだ。だったら少ない可能性にチャレンジしてみようか。


 「さすが、大頭、男前だぜ、ジャジャジャー」

 ベニジャは、その矛を使って、蛙と交信してみて。たぶんいけると思う。

 「おお、なるほどだぜ、小さくても蛙は蛙か、ジャー」

 「ケロケロ」

 「明日は雨だって・・ジャジャ」

 まずいね、もう思考まで汚染されかかってる。


 そしてスペシャルチームは、不可能と思われた難病の治療に着手した・・・


 「メス」

 「ないっす」

 「シザー」

 「ないっす」

 「汗」

 「ギャギャ(拭きました)」

 「これよりオペに入る」

 「「さっきのは?」」


 とはいっても、僕は何もやることがない。エルフのクレリックが、コアの戦闘補正を受けながら、ディスペル・マジックを掛けるだけだ。少しでも確率をあげる為に、エリアではなく、接触で掛けるらしい。

 所謂タッチ・ディスペルというやつである。


 日頃の行いが良かったのだろう、蛇娘は2度目のディスペルでもとの姿に戻った。

 「ありがとうございましゅ」

 噛んだ。

 「いえ、これは、くしぇでしゅ」

 噛んでなかった。


 彼女は蛇人族のハーフで、ヘラと名乗った。名前にサ行がなくてよかったね。


 次の子豚は運が悪いのか、解呪に5回かかった。

 「オデ、助かっただか?」

 ノーミンと同系列の訛りがある彼は、ハーフオークのグドンと名乗った。なるほど、だから豚に変化したのか。


 最後の蛙は、クレリックのMPが切れたので、ラムダ先生にお願いしてみた。

 「彼は元は蛙人族とのハーフだったとか?」

 「いえ、普通のハーフリングでしゅ」

 「・・・そうなんだ」


 まったく関係ないものに変化させられたから汚染度が高いのかな。

 「魔女に名前をしぃられたのでしゅ」

 ああ、真名ってやつだね。それ、魂もってかれるんじゃなかった?

 「・・・」

 あちゃー、これは無理かもしれないね・・・


 「$%&」

 ラムダ先生が空中に黄色い燐粉を撒き散らしながら、奇妙な文字を描いて、蛙の上に止まった。

  ボフッ

 すると見事に解呪に成功し、人族の半分の背丈のハーフリングが姿を現した。


 頭は蛙のままだったけれども・・・


 「けろっぴ」

 「ケロケロ」

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