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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第7章 冥底湖の魔女編
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すべてお見通しよ!

 「誰がって、誰かよ。ただ、それは冥底湖の魔女ではないわね」

 ビビアンが確信を持って断言した。

 「その根拠は?」

 ハスキーが冷静に尋ねた。

 「ワタシの勘よ」

 「「「勘かよ!」」」


 突っ込みを入れる3人だったが、受付嬢だけは静かにビビアンを観察していた。

 「冥底湖の魔女が居ないとして、2箇所の魔力反応が、別々の術者によって掛けられた可能性はないのですか?」

 「んーー、まったく無いとは言い切れないわね。同じ系統で実力も似通った別人がかけても判別はつかないかも。結界に術者の個人データは残らないしね。でもこんな近くに双子の高位術者がそれぞれ居を構えるとも思えないんだけど」

 ギルド秘蔵の地図で見れば、オークの丘と三日月湖は、目と鼻の先だ。


 「それもそうですね。ではビビアンさんは、その魔力反応を何だと思いますか」

 「ズバリ、ダンジョン」

 ドヤ顔で答えるビビアンを見つめる受付嬢の目がキラリと光った。

 「根拠は?」

 「遺跡や居住地の魔力反応が均一過ぎるのよ。最初は古代帝国の遺産だから、床材や壁に保存の魔法でも掛けてあるんだろうと思ってたんだけど、リザードマンの居住地は地面を掘ったままだったわ。それなのに地面も木の扉も、古代遺跡と同じ保存の魔法がかかってるわけないじゃない。だとすれば、あれはダンジョンコアが支配領域化して管理しているダンジョンってことよ」


 「「「ほーーー」」」

 残りの3人は初めて聞くビビアンの名推理に驚嘆していた。

 「ビビアンはすげえなあ、まるでダンジョンを踏破したベテラン冒険者みたいだぜ」

 スタッチは単純に感心していた。そしてビビアンはドヤ顔を継続中だ。


 「それではビビアンさんはダンジョンの中でディテクトマジックを使ったことがありますか?」

 受付嬢の的確な指摘に、ビビアンがうろたえる。

 「そ、それは、ないわ・・・」

 「だとすると、確証には欠けますね」

 「そ、そうね・・」

 しょんぼりするビビアンであった。


 「ですが、ビビアンさんの推測には信憑性はあります」

 「でしょ!」

 「なので、追加の調査を依頼します」

 「「「「 おおーー 」」」」

 初めての指名依頼に盛り上がる4人組だった。


 「とはいえ、その装備では、再度の三日月湖は難しいかと」

 「「「「 おぉぉ・・ 」」」」

 厳しい現実に直面して項垂れる4人組である。


 「そこで代替案として、別のダンジョンに行って、内部調査をしてもらいます」

 「王都まで行けと言うのか?」

 ハスキーは、王都にある有名な地下迷宮の話を思い浮かべた。

 それはまだ誰も踏破したことのない、巨大な地下迷宮だという。多くの冒険者が最深部の探索を目指し、そして散っていった。

 いつかは、とは思う。だがまだ早い。


 「いいえ、実はつい最近、新たに発見されたのです。しかもビスコ村からそう遠くない場所に」

 受付嬢が驚きの事実を告げた。


 「なるほどね、それがこの印ってわけだね」

 ソニアが地図の一点を指す。そこには『ゴブリン・ホール』と書かれていた。


 「でも、そこなら俺も噂だけは聞いたぜ。ゴブリンの変異種のクランが住み着いたって。確か3・4年前からあったよな?」

 スタッチが首をひねる。

 「さすが情報通のスタッチさんですね。この場所は長らく、流れてきて住み付いたゴブリンの変異種のクラン居住地だと思われていました。ですが、最近の調査で、そこがダンジョンであることが確認されました」

 「そりゃすげえ、でもなんでその情報が流れてないんだ?」

 「ギルドが情報統制を敷いたからです」


 「理由は?」

 ギルドの情報統制となると只事ではない。ハスキーはすぐさま、その理由を聞いた。


 「ダンジョンと分かれば、無理して探索しようとする冒険者がでます。そして未帰還者が続発します。ギルドとしては、信頼のおけるベテランにしか情報公開しないことに決めました」

 「冒険者ギルドはダンジョンの探索を推奨していなかったか?」

 ハスキーが矛盾に思って尋ねた。


 「確かに王都のギルドでは、ダンジョンでしか産出しない希少素材の回収の為に、探索を奨励してはいます。しかしそれは例外中の例外です」

 「そうなのか・・」

 「一般的にはダンジョンは危険区域に認定されて、情報は制限されます。ギルドが出す指定依頼を除けば立入禁止扱いですね」

 「「ほー」」


 「ゴブリン・ホールは、奥に行けばランクの高い変異種が出てきますが、浅い階層は弱いゴブリン種しかいないそうです。そこで魔力探査をしてみてください」

 「なるほど、そこと反応が同じだったら、こっちもダンジョンだってわかるわね」

 「くれぐれも無理して奥に入らないように。いいですね!」

 受付嬢が釘を刺してくる。


 「任せなさい!・・・そこで相談なんだけど、今晩、ギルドの診療所のベッドを貸してもらえないかしら・・」

 ビビアンが、そっと頼んでみた。


 「瀕死の患者が1人いて、家族が必死の看病をしていますけど、その横でよろしければ」


 「「「「 ごめんなさい! 」」」」

 

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