BJによろしく
「それは間違いないのか?」
ロザリオが深刻な声で聞き返した。
「9分9厘間違いないっす」
情報を持ってきたワタリは、同じ様に暗い声で返答した。
「あたいは良くわからないんだけど、それって拙いわけ?ジャジャ」
能天気なベニジャの質問に、ロザリオは素直に答える。
「放置しておくと大惨事になるな」
「しかしマスター様に隠し事をするのは、ジャー」
こうやって主要メンバーで密談すること自体が、心苦しいハクジャが苦言を呈するが、すぐさまワタリが反論する。
「もう、そんな悠長な事を言ってられないっすよ」
「そうだ、この事は主殿には知られてはならない・・・」
メンバーの視線がロザリオに集まった。
「DPが既に4800を越えているという事実を!」
「あ、それもう半分ぐらい使っちゃったから」
「「なんですとーー」」
がっくりと地面に膝をついたワタリが無念の呟きをもらす。
「間にあわなかったっす・・きっとまた無駄使いしたっすね」
失敬な、ちょっと後先考えずに浪費しただけです。
「ああ、大頭の例の病気かー、負け続けの博打下手が、たまに荒稼ぎすると、気が大きくなって散財するみたいな、ジャー」
「こら!マスター様に向かって失礼であろう。それにあれは、実直な職人が大金を貰って、どうして良いかわからずに、高い道具を買い揃えてしまうようなものだ。決して賭けがねではないジャー」
ハクジャのフォローも微妙だよね。
「でも後になって後悔するのはどちらもあってるっす」
「おっしゃる通りで・・」
コアがエルフの部隊を吸収した時点で、DPが4800を越えたていた。しばらくは気付かなかったんだけど、レベルアップのスキャンデータで確認がとれた。
それから僕の記憶も途切れ途切れなんだけど、覚えているのはコアが通販で本棚を5つ注文しようとしたのを止めた事ぐらいだ。
それで、新しく設置したのは・・
転送魔方陣 直線距離で50m以内に2つを1セットで配置する。起動鍵は自由に設定可能
2000DP
と、コアの趣味のアンティーク家具
古びた木製の本棚(飾り扉付き) マホガニー材 没落した貴族の旧家にあった本棚。2段目の背板の裏には空間があり、最後の当主の日記が隠されていたという。オークションに出品される前に発見されて、相続人に渡されたが、それを読んだ3日後に彼は自殺したという噂がある。
注)天板の右隅についた、人ならざる者の手形に見える黒いシミは、どんなに洗浄しても落ちないので、注意が必要。 180 DP
これアンティークじゃなくて事故物件だよね。こんなのが良いの?
「いあいあ」
本棚はさておき、転送魔方陣はコアルームと、ルカの洞窟をつなげる為に設置した。
将来的に、第4層を造るなら、あそこの下にするつもりだ。現状ではコアルームからの脱出路兼地下からの増援を安く上げようという作戦だ。
なので決して、勢いで造ってしまって後悔してるわけではない・・・と思う。
あと、第1層(オークの丘の最初の領域)に仕掛けた罠を、何箇所か「再配置」してみた。場所的に意味が薄れてきた落とし穴などだ。
「再配置」で設置物を選択すると、再配置場所を聞かれる。それを指定すると、設置物はそこに移動し、元の場所は原状回復される。そしてそれには新たに設置する場合の半分のDPが消費される。
半額で済むとみるか、半額も掛かるとみるかは微妙だが、無意味になった罠のリサイクルと、他の設置物の為の地ならしと思えばお得なのかも知れない。
「というわけで、DPは半分ぐらいになりました」
「まあ、まともな使い道でよかったっす」
「またキャッチャーが増えたりすると怖いからな」
なるほど、キャッチャーを他の出口にもつけるという案も・・・
「「却下で!」」
その頃、ビスコ村の冒険者ギルド診療所では、六つ子の懸命な看病が天に届いたのか、瀕死の弟が一命を取り留めた。
「これで熱が下がれば命は助かるでしょう・・」
「先生、ありがとうございます」x5
「ただし、回復しても冒険者の様な危険な仕事は無理ですね」
「えっ?」x5
治療術師は、患者の胸を指差していった。
「結局、胸に刺さった鏃は引き抜くことができませんでした。材質が植物由来だったので、ヒールによって、身体に癒着してしまったようです。これを無理に引き剥がすと、命に関わります。また、激しい運動で剥がれても同じです。今後はできるだけ安静に過してください」
弟の事実上の冒険者廃業を言い渡されて、落ち込む5人であった。
DPの推移
現在値:4823 DP
設置:転送魔法陣 -2000
設置:アンティーク家具 曰くつきの本棚 -180
再配置:広くて痛い落とし穴 -12
:踏むと槍衾x4 -40
スキャン:x2 -2
残り 2589 DP




