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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第6章 エルフ編
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小さい頃の思い出

 「主殿、帰してよかったのか?」

 正座したままのロザリオが聞いてきた。

 「エルフのこと?まあ大丈夫でしょ。いつかはダンジョンのことは知られていくわけだから、情報拡散をこちらでコントロールできるなら、その方が何かと便利だよ」


 「私の為に譲歩したのではないか?・・・」

 ロザリオは自分の所為で強硬手段にでれなかったのではと、気にしているみたいだ。関係者、はっきりいえば身内が居たので、殲滅作戦が取れなかったと思っているみたいだけど、それは違うからね。


 「エルフとは、どこかで折り合いをつけないといけなかったから、丁度よかったんだよ。それにこれで終わりと決まったわけじゃないし」

 「クルスを信用していないのか?」

 「彼女も騎士として、家長代理として、クランの一員として、色々しがらみもあるみたいだしね。エルフの長老会議が全てをひっくり返してくることも想定しておかないと」

 「ふむ・・」


 「こちらも三日月湖の出口や、マリアとの関係については黙っていたし、向こうもクランの残存戦力や、シルバーリーフ家の出方については明言してなかったでしょ?」

 「ああ、そういえばそうだな」

 ミーシャは家長でもなんでもないから、何を言っても一部隊長の約束にしかならないしね。


 「エルフはダンジョン根絶を目指してないってことが分かっただけでも、今回の会談は意義があったよ」

 「そんな話あったすか?」

 会談を行った玉座の間にいなかったメンバーには、リアルタイムでコアが念話通訳していたけど、聞き漏らしもあるので、ワタリが確認の為に尋ねてきた。


 「直接の発言にはないけど、マリアのダンジョンが認識されているのに、マスターがふらついて留守にしても安全なくらいは状況が落ち着いてるわけだよね」

 「ああ、確かにそうっすね」

 これでエルフが、「ダンジョンは危険なので出来るだけ破壊しておこう」というスタンスだと、もうどっちかが滅んでいておかしくないから。なにせオークの次にエルフが嫌いなゴブリン帝国だから。


 「しばらくドンパチやって休戦したっすね、きっと」

 息切れはエルフ側が早かっただろうね。マリアも侵入者には容赦しなかったろうし。

 「でも、逆襲してエルフのクランをぶっ飛ばすぐらいしそうっす。あのひとなら」

 「エルフの支配領域へ追撃したら、今度はマリアがジリ貧だよ。DP入らないし、戦闘修正も付かないし」

 「ですかね」


 「ギャギャ(もしエルフ側が前言を翻して、ロザリオさんの引渡しを要求してきたらどうしましょう?」

 「いや、それは出来ないよ」

 「ギャギャ(クルスさんの誓約があるからですか?)」

 「そうではなくて、ロザリオは今のクランに所属していないから」

 「「え?」」

 ロザリオが驚いてどうするんだよ。


 「ロザリオがクランを飛び出した時の所属は、グランドクラン「静かなる冬の樹々」だったでしょ?

 で、現在は「静かなる冬の木立」に分裂縮小してる。だからロザリオは復帰する場合には、3つのクランのどこかを選べるわけ。他のクランに所属する守護者を、無理に自分の所に囲ったら問題になるよね。だから向こうからは何もいえないはずだよ」

 「「なるほど!」」

 いや、だからロザリオが感心してどうするの。


 「というわけで、エルフの里は、正式な通告があるまで放置します。逆恨みの殴りこみにだけ注意して、来たら美味しくいただく方針で」

 「了解した」

 「ロザリオはメイン武具がなくなったから、武器庫で好きなもの選んでおいて」

 「どこぞのボンボンはミスリルソードを持っていなかったか?」

 「いやいや家宝を持ち出すのは誰かさんぐらいでしょう」

 「クッ、だがしかし、純粋に戦闘用のミスリルソードだって存在するのだぞ」

 へー、そうなんだ。エルフでもミスリル武具は家宝扱いなのかと思ったけど、あれは由来の方に価値があったんだね。


 「ん?・・それじゃあなんで、ロザリオは、あれをわざわざ持ち出したの?」

 「・・・他の武具は全て仕舞われてしまったので・・」

 「それって、無鉄砲な末娘が飛び出していかないように、ご両親が隠したんだよね?」

 「ククッ」

 「なのに、これだけは手を出さないだろうと思った、家宝を持ち出したんだ・・・」

 「・・・反省はしている」

 僕もちょっと親御さんに同情したよ。



 「マスター様、今、よろしいですか?ジャー」

 ハクジャから報告が来た。4人組の件だね。

 「うん、大丈夫。尋問は終わった?」

 「終了いたしました、ジャー。人族の冒険者はご命令の通りに縛って、物置に転がしておきました。例の物も所定の位置に配置しておきましたです、ジャー」


 うまくやってくれたみたいだね。後は彼らの努力次第でなんとかなるでしょう。こっちは情報の分析に取り掛かろう。

 「悪いけど、そっちの監視はベニジャに任せて、ハクジャはコアルームまで来てくれるかな。直接話しを聞きたいから」

 「仰せのままに、ジャジャ」



  その頃のビビアンチーム


 俺は夢を見ていた。

 子供の頃に、幼馴染と遊んでいた夢だ。

 だが少しも懐かしさが湧き上がらないのは、あの頃の記憶が思い出したくないものばかりなせいだろう。


 「はい、すたっち父さん、ばんゴハンでしゅよ」

 おままごとで出されたお椀には、道端で毟った雑草がてんこ盛りになっていた・・・

 「お腹すいてないよ」

 何とか悲劇を回避すべく幼い俺は努力をしていた。

 「ダメです。いっぱいたべないから、かせぎがワルいんですからね」

 子供同士なのに、世知辛い会話をしていた。父親にはぜったい聞かせられねえ・・


 幼馴染はグイグイと俺の顔にお椀を突きつけてくる。間近で見ると、見えてはいけない青虫が、雑草の間にいるのが目に入る・・

 「むりむり、せったいむりだよ」

 「たべずキラいはダメです。はい、あーーん」

 あーーん、といいながら、実際は手づかみで俺の口の中に押し込んでくる。

 青臭い臭いが、口から鼻から充満して、思わずむせるが、幼馴染は容赦なしに喉の奥に押し込んでくる。


 「無理だ、絶対無理、止めてくれ、ゲフッ、ゴホッ、ゴホッ」


 そして俺は夢から覚めた・・・


 「助かったというべきか、助けてくれというべきか・・」

 「何を言いたいのかわからんが、生きていて良かったな、相棒」

 俺の横には麻の布で簀巻きにされたハスキーが転がっていた。その向こうにはソニアとビビアンも同じように簀巻きにされてるようだ。

 もちろん俺もだ。


 「スタッチも目覚めたのかい。えらいうなされてるから、このまま死ぬんじゃないかとハラハラしたさ」

 「ムゴムゴムガ」

 「ビビアンは猿轡されてるから、まともに会話ができないよ。でもまあ元気は元気みたいさね」

 ビビアンが術者というのは奴らもわかっているのだろう。詠唱できないように対処されていた。


 「それで、俺が気を失っている間に何があったんだ?」

 「おもに俺達の目的と所属を聞かれたな。あとは周辺のリザードマンの状況か」

 「大人しく話せば、無法なことはしてこなかったさ。あの緑の液体を飲まされたのはスタッチだけだったよ」

 「俺だけ貧乏くじかよ。うなされるほど不味かったぞ、あれ」

 「だろうな、白目剥いて口から泡吹いてたからな」

 げげ、まじかよ。毒じゃないだろうな。


 「あいつらの言葉を信用すれば、身体に害はないそうだ。もっとも人族で試したのは初めてらしいが」

 「ぜんぜん安心できないぞ、それ」

 あとで肌が緑色になったりしないだろうな・・・


 「で、これからどうするんだ?」

 「お前も目覚めたし、とっとと逃げ出すさ」

 「おいおい、出来るのかよ」

 自分でも確かめてみたが、蔦をったロープは頑丈で、力任せには切れそうもなかった。盗賊系なら縄抜けの技能持ちもいるが、ハスキーはレンジャーだ。頼みのビビアンの呪文も詠唱できなければロープを焼ききれない・・・


 「お前が目覚めるまで時間があったんで、この部屋を隅々まで観察したんだ。どうやらここは物置き部屋で、中の物は全部よそに移されたようだ」

 まあ、木箱一つあればロープは切れるから、そうするだろうな。

 「ただ、奴らにも見落としがあった。それがこれだ」

 ハスキーが苦労して寝返りを打つと、その背中が当たっていた地面に、光るものが埋まっていた。


 「なんだそれ?宝石か?」

 「いや、折れた槍の穂先だ。奴らの、かどうかはわからないが、この部屋で抗争でもあったんだろう。そのときに折れて地面に埋まったみたいだな」

 「よく見つけたな、そんなもの」

 「実は知らずに、こすって背中を切った」

 おいおい、物騒だな。でもまあ怪我の功名ってやつだな。


 「それでロープが切れそうなのか?」

 「たぶん、いける。ただ、その間に奴らの見張りが来るとまずいから、外の気配には注意していてくれ」

 「まかせろ、相棒」


 それから5分後、ハスキーの手首が傷だらけになった代償に、縛っていたロープが切れた。

 急いで全員の戒めを外すと、脱出の方策を練る。


 「この部屋の位置はわかるのか?」

 「中央通路の入り口から2つ目の左分岐の扉だな。こちらから出ると右が入り口、左が奥側になる」

 「どうするの?燃やしていく?」

 ビビアンも本調子に戻ったようだ。だが、下着姿に麻の布を巻いて、ロープで腰を縛ったこの格好は、どうみても「おこもさん」なんだが・・


 「装備は惜しいけど、逃げ出したら緑汁っていってたさね」

 「ぜったいに捕まるわけにはいかねえぜ」

 俺の魂の言葉に、3人が頷いてくれた。


 扉には鍵が掛かっていたが、木製なのでビビアンが焼き切った。通路には見張りはいなかったので、急いで脱出した。

 外はもう夜で、月明かりはほとんどなかったが、俺達には丁度よかった。

 このままビスコ村まで走りぬけよう。

 なに、装備なしでも村までなら問題ない。


 なにせ慣れているからな。


 DPの推移

現在値: 3843 DP

撃退:冒険者Lv7x4 +980

残り 4823 DP

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