ステータス
眷属化した穴熊一家は、リーダーを「やんまー」その番を「やんまま」、子供2匹を「やんぼー」「まーぼー」と名付けた。もう一つの家族は「こまつ」「おおまつ」「ガッツ」とつけてみた。
「というわけで、やんまー組はコアルーム予定地の拡大、こまつ組は巣穴と通路の拡張を頼むね」
「ん」 「「ギュ」」 「キューキュー?」
「ああ、親方はゆっくりでいいから地上に向けて空気穴を掘って欲しいんだ。地表部分はモグラ塚に偽装してね」 「ん」 「キュー」
その合間に僕は食事を取ることにした。そろそろ最初に背負袋に突っ込んできたじゃがいもがなくなりそうだ。燃料としての松明も心もとない。備蓄のある場所まで安全に戻るルートをあれこれ考えながら、軍曹で皮を剥く。なんかそろそろスコップ料理の技能でも付いてもいいんじゃないかな。
そういえば僕自身のステータスってどうなってるんだろう。
転生神様はチートなしでハードモードをすごい強調してたから、特に技能も才能も加護も付加されてないんだろうなあと漠然と思ってたけど。
身体能力は普通だね。軍曹で戦った時も、穴掘りした時も、まあこんなもんかなって感覚だったよ。
持久力は大分あるのかな。食事の回数も質も量も少なくて、睡眠なんかそれこそ疲労で倒れるまで取らないのに、まだ動けるから。
たぶんダンンジョンマスターという職業の補正だと思う。自分で肉弾戦闘をする必要がなくて、でも長時間の監視や根気のいる建造が仕事になるからね。
精神的には少しだけタフになってる気がするよ。スケルトンとの最初の戦闘も穴熊の奇襲も、問題なく対処できたから。
少しはパニックになってもおかしくないはずなんだけど、元からこんな性格だったという話もあるので。それにほら、ロマン溢れるクラスになれて、異世界で冒険となればテンション上がりっぱなしなるのもわかるでしょ?
ステータスについての考察を長々していたら、火にかけた軍曹が熱くなりすぎてた。急いでじゃがいもの薄切りを投入すると、お次は松の実を炒めます。これはヤンマー組にバッタを横流しした見返りにもらったもので、食料庫には他にも色々な木の実や昆虫や爬虫類や・・・やめとこう、などが蓄えられているそうだ。
そのなかでも栄養価が高く、食材として無難な松の実をもらった。ドングリとかは取れないらしい。あれは広葉樹林じゃないとね。
じゃがいもに火が通ったら、軍曹ごと脇に避けて少し冷まします。粗熱がとれたら松明の柄をすりこ木代わりにしてじゃがいもをつぶし、粘りが出たら炒めた松の実と混ぜて丸めると・・・
「松の実入り芋餅の完成!」 「ん」
やっとコアが料理として認めてくれたよ。それではいただきます・・・
なんだろう、可もなく不可もなくってやつ?味は薄いんだけど、松の実の苦味とじゃがいもの焦げたところがアクセントになって、食べれなくはないんだよ。 塩か醤油があればもっと美味しくなるのに、なぜ入れないの?みたいな疑問が噛み締めるたびに湧き上がる、そんな一品です。
さてこれで当面の食料が無くなった。急いでコアルームを完成させてコアに新しい機能がつくことを祈ろう。
パワーショベルのように壁を崩し、ブルドーザーのように残土を押し出す。名前に相応しい働きを見せるやんまー組とこまつ組、そしてそれに対抗心を燃やす親方。
いや、親方は張り切りすぎないでね、お腹減るから。
6時間もするとコアルーム予定地は広い一つの部屋になっていた。そして細かいところを親方と僕とで整地すると・・・
「コアルームの完成だ!」 「ん!」 「キュ!」 「「ギュ!」」
ざっくりとチュートリアルダンジョンのコアルームを模したこの部屋は、横9m、奥行9m、高さ3mほどだ。部屋の中央に土を固めた90cmほどの高さの台座があり、コアを載せられるようになっている。
出口は正面通路が1箇所、穴熊の巣穴を拡張した通路が2本繋がっている。将来的には正面通路は封鎖して、巣穴の出口を出入り口にするつもり。
ここまで掘り広げると分かり易いけど、この丘は粘土質の赤茶色の土と、柔らかい黒土が積層してできていた。
部屋の壁も地層が2・3段に分離しているのが見て取れる。やんまー達は掘りやすい黒土に巣穴を通し、粘土質で雨水の浸透を防いでいたみたいだ。
親方達が見守る中、僕はコアをそっと台座に載せた。コアは一度だけブルッと振動すると、高速で明滅を繰り返す・・・
「アクセス中なんだろうなー」 「キュ」
「え?親方なんか知ってるの?」 「キュキュ?」
「だよね、親方はなんでも知ってるのかと思ったよ」
「キュッキュキューキュ」
「何でもは知らないって、やっぱり何か知ってるでしょ!?」
「キュキュ?」
親方と会話にならない会話をしているうちにコアの明滅が止んだ。息を潜めて見守る僕らの前で、コアはふわっと浮き上がると僕の胸に飛び込んできた。
「ん」
「調整は終わったのかい?」
「ん」
「じゃあコアの新しい力を見せて欲しい」
「ん!」
コアが両腕の中で淡い白い光を発すると、それが白い帯となって僕の頭からつま先までをスキャンしていった。それが終わると同時に僕の脳内に、僕自身のステータスが情報として送られてきたんだ。
職業:ダンジョンマスター レベル1→2
技能:ダンジョン知識、予測、サバイバルNew!
特殊技能:なし
状態:健康(やや疲れ気味)
「おおお、ステータスが読み取れるんだ、すごいね」 「ん!」
ほうほう、割とすっきりした情報だね。細かい能力値とかはでない仕様なのかな?それともスキャンにランクとかあるんだろうか。
レベルはいつ上がったんだろう。その時に技能のサバイバルがついたのか。
ダンジョン知識ってこれ前世のだよね?こっちのダンジョンのことは手探りで調べてる最中だし。
予測ってなんだろう。予知だとチートっぽいし特殊技能になりそうだし、より正確に推測出来るぐらいの意味かもね。サバイバルは納得です。
「コアのステータスも見たいな」 「ん」
コアが白い光を身に纏うと、同じく情報が送られてきた。
ダンジョンコア 「コア」 タイプ:無口 レベル1→2
機能:管理、召喚、スキャンNew!、( )New!
特殊機能:浮遊
DP容量:現在値27 /最大容量5000
うん、いろいろ言いたいことがあるけど一番の驚きはこれだね。
「浮遊ってコアの特殊技能なの!?」
「ん!」
DPの推移
初期値100
召喚:群体3回+3回(文中表記のない餌として)-30
土竜3回 -15
眷属化:穴熊7回 -35
吸収:群体1回 +2
スキャン:2回 -2
侵入者撃退(生死問わず):2回 +7
現在値:27




