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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第6章 エルフ編
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襲名披露

 「どうやら勝ったな」

 偽冒険者との戦闘は、出だしこそ先手を取られて危機に陥ったが、私のレイピアが敵の魔術士の詠唱を阻害した時点から、流れがこちらに傾いた。

 予備の小剣を抜いて、敵戦士と切り結ぶ。力量はこちらが上だが、メイン武器を喪失した今では戦闘力では互角、隣の剣兵は元が弓兵なのでどこまでもつか。

 だが、後衛はこちらが断然有利になった。敵には重傷者を含む負傷者が3人でているが、こちらは軽傷者が1名だ。弓で呪文詠唱を牽制しつつ、こちらの魔術兵の範囲呪文で止めを刺せば良い。

 魔術兵を止められなければ向こうの負け。ならば必ず詠唱阻害にでるはず。まずそこを狙う。


  「まだまだー」

 思ったとおりに敵の一人が短剣を投擲してきた。ローブ姿なので術者だとばかり思っていたが、盗賊か斥侯だったようだ。上手く弓兵が割り込んで、魔術兵を庇った。

 驚いたことに即座に2本目を投擲しようとしたが、それは待ち受けていたこちらの弓兵の方が早かった。

 胸に2本の矢を受けて、短剣使いは倒れた。


 仲間の死に動揺した偽冒険者達は、魔術兵が範囲攻撃呪文を解き放つのをただ呆然と見守っていた。


 「ウィンド・バースト!?・・・げふっ・・」


 ところが必殺のはずの呪文が飛んでいかない。訝しげに後ろを確認すると、そこには信じられない光景があった。


 「馬鹿な、奴等は蹴散らしたはず・・・」


 そこには魔術兵の背後から剣を突き刺した、2体のスケルトンが立っていた。

 

 「範囲呪文で吹き飛んだと見せかけて、こちらの目を欺くために態と盾を手放したとでもいうのか!」

 骸骨剣士は、血塗れの剣を引き抜くと、手近な弓兵に目標を変えて切りかかる。

 弓兵も剣に持ち替えて応戦するが、想定外の敵の乱入に、混乱が見て取れた。


 「落ち着け!骸骨剣士は盾が無い。剣は突かずに切り払え・・ぐっ・・」

 左肩に激痛が走り、盾を支えられなくなった。新たな敵の乱入に混乱していたのは私もだったらしい。戦闘中に敵に背を向けるとは・・・



 「なんだかわからんが、今しかない!」

 「おう!」x4


 突然、乱入してきた骸骨戦士が、エルフの魔術士を潰してくれた。倒したと思っていた骸骨が生きていた、いや死んでるから、まだ動くことに驚いたエルフ部隊の連携が切れた。

 後衛に指示を送ることに集中しているエルフの隊長の左肩を目掛けて、渾身の一撃を放つ。盾を無効化すれば、相手の防御能力を半減できるはず。


 「パワー・アタック!」

 命中精度より打撃力に比重を置いた戦士の奥義で、隊長の左肩を破壊した。


 「お返しのツイン・シュート!」

 「倍返しのウィンド・カッター!」

 「おまけのファイアー・アロー!」

 エルフの後衛に向けて容赦ない追い討ちが放たれる。弓兵1人を倒し、もう1人に重傷を負わせた。

 骸骨戦士も奮戦し、1体が破壊されるも、重傷の弓兵はもう1体に倒された。

 これで戦力比は5対3対1になった。骸骨戦士は今はエルフを攻撃しているが、味方というわけではない。侵入者という点では俺達も排除の対象になるだろう。

 このままエルフの部隊を押し切ってここを出る。それ以外は生きて外に出てから考えよう。


 六つ子のリーダーは、そう判断してエルフの隊長に対峙した。



 焦ったのはエルフの中隊長だった。有利な立場から一転して壊滅の危険に陥ってしまったのだ。彼にとっては元から偽冒険者と骸骨剣士は仲間と思っているので、完全に挟撃された状況だ。


 「お前達二人はここで奴らを食い止めろ。私が第2・第3小隊を引き連れて戻ってくる」

 ある意味、足止めして死ねという様な命令だが、中隊長も左肩を負傷している以上、自分が盾になれないことは承知していた。そして誰か1人が伝令として生き延びるなら、それを部下に譲るほど出来たエルフでもなかった。


 再び後衛の魔術士に小剣を投擲する素振りを見せると、戦士は慌てて盾で守ろうと位置をずらした。その隙をついて後方の弓兵と位置を代わると、脱兎の如く走り出す。


 「増援を呼ばれると厄介だ、逃がすな!」

 戦士の声が後ろから聞えるが無視をする。

 そこに骸骨剣士が邪魔をしに立ち塞がった。


 「忌々しい骸骨め、邪魔だ、どけ!」

 一撃で切り倒すと、そのまま階段を駆け下りる。どうやら部下の二人は上手く任務を果たしたようだ。恐らくは生きていないだろうが、献身的な働きは家長にお話しておこう。その為にも私は生き延びる・・・


 だが、他の小隊と合流すべく降りた階段の出口は鉄格子で遮断されていた。


 「なんだこれは、第2小隊はどうしたのだ」

 十字路で待機しているはずの第2小隊は居らず、ただ鉄格子を引っかくハリネズミが1匹いるだけだった。

 遠目で分かり辛いが、十字路の先の両扉が開いていて、床には落とし穴があいているようだった。第2小隊は勝手に探索をしてどこかに移動したというのか。


 「第2小隊長の愚か者め。分断される危険があるから中間地点に待機命令を出したのに、うかうかと敵の誘導に引っ掛かりおって」

 自分の事は棚に上げて、第2小隊長に怒りをぶつける中隊長は、その矛先をハリネズミに向けた。


 「ええい、キューキュー煩い!永遠に黙らせてやろうか」

 鉄格子越しに小剣を突きたてようとした、その時、空を切り裂いて一筋の矢が中隊長の喉に突き立った。


 「げはっ」

 もがく中隊長に向けて、第2第3の矢が飛来する。その数が5本に達したとき、中隊長は床に崩れ落ちた。


 「下衆に生き延びる価値はない。お前は失格だ」


 弓を構えていたロザリオが、今は死体となった中隊長に向かって言い放った。

 それが、部下を捨て駒にして逃げ出したからなのか、モフモフを腹いせに刺そうとしたからなのかは語られなかった。

 でもロザリオ隊の隊員達にはわかっていた。


 「カタカタ(ぜったい後者だよね)」



  コアルームにて


 「これで侵入したエルフのうち、残っているのは2体だけ。あ、それも今、反応が消えたね」

 3個小隊のツンドラエルフは全部撃退したことになる。残りは例の6人組か・・・


 「ギャギャギャ(今なら楽に全滅できますが)」

 「全滅しちゃうと冒険者ギルドの警戒レベルが上がりそうなんだよね。できれば1人か二人は生きて帰って、エルフに襲われたことを報告してくれるとベストかな」


 エルフと冒険者に同時に来られると、対応が間に合わなくなる可能性もある。ギルドとエルフはお互いに牽制し合ってくれたほうが、僕らには有利だから。


 「全滅させないなら敵役はこちらでやろう。手の内は隠すに越したことはないからな」

 ロザリオの弓隊が追撃を買って出てくれた。鉄格子が上がるまで待機してもらう。


 そこにコアから警報が走った。


 「びびび」

 えっ、鼠男?

 「大頭!フィッシュボーンに侵入者ですぜ。冒険者風の4人組です、ジャー」

 うわ、今度は三日月湖方面から来たよ。これ連動してるのかな、まさかこっちは陽動?


 「よっしゃ、モンモンチームのお披露目だ、気張っていくぜ!ジャジャー」

 「「ケロケロ」」


 4人組っていうと、あのビビアンとか言う火炎術士のパーティーかな。こっちのダンジョンと三日月湖が繋がっていることは知らないはずだけど、偶然なのかな?これはちょっと聞いてみないといけないかもね。


 「ベニジャ、狭い通路だと不利だから、魔女の部屋で待ち伏せて。ハクジャは地底湖で網を張って」

 「任せとけって、ジャー」

 「仰せのままに、ジャジャ」


 「侵入者のうち一番小さいのが火炎弾撒き散らしてくるから、最初に無効化して。あと尋問するから全滅は避けといてね」


 「「了解です、ジャー」」


 DPの推移

現在値: 883 DP

撃退:ツンドラエルフx10 +450

撃退:ツンドラエルフ・クレリックx2 +360

撃退:ツンドラエルフ・ソーサラーx3 +375

撃退:ツンドラエルフ・コマンダーx3 +540

残り 2608 DP

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