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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第6章 エルフ編
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女騎士のブートキャンプ

 「エルフって、もっと冷静沈着なイメージがあったけど、割とポンコツだよね」

 コアルームで十字路の部隊をモニタリングしていた僕は、誰とは無しに話かけた。


 「主殿、集団には必ずはみ出し者や変わり種が混じるものだ。あれをエルフの物差しにしないで欲しい」

 エルフ一の変わり種のロザリオが言っても説得力は無いよね。


 「だが、問答無用で穴熊チルドレンに攻撃してきた馬鹿者どもよりは、見込みがある。万が一、生き延びて眷属になったら私が鍛えてもいいぞ」

 それは兵士として鍛えるのか、モフモフの同志として鍛えるのか、どっちですか?


 「残り4人はロザリオ隊に任せるよ」

 「承知した。中央が先に仕掛ける。扉を開けると同時に、弓隊は射撃せよ。敵の意識がこちらに向いたら、左翼も戦闘に参加、一気にけりを付けるぞ」

 「「カタカタ」」


 

 十字路の第2小隊(残り4名)の視点


 「生きているなら返事をしろ!」

 「ダメです、水音が2つした後は何の反応もありません」

 水音がしたなら、この下は水牢か・・・なんとか救出する手段を・・・

 だが、我々にはそれを考える時間さえ与えられなかった。


 「小隊長!正面の扉が開きます」

 槍衾の向こうに大きく開かれていく両扉が見える。そしてその奥にスケルトンの兵士達を従えた、銀色の骸骨騎士がいた。

 手前に盾を構えた剣持ち骸骨兵士が2体、奥に弓を構えた銀の骸骨騎士、その両脇にやはり弓持ちの骸骨兵士が2体いた。

 接近戦は・・・トラップの槍衾が邪魔でできそうにない。


 「魔術兵、範囲攻撃魔法だ!」

 「落とし穴に落下してます!」


 そうだった、魔術兵は敵の攻撃から守る為に部隊の中央に配置するのが基本なので、もろに足元が罠の上だった・・


 「ならばクレリック、範囲聖属性呪文を・・」

 「それも落下してます・・」


 回復役も重要なので守りやすい中央に配置したのが裏目にでたか・・


 「ならば弓較べだ。スケルトンなんかに遅れをとるな、構え、撃て!」

 「「「ツイン・シュート!」」」

 こちらからは6本の矢が飛び、向こうからは3本の矢が飛来した。

 結果は・・・


 「有効打ありません。こちらは1名が戦線離脱しました」

 スケルトンの特性の刺突半減は、槍や矢などの刺突武器によるダメージを半減する。さらにそこから防御力で減らせるので、ほとんどダメージが通らない。

 逆に敵の攻撃は1人の弓兵を集中して狙っており、3本の矢を受けて倒れた。


 「小隊長、右通路奥から新たに4体のスケルトンが現れました!」

 それまで温存してあったのか、ぐるっと回り込んだのかは知らないが、十字路の右通路の扉を押し開いて、新手が出現した。盾剣骸骨兵士2体、弓骸骨兵士2体である。


 「全員、抜剣!接近戦に備えよ!」

 効果の無い弓はあきらめて、接近戦に活路を求めるしかない。そう考えて自分も剣を抜いたが、相手がこちらに付き合う必要もなかった。


 「クッ、足が」 「どこかに身を隠して、うわっ」 「俺、里に帰ったら・・ぐふっ」

 冷徹に距離をとったまま弓で攻撃してくる敵により、部下は次々に矢を受けて倒されていった。


 気がつくと生き残りは私だけだった。敵は最初にランクの低い部下達から集中して狙うことにより、あっというまに我が小隊の戦力を剥ぎ取っていった。せめて私が目標にされれば、まだ何人かは生きていたはずだった。

 次の斉射は持ちこたえられる、だが、その次はもう無理だ。

 なりふり構わず撤退する・・そんな考えが頭に浮かんだが、振り返った玄関ホールの出口には鉄格子が降りていて、例のハリモグラが出れずにウロウロしていた。


 「あれを巻き込むわけにもいかないな・・・」


 意を決して、落とし穴を斜めに飛び越えると、左通路の奥に走りこんだ。途中で矢が何本か突き立ったが、それは覚悟の上だ。


 「第3小隊に合流できれば、まだ可能性はある!」

 私は一縷の望みに賭けて、左の扉を押し開いた。


 そこには、白と黒の魔獣に蹂躙された、第3小隊の成れの果てが散乱しているだけだった・・・


 

 第1小隊 VS 六つ子


 「重傷1、軽傷2。まずい、持たないかも」

 「あたしが前衛かわるから治癒して」

 「そんな隙を敵さんが見逃しっこない。薬草食わせて」

 「あれそのままだと、まっずいんだよね」

 「死ぬよりましだ、前衛の盾の影に入って矢を避けろ」

 「はいな」x3


 明るく振舞っているが、状況は悪い。前衛同士の殴り合いは、敵の隊長が得物を投げ捨てたことで、こちらが有利になったが、すぐに圧倒できるほどではない。

 問題はこちらの術者が弓で狙われていて思うように呪文が打てないのに、敵の術者がフリーになっていることだ。次に範囲呪文が打たれれば、こちらの怪我人は全滅の可能性がある。


 「魔術兵が詠唱開始、ウィンド・バースト臭い!」

 「俺が止める!」

 盗賊/魔術士が手持ちの短剣を、詠唱中の敵を目掛けて投擲した。だが逸早く反応した弓兵の一人が、自らを盾にして、それを防いだ。


 「まだまだ!」

 左手の短剣を投げようとしたとき、残りの弓兵の放った矢が胸に突き立った。

 「くそっ、魔術兵を囮にして狙ってやがっ・・ごぼっ・・兄貴・・すまねえ・・」


 「おい、しっかりしろ!一人で逝くな!」

 その時、魔術兵の詠唱が終わった。


 

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