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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第1章 サバイバル編
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りんごは洗わない

 ここで算数の問題です。親方は2時間で1㎥の穴を掘ることができます。同じことをあと二人いる職人もできるとして、横幅9m、奥行9m、高さ3mのコアルームを掘るには何時間かかるでしょうか?


 答え 162時間

 「1週間もかかるって、無理だよね!不眠不休でやっても、その前にDPが尽きちゃうよ」  「ん」


 オオエド親方と2人の土方職人の加入で、一気にダンジョン掘削が進むかと思いきや、こんな落とし穴が。

 時間はかかるけど親方達は召喚してあるんだから、それ以上はコストはかからないだろう?そう思っていた時期が僕にもあったよ。でもね、食費がね、6時間に1回群体を召喚してあげないと親方達は働けないんだよ。

 1週間で140DPもかかるんだ。コアルームが完成するまでダンジョンポイントの大幅な入手は見込みが薄いし、手ごろな獲物がタイミングよく訪れてくれるあてもない。

 仕方なく色々実験してみた。

 狭いとはいえ9mもの通路は完成しているので、その中央に台座を作ってコアを配置してみる。

 「ん?」

 特に変化はなかった。

 オオエド親方の現場に、僕がアルバイトの新入りとして参加してみる。

 「ぐはっ」

 崩れた土砂に生き埋めにされそうになった。

 心を鬼にして給与(バッタの量)を減らしてみる。

 「キューーー」

 12時間後に親方達が空腹で目を回した。「んん!」 急いで口にバッタを突っ込んで事なきをえた。


 くっ、手詰まりか。残された方法は僕が地道に掘り進めるという堅実策だけだけど、親方達でさえ1週間も必要なのに、いったいどれだけ時間がかかるのか・・・その間じゃがいもだけで生き延びられるのか・・

いっそ親方にもじゃがいもを食べてもらってDPを節約するとか・・・

 「キューキュー」

 考え込んでいた僕はオオエド親方が足元で何かを主張しているのに気がついた。

「え?じゃがいもは嫌い?」  「んん」

「あ、違うのか。こっちにこい?」  「ん」

 親方に案内されて、コアルーム建設予定地まで四つん這いで移動すると、最初の通路に直角に左右に延びる通路があった。予定ではこれを奥へ掘り広げていくことにより、大きな部屋を作るはずだったんだけど。

 その通路の右奥に案内したいらしい。コアに明かりを出してもらって奥に進んでいくと、突き当たりで床が抜けていた。

 「なんだろう、別の穴に繋がってるね」

 それは僕らのダンジョンを斜めに横切るように掘られた小さな横穴だった。長径が60cm短径が30cmぐらいの楕円形の横穴で、すごい遠くまで通じている気配がする。

 「よし、探検隊を出そう。コア、新たに群体を召喚、カワグチ隊を右に、フジオカ隊を左に送り込んで」

 「ん」

 「各隊員には蛇、蠍、現地人に注意するように通達」  「ん」

 「あと親方に待機中の隊員を食べないように言い聞かせて」  「ん」    「キュ~」


 この場所から10mまではコアのコントロールが効くはずだし、その先も送り込むことだけはできるはず。隊員がピラニアに食われたり、底なし沼にはまったりすれば心音停止で危険は察知できるし。

 隊長からの報告を、固唾を呑んで待ち受けるベースキャンプの僕とコア。そして目の前のご馳走を固唾を呑んで我慢する親方。ジリジリとした緊張感が辺りを支配したそのとき!

 「あ!」

 コアが警報を発すると同時に、カワグチ隊が何かに追われるように横穴を撤退してきた。

 「何が来た!?」

 慌てて後ずさる僕の目の前に、カワグチ隊長以下5名の隊員、今親方に1匹食われたので4名の隊員が飛び出してきた。さらにそれを追いかけてきた何かがダンジョンに進入してきた。

 「コア、群体をぶつけて!」 「ん!」

 コアの指示で待機していた隊員達が果敢に侵入者に体当たりを開始した。狭い通路を暴れまわるバッタの嵐だ。餌と思った相手の突然の反撃に、侵入者は混乱したらしく、その場で倒れてしまった。

 「コア、攻撃中止」 「ん」

 そこには死んだふりをしているアナグマが横たわっていた。

 「ラスカル?」    し~ん

 あっちはアライグマか・・・


 アナグマの中で擬死をするのはニホンアナグマぐらいなんだけど、これはどう見ても寒冷地に適応した大型種だよね。

 毛皮も全体的に灰色だし、体長も90cmはありそうだし。失神してるうちに止めを刺そうとしたけど、うかつにも軍曹は持ってきていない。

 本来なら穴熊は危険な動物で、闘争心も強く、巣穴に進入した猟犬と血みどろの戦いを繰り広げたりするらしい。テリアやダックスフントなどの犬種は、穴熊と巣穴のなかで戦う為に交配されたほどだ。

 どうしよう・・・そこまで考えてあることに気がついた。

 「システム無音してたよね?」

 「ん」

 「倒さなくても気絶させれば召喚リストに載るの?」   「んん」

 あれ、違うのか。

 「侵入者を気絶させたから撃退扱いになってDPが入った?」  

 「ん~、 ん」

 コアが悩んでから肯定した。DPも入ったけど、同時に別な変化もあったってことかな。

 「DPの獲得以外に機能の追加があったなら使ってみて」   「ん」

 コアが一瞬明滅すると、擬死をしている穴熊の上に白い光の柱が立ち昇って消えた。すると倒れていた穴熊がむくりと起き上がり、

 「ギュギュー」   と挨拶をしてきたんだ。

 「仮死状態の動物の眷属化かー、これ召喚するよりコスト安くすむんだよね?」  「ん!」


 さらに嬉しいことに、この穴熊は巣のリーダーだったらしく、巣穴全体がダンジョンの一部として認識されるようになったらしい。

 コアが検索すると、穴熊の巣は、丘の東側に張り巡らされていて、全長は50m以上あるみたいだ。寝床が2箇所と食料貯蔵庫が1箇所あり、それを繋ぐ通路と10数箇所の出口に繋がる通路からできている。

 この巣には2つの穴熊家族が住んでいるらしく、彼らもリーダーに説得してもらって順次眷属化した。説得には食料庫に追加されたバッタの群が効果を発揮したらしい。

 リーダーも含めて7頭もの新戦力を獲得した我々は、新たなプロジェクトを立ち上げるのであった。

 「次回、永久凍土の地下に、巨大トンネルを掘り抜いた男達!」

 「んん!」

 「あ、もちろんコアも一緒だよ」

 「ん」

 






召喚リスト その3

ツンドラ・バジャー:ツンドラ穴熊

種族:獣 召喚ランク1 召喚コスト 10DP 眷属化 5DP

HP6 MP2 攻撃力 5  防御力 2

技能:掘削

特殊技能:擬死

備考:擬死は自己発動と反射発動の両方の場合がある

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