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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第6章 エルフ編
138/478

与作の唄

 カコーン カコーン

 針葉樹の森の中に、斧を打ちつける音が木霊する。


 カコーン カコーン   カコーン カコーン

 メキッ メキメキメキ

 「倒れるっすよー」

 メキメキ ズシャーーン


 数十年の年を経た大木が、切り倒されて大地に横倒しになった。

 樵は太い枝を斧で切り払うと、大木をロープで橇に括り付ける。

 「よし、あとはまかせたっす」

 そう声を掛けると、橇に繋がれた3頭の牙猪が返事をした。

 「グヒィグヒィ」


 力強く橇を引き始めた牙猪を見送ると、樵は再び、斧を構えて次の大木に近づいた。

 「ノルマまであと2本っす」

 

 ツケの払いで、樵の真似事をしているワタリがそこにいた・・・



 「樵っすか?」

 コアルームに呼び出されて、戦斧を手渡されたワタリが驚いた声をだした。

 「そう、鞍を作るのに、板材より丸太の方が都合が良さそうだから、4本ほど切り倒してきて。できれば種類が違うと嬉しいかな」


 渡された斧の重みに怯んだワタリが、聞き返してくる。

 「おいら一人だと切り倒した丸太も運べないっすよ」

 「それは大丈夫。運搬は五郎〇チームが橇で運んでくれるから、ワタリは切り倒すだけ」

 「倒木じゃダメっすか」

 「風雨に晒されていると痛んでる部分があるだろうから、薪にするならまだしもね」


 すでに逃げ道は塞がれていた。それでもワタリはあきらめずに交渉する。

 「1本もってくれば、コアりんが増やせるっすよね」

 「そうだけど、どの種類が工芸に向いているか調べたいからサンプルとしてね」


 ワタリは頭の中で、4本の大木を切り倒して丸太にする作業を思い浮かべてみた。一人でやるなら半日仕事になることだろう。

 「他に助っ人いないっすか?」

 「皆、それぞれ仕事があるから」

 「おいらも仕事があるっす」

 「蜜蜂が巣を作るのをじっと見ているのは仕事じゃないよね」

 「でも誰かがこっそり蜂蜜を味見しにくるかもっす」

 「そうだね、隠密技能があって、エルヴン・クロークを着たスノーゴブリンが、巣作りの邪魔に来るかも知れないから、緑のマントを見たら襲って良いって女王蜂には言っておこうかな」


 「あー、たまには大自然の中で働くのも良いかもっす」

 そういうとワタリは戦斧を受け取って、コアルームを出て行った。緑のマントを翻しながら・・・


 「まあ、ツケは労働で相殺しておくから」

 「へいほー」


 「コアも早く決めないと、本棚買えなくなるかもよ」

 「ぴきっ」

 迷い続けてまだアンティーク家具のリストを眺めているコアを急かしてみた。ヴォジャノーイと巨大亀は交渉の結果、講和が成立した扱いになるので、撃退ポイントは入らなかった。

 なのでDPの収支は、事後の処置も含めると赤字に近くなる。

 まあ、回復系の設備投資と水中戦力の増強に使ったのだから、無駄になったわけじゃない。

 そろそろ臨時収入が欲しいところではあるのだけれど・・・


 「主殿、手が開いていたら、こちらの改修も願いたいのだが」

 ああ、地下墓地の罠の増設もあったね。これ、マジでお預けになるかも。

 「ぴぃぴぃ」



 「現状ある罠は冒険者ギルドに報告されているとみて間違いないだろう」

 ロザリオが思案顔で十字路を見つめていた。

 「レンジャーがフェレットで探索してたし、接触型を警戒していたね」

 あのサイズだと扉は開けられないから、開けたら罠はチェックできないしね。


 「次はどう来るか・・・」

 「直接、ラスボス狙いでくるなら、牢屋を探すかな」

 「ほう、あの脱出ルートを使ってくるか」

 4人組が牢屋から脱出するときに、男爵の寝室に続く隠し扉にも気がついた可能性が高い。武装がまったくなかったから、立ち寄らなかっただけで、ギルドには報告しているだろうね。


 「ならば、井戸から逆侵攻してくるのでは?」

 「本人ならまだしも伝聞で、あの井戸を探しあてるのは無理だろうね。うろうろしてたらすぐ見つけられるし」

 「なるほどな、だったら左の扉が牢屋に続いていると知らせればいいのか」

 「右側を封鎖してもいいけど、挟撃がし辛くなるし、ここは左の扉を付け替えよう」

 「再配置はできないのではなかったか?」

 「石の扉を壊してから、青銅の扉を付け直すのは出来るから」

 「力技すぎる・・・」


 アップル達にも手伝ってもらって、十字路の左側の片扉を、蝶番を集中攻撃して取り外した。そこに覗き窓付きの青銅の扉を設置すると、まるで元からそこにあったように綺麗に扉がはまった。


 「ダンジョンというのは割りといい加減な法則で成り立っているのだな」

 ロザリオが、欠けた蝶番も元通りになっているのを見て呟いた。

 「そうでもないと手掘りした洞窟に扉なんて填め込めないから」

 丸いトンネルに木の扉を付けたら、丸扉になったぐらいだし。


 「実感が篭っているから説得力があるな」

 ロザリオが来たときにはもう「拡張」が使えるようになってたから、昔の話は誰かに聞いたのだろうけど。あれからまだ2ヶ月も経ってないとは信じられないね。


 「さて、これで左に誘導できると思うけど、どこで仕留める?」

 兵士待機所左だと、十字路に戻られるし、牢屋だと罠が設置しづらい。玉座の間まで引き入れると、今度は脱出路から逃げ出しそうだ。


 「私としては玉座の間で待ち受けたい所だが、現実的なのはこの兵士待機所だろうな」

 牢屋番の部屋にも戦力を伏せられるし、新しい罠も配置できるしね。

 「じゃあ、ここにしよう。コア、開けたら扉が閉まる罠を、牢屋側の覗き窓をトリガーに、十字路側の青銅の扉に設置して」

 「・・できたぁ」

 「同じく開けたらガストラップを同じ牢屋側の覗き窓に重ねて設置」

 「ん」

 罠はこれぐらいでいいかな。あとは転送で再配備すればいけそうだね。


 「次の機会は私の部隊にも出番が欲しいぞ」

 「ヴォジャノーイ戦は待ちぼうけさせたからね。善処します」


 「はにゃ」

 その会話がフラグになったわけでもないだろうけど、蜜蜂警戒網に反応があったらしい。

 「何が来たのかな?」

 「ばとるる」

 「え?戦ってる?何と何が?」

 「ひとxえる」

 「人族とエルフってことか」

 「主殿、とにかく警報を」

 「あ、そうだね。コア、皆に配置につくように伝えて」

 「ギャギャ!(ワタリさんが戻ってきていません!)」


 「「「 あ! 」」」


 DPの推移

現在値:1230 DP

設置:青銅の扉(覗き窓付き) -22

設置罠:開けると扉が閉まって施錠 -50

設置罠:開けると室内に睡眠ガス9mx9mx6m -75

残り 1083 DP 

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